第八話・交通事故・・・・・未遂!?
――――兄さん、大丈夫ですか?
――――ああ、大丈夫だ嬰汰。俺はまだ負けちゃいない。それに、”あの作戦”もあるんだ。
――――でも、その足じゃ―――銃で撃たれたその足じゃ、勝ち目無いですよ!?
――――勝ってみせるさ。でないと俺は、兄貴に貢献できない。だから――――
――――――上月愛華を――あの憎き暴力少女を――――俺の手で――――――。
〜〜††☆††〜〜
「ガバッッッッッ!!!!」
「はぁはぁ・・・・・・嫌なゆめみたぁ・・・・・」
おはようございます、愛華です。
あの彰吾が大暴れした日から、悪い夢&寝汗で飛び起きる毎日が続いて、ノイローゼ状態になりかけてます。
夢の内容はいつも同じ。それが毎日続いてたら、ノイローゼ状態にもなりますね。
さて学校、学校―――――。
「おはようー愛華っ!!」
「ああ、おはよう絵美奈ぁ。ふあ〜お」
「眠そうだね、愛華。どしたの?」
「ん、ここんとこ眠れなくてさあ、ノイローゼになりかけてんの」
「そりゃ大変だね〜」
こんなたわいもない会話をしながら、私たちはいつものように通学路を歩いていく。
このあと、あの”運命の人”と出会うなんて、思いもせずに――――――
「ねえ、絵美奈、今日の放課後あいてる?」
「もう帰りの話?うん、いーけど・・・・・きゃ、愛華、前、まえ――――!!!!」
絵美奈が叫ぶような声で言った。それに反応して、私も前を向く。とー――――!!!
「え、前?前って―――――きゃああ!!」
前には――――一台のトラック。ちょうどあたしの目の前に。避けようとしても、もう間に合わなくて――――!!!
「きゃ、きゃぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!――――――ふえ?」
「愛華、あぶないっ!!!――――って、え?」
轢かれると思ったあたしの身体は、血まみれにもなってないし、無論痛みもない。
変わっているのは、トラックの前に立ちふさがった男の人がいることだけ―――。
「あ、あの・・・・・だいじょぶですかぁ!?」
あたしがそう声をかけると、その人―――その男の子は起き上がって微笑んだ。
「うん、大丈夫だよ」
そう優しく言いながら。
あたしはその優しそうな微笑みに、なぜかすごく惹かれてしまって。
「あ、ありがとうございまっす!!」
なぜかすごく緊張してしまって。
「うん、いいのいいの。だからキミ―――愛華さんは早く学校に行きなさい。五年生だから、遅刻しちゃまずいでしょ?それに、親友の絵美奈さんも巻き込んでしまうから」
「は、はい・・・・・」
「じゃ、そろそろ行かなきゃ。ほらいくよ、愛華っ!!!」
「え、あ、うん!!」
「いってらっしゃい。上月愛華さんと清水絵美奈さん。彰吾にいじめられないようにね」
「「は、はい・・・・!!」」
私と絵美奈はそのまま走り出した。が、あることを不審に思って、絵美奈に話してみた。
「ねえ、絵美奈?何であの人、私たちのこと、知ってたんだろうね?」
「彰吾のことも知ってたから、たぶん彰吾のお兄さんだよ」
絵美奈はそんな事興味がないらしかった。でも絵美奈の推測は間違っている。なぜなら―――
(あの人、彰吾のお兄さんなんかじゃない。だって、絵美奈がさらわれたときに来て、助けてくれたお兄さんは、あの人じゃないもん。じゃ、誰―――――?)
私はそんな妖しい雰囲気にも、なぜか強く惹かれたのだった。
――――ふふふ、あの女の子が上月愛華か。なかなかじゃないか――
――――兄貴、何をするおつもりですか?あいつぐらいなら俺でも――
――――僕に楽しませてくれないか?あの子は気に入ったしね。さすが元苛められっ子だ。楽しみがいがあるよ――
『兄貴』と呼ばれた男は、これから何か起こしそうな、『妖しい』雰囲気を秘めた男らしかった。
この妖しい男は、誰でしょうか?
次話まで想像をふくらませてお待ちください。