第二話・変わる愛華
あたしは、上月愛華。いじめられている。
でも今日からは違う。あたしは変わる。変わるんだ。
もう誰にもパシリなんて言わせないために。ごく普通の日常を送るために。
そして何より、もういじめなんて、このクラスから消すために、あたしは変わる。
もうあたしは、いじめられっこじゃない!!
あたしがひどいいじめにあったその二日後。教室に入ったあたしを見て、クラスメイトは驚きを隠せなかった。それもそのはず。
だって、一昨日のあたしとは、まったく違っていたのだから。
茶髪に染まった髪。
少し大人目のメイクをした顔。
服装も落ち着いたものから露出が多いものに変わっていた。
そして何より・・・・。
「お前・・・・・眼鏡は・・・・?」
そうなのだ。一昨日までかけていた眼鏡は、顔から消えていた。私は眼鏡をやめ、コンタクトにしたのだった。
もちろん、医者に許可は取っていない。
「お、どろいた・・・・まさかあのパシリゆ・・」「パシリ優等生じゃねえ!!!!!」
バンッッッッッ!!!!!!あたしが黒板に筆箱を投げつけた。その音が教室中に響き、みんなは言葉を失った。いや、出せなかったといったほうがいいかもしれない。あたしはもう一度、低い声で重々しく言った。
「あたしは もうパシリ優等生じゃねえ。」
「気取ってんじゃねえよ」
その声がした方向―後ろの扉のほうに目を向けた。そこには――彰吾がいた。
「お前は、いつまでもパシリって決まってんだよ、俺専属のな。」
あたしは、彰吾の目を見た。鋭かった。ほんの少しだけ、怖かった。でも、言ってやった。
「ふざけんな。てめぇのパシリなんかやらされてたまるかってんだよ。もうあたしは変わったんだ。」
そこまでいって、彰吾をまっすぐ、鋭い目で見た。そしてもう一度、低い声でいった。
「もう誰にも、パシリなんて言わせはしない!!」
「はん」
彰吾が言った。鼻で笑った、その一言に対する怒りをこめて、あたしは言った。
「馬鹿にすんじゃねえよ。二日で変われるかって思ってるだろ?変われんだよ!気持ちと努力はあればな」
「お前が変われるわけねえだろ?このパシリが!馬鹿が!いじめられて強がり言うしか能がないアメーバさんよう?」
「なんだとぉ・・・・・?」
あたしは怒りを――MAXの怒りを込めて、あたしは怒鳴った!
「ふざけんな!!いったろ?あたしは変わったんだ!!なんならどっかで、いじめてもらってもいいんだぜ?いじめることしか能がない蛇さんよ?」
ついでに少々の皮肉も入れまして、いった。彰吾はちょっとムカついたみたいだったけど、無視。
「・・・・いいぜ、試そうじゃねえか」
「ほう、戦いを受けるか」
「ただし、だ」
彰吾はちょっとだけ目を尖らせて、言った。
「戦う――確かめるのは、俺の部下たちだ。お前がどんなに弱いか、教えてやるぜ」
ふうん、彰吾はそーゆー手できたのか。なら、そいつらをもてあそぶのも面白いかもね?
「受けてたとうじゃねえか。こっちも、あたしがどんなに変わったか、教えてやるよ」
「上等じゃねえか」
「そっちこそ」
あたしらはしばらく睨み合った。そして彰吾が、こんなことを言った。
「決行は明日。放課後にやる。逃げんなよ」
「そっちこそ。ところで」
あたしは冷酷な微笑みをうかべ、聞いた。
「本当に、いいのね?」
「ああ。それが何か?」
「なんでもないわ。じゃ、また明日。」
あたしは教室を立ち去った。
彰吾も変だと思ってたけど、これでいい。
きっと、とめても無駄だから。
決着は、明日。
彼女が彼に聞いた言葉には、ワケがあった。
それを聞いたら、貴方は「きっと自分でこんな事いえる」とお思いだろう。
しかし、彼女にはそれができなかった。いや、する必要がなかったのだ。
彼女は表情で、説明していたのだから。
そして、彼はそれを無駄にしたのだから。
「きっと後悔するわよ」という、彼女からの、最後の忠告を。