第十二話・黒ずくめの男
こんにちわ、愛華です。
今は、クラブ活動中。私は絵美奈と同じ「バトンクラブ」です。
「絵美奈、クラブ活動ってあんまりやったこと無いよね」
「そうだよね、五年になって何ヶ月か経つのに、これが初めてだよね」
そんなことを言いながら練習していたら、注意されました。
「ちょっと、そこの五年!喋りながらやってたら怪我するよ!」
「怪我なんかしませんよ……痛っ!?」
ほんとに怪我しちゃったみたいです…。
「愛華、大丈夫!?」
「うん、大丈夫。ちょっと手首ひねったみたい」
実はちょっとじゃないけど、心配かけないようにあえてこう言いました。
「ならいいけど。無理しないでね、ちょっと休んでなよ」
「ぁ…うん。ありがと」
「ちょっと」って言っちゃったけど、本当は痛いんですよね……
「ではこれで練習終わりー!みんな帰っていいよ!」
「「「はーい!」」」
さて放課後。私は絵美奈と一緒に帰宅中。
「絵美奈、明日遊べる?」
「うん、遊べるよん♪どこで遊ぼうか?」
今日の放課後から明日の話です。
気が早いなんていわないで下さいよ?
「どこで遊ぼうか?」
「そうだね――――」
その時、絵美奈の後ろから自転車で男の人が近づいてきました。
全身黒尽くめで、私たちの後をぴったりくっついてきます。
でも絵美奈は気づいていないみたいで―――――
「ほんじゃね、愛華!」
といって、元気に別れを告げて去っていきました。
そして、黒ずくめの男の人は、絵美奈のほうにぴったりくっついていきました。
それが彼女との、少しの間のお別れとも、まったく知らずに………―――――。
次の日。
「清水がさらわれた」
先生からそのことを聞いた私は、愕然としました。
やっぱりあの黒ずくめの人は怪しい人だった!
絵美奈の近くにいたのに守れなかった!
じゃぁあの人は、一体、誰……
「あと、上月にメモが届いている。お母さんからだそうだ」
お母さん?私は首をかしげました。
お母さんなはずがないから。
しかし、そのメモを見たとき。
私はもう、上月愛華ではありませんでした。
ただそこには。
瞳に冷たい炎を宿す、暴力少女の姿しかありませんでした。
――――――上月愛華、いや、暴力少女へ
清水絵美奈は死の運命にある。
お前が闇雲に助けに来れば、清水絵美奈の命は無いモノと思え。
ただし。
この文面を書いた者を見つけ、戦って勝てば、清水絵美奈は無事にかえそう。
負けた場合、お前の命も清水絵美奈の命も無い―――――