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大罪の魔神王  作者: ひなた 奏
2章 時止まりの回廊
21/21

21話 五大魔獣

これから23時代に投稿していこうと思います。

更新は申し訳ありませんが不定期です

光たちは宮廷図書館に備え付けられている地球の教室の半分程度の部屋で青髪のポニーテールの宮廷魔道士長キリナ・フォン・アーツリアの授業を受けていた。

 この部屋は宮廷魔道士や果てには王女まで勉強に使うため勉強部屋と呼ばれている。宮廷図書館に備え付けられているため調べ物や勉強に打って付けの場所になっている。

 光たちの教育係がキリナに任された理由は、キリナが侯爵令嬢のため礼儀正しいこと、聖教の敬虔な信者であるからだ。

 もちろん、キリナの教育は勉強だけではなく、魔法も教えている。


 光たちが【カルゲン】に召喚されてから一ヶ月程経ち、【カルゲン】の歴史や地理、宗教などを教えられてきた。

 今学んでいる単元『魔物、魔獣』が最後の単元になる。


「さて、ここ何日かで『魔物、魔獣』の単元を進めてきましたが、光様、魔物と魔獣の違いを説明してみて下さい」


 キリナは魔力筆――魔力を込めれば特定の素材に文字を書ける棒状の物――で魔力筆が掛ける素材で作られた【カルゲン】版黒板をコツコツと叩きながら光に問うた。

 ちなみに、キリナはもちろん王族以外は光たち勇者を『様』付けで呼んでいる。

 光たちは地球では超がつくエリート。習ったことを答えるなど造作もないことだった。

 光は起立して答える。


「はい。魔物は魔力と核を持つ存在のことです。魔獣は魔力と核を持っていることは魔物と同じですが、異なるのは強さです。キリナさんは、赤子と大人ほど違うと仰っていました」


 【カルゲン】では強さとランクで表している。

 F、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、EXの10段階だ。魔物はSランクまで、魔獣はSS、SSS、EXと分けられている。AからSには壁があると言われており、一つランクが上がるだけでその強さは桁違いになる。しかし、SからSS、SSからSSS、SSSからEXも桁違いになり、SSでは一国とほぼ対等に渡り合え、SSSでは一国を軽く凌駕する。EXでは大国ですら対抗できず、その存在は災害と同一視される程である。

 このランクは冒険者のランクにも使われているが、Sランクの魔物には最低でもSランク冒険者5名、SS、SSS、EXの魔獣にはSS、SSS、EXランク冒険者が最低でも10名必要だと言われている。

 そして、魔獣の中で最強のEXランクに位置づけられている魔獣のことを五大魔獣という。


「今日はこの五大魔獣について学んでいきましょう。これで私の勉強についての教育係は終了となります。最後の授業もしっかりと学んでくれることを期待しています」


 キリナは黒板の一番上に『五大魔獣』と書き、その下に『天王バハムート』、『海王リヴァイアサン』、『陸王ベヒモス』、『狼王ディマイズウルフ』、『鳥王ケツァルコアトル』と書いた。


「これが五大魔獣です。天王、海王、陸王がEXランクに位置づけられており、狼王と鳥王はSSSランク最上位に位置づけられています」


 ここで礼音が手を挙げ、質問する。


「キリナさん。何故五大魔獣と呼ばれているのにランクが分かれているのですか?」


「良い質問です。それは、狼王と鳥王がこの半年の間に存在が確認されたためです。天王、海王、陸王は遙か古代から存在する魔獣です。EXランクとはこの三大魔獣のためだけに作られたランクなのです」


 EXランク冒険者はこの三大魔獣を少しでも足止めできる人外の存在のことを指す。


 次にアリスが手を挙げ、抱いて当然の疑問をぶつける。


「何故この半年の間に存在が確認されたのですか? それほどの存在ならば、もっと以前に確認されていて当然だと思うのですが」


「申し訳ございません。勇者様方。その疑問に明確な答えを示すことはできません。というのも、まだ明確な答えがでていないのです。以前から現在の狼王と鳥王にあたる魔獣の存在は確認していました。しかし、この二体が進化するにはあと何十年も時間がかかると言われていたのです。それなのにすでに進化を遂げてしまった。その理由は皆目見当も付かないのです」


「それは何者かが人為的に進化させた可能性もあるのか?」


 神威が最も恐ろしい可能性を示唆する。

 キリナはその可能性に首肯を示す。


「はい。尤もその可能性は極めて低いと言えます。現在、魔獣はおろか魔獣を人為的に進化させる技術は存在しないのです。しかし、魔物を人為的に進化させられる技術を持ちうるかもしれない種族は存在します」


「ドワーフ族ですか?」


 咲良がドワーフ族を思い浮かべたのは、ドワーフ族が人類の中で特出した技術を持っているからだろう。

 だが、キリナは頭を振る。


「いえ、ドワーフ族でもあり得ません。なにしろ、人為的進化を不可能だと断じたのは他ならないドワーフ族なのですから」


「ではどの種族が……」


 穂乃花が見当も付かないという風にキリナに視線を向けると、キリナは名状しがたい表情で答えを示した。

 黒板に書かれた種族は『魔族』だった。


 光たちは言葉を失う。なにしろ、魔族は人類と敵対している種族なのだから。そんな魔族が人類が持ち得ない技術を持っていることは衝撃だった。


「尤も、文献によれば、ですが。しかし、もし本当にそのような技術を持っていた場合、我々にとっては相当な不利になります。もしかしたら、魔族は狼王と鳥王を従えている可能性もありますから」


 心配そうな表情を浮かべる光たちを見て、キリナは安心させるように笑みを浮かべる。


「しかし、ご安心ください。勇者様方には狼王と鳥王に対抗する力をつけてもらうため、EXランク冒険者3人を指導役として招待しております」


 天王、海王、陸王が含まれていないのは、立ち向かうこと自体無謀なことだからである。


◇ ◇ ◇


 冒険者ギルドアステカ王国王都アステ支部の支部長室で支部長【絶腕】ダヌスとその秘書【氷結】ナリアが3人の冒険者と向かい合っていた。


 2人のエルフのEXランク冒険者パーティー【神双剣】キースとナーシャ、ドワーフのEXランク冒険者【神壁】ガウスの3人はナリアが入れたお茶を飲みながら、ダヌスが切り出すのを待っていた。


「【神双剣】キース、ナーシャ、【神壁】ガウス。お前らに指名依頼だ。依頼主はアルバスタ・フォン・アステカ、つまりこの国の国王だ」


 何故ダヌスがアルバスタを敬称なしで呼んでいるのか、それは冒険者ギルドがどの国にも属さない完全独立機構だからに他ならない。

 故にどの国も冒険者ギルドに権力によっての圧力をかけられない。かけでもしたら、その国から冒険者ギルドが手を引き、今や何でも屋となっている冒険者がいなくなることになる。そうなれば、魔物、魔獣討伐から街の清掃などの雑用をこなす者がいなくなることを意味する。その損害は計り知れない。そのため、冒険者ギルドや冒険者に圧力をかけた貴族は良くて降格、最悪爵位を取り上げられることもある。

 冒険者ギルドを完全独立機構と定めたのは伝説となっている初代冒険者ギルドグランドマスター、バスターだ。これにより権力による圧力がほぼなくなり、その偉業からバスターは英雄と呼ばれている。


 現在世界に普及している冒険譚の多くはこのバスターの冒険を描いたものである。


「依頼内容と報酬は?」


 指名依頼は戦争参加依頼と並んで二大面倒依頼と言われている。

 そのため、冒険者は指名依頼があった場合は依頼内容と報酬、特に報酬によって依頼を受けるかどうかを判断している。


 キースの問いにダヌスはふふん、とむかつく笑みを浮かべて答える。


「依頼内容は異世界から召喚された勇者たちの指導。期間は【時止まりの回廊】に挑める程の実力が付いたと指導者が判断するまで。報酬は一日ごとに白金貨1枚。依頼完遂後に白金貨追加で100枚出る」


 キースとナーシャは目を見開いた。あまりにも好待遇だったからだ。

 【カルゲン】の通貨は、万国共通で鉄貨、銀貨、金貨、白金貨で、それぞれ100円、1000円、10000円、1000000円の価値である。100枚ごとに上昇し、例えば鉄貨100枚で銀貨1枚となる。

 つまり依頼を完遂すれば最低でも1億円を手にすることができることになる。


 その後、指導内容はこちらが決めて良いのか、など細かいことを詰めていき、結果、キースたちはこの依頼を受けることにした。


 冒険者ギルドを出た3人は初対面だったため近くの酒場で自己紹介などを含めた親睦会を開いていた。


「なるほど、お前たちは幼馴染みで冒険者をやってんだな」


「ああ。そういうお前も鍛冶師にならずに冒険者やってるんだな」


「まぁな。どうも儂には作ることよりも使う方が合ってるからな」


 キースとガウスが親睦を深めている間、ナーシャは黙々と運ばれてくる料理を口に運んでいた。

 それをキースは平常通りだなと呆れた視線を向け、ガウスは孫でも見るような優しい視線を向けていた。


「しかし、儂のエルフのイメージは魔法しかなくてな……」


 その発言を聞いたナーシャがステーキを切っていたナイフをガウスに向けた。


「そのイメージを払拭するために私たちは魔法剣士をやっている。エルフは魔法が得意。だけど華奢。その欠点を豊富な魔力による身体強化魔法で補い、優れた機動力へと変えた」


「ほう、つまりナーシャたちは革命者なわけだ」


「かくめいしゃ? ……そ、そう! かくめいしゃ、かくめいしゃ!」


 誤魔化すように言うナーシャを見てキースとガウスの2人は笑いが込み上げてきた。

 和やかな雰囲気なまま親睦会は進んだ。

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