15話 滅亡の危機
更新ゆっくりとですが再開します。
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ミーシャは暗黒騎士団の後ろを歩きながら、自分の手を握ることを繰り返していた。そうしていると、自身に備わっている、否、備わせてもらった力を感じることができる。
「この力があれば……」
呟いたと同時にカーミラを始め暗黒騎士団が足を止める。当然ミーシャも足を止めることになる。
そこは丁度城の真後ろに位置している。
ここで何を? とミーシャが思案していると、カーミラが近付いてきた。
「ここにはレイ様が設置なされた転移門がある。もちろん普段は隠蔽されているけどな。ここを通るにはレイ様より下賜された腕輪が必要になる」
そう言ってカーミラが渡してきた腕輪は宵闇から切り取ったような美しい腕輪だった。
ミーシャが大切そうに腕輪を通し、終えるとカーミラたちがミーシャに跪いていた。
「これからあなたが暗黒騎士団の団長だ。これから宜しく頼む。で、だ」
カーミラは立ち上がってから忠告する。
「あなたの実力はわかっている。だが、これだけは言わせてほしい。もし、復讐が成っても、その力に呑まれるな。この力はレイ様のための剣であり盾だからな」
「忠告ありがとうございます。肝に銘じておきます」
自分でもわかっていたことだが、改めて言われるとより心に留めることができる。
これからもレイ様のために。改めて決意したミーシャは暗黒騎士団団長として号令を掛ける。
「では、作戦開始です!」
『はっ!』
そうしてミーシャ率いる新生暗黒騎士団は転移門をくぐり、作戦を開始した。
◇ ◇ ◇
グラハム聖国。王宮の謁見の間で聖王アーマルド・フィル・グラハムの面前に聖国騎士団総団長グードラス・フィル・ドラゴンキラーが跪き、報告を行っていた。
「では、邪教を信仰していた村は滅ぼしたのだな」
はい、と首肯するグードラスにアーマルドは満足そうに頷く。
「それで、あれは見つかったのか」
「いえ、あれは今回も見つかりませんでした」
「そうか」
少し残念そうな声音だが、想定していたことだった。
「あとひとつなのだがな。【邪神武具】。六つは我らが手中にある。なんとしても見つけよ。あれは何としても封印を施さなければならない。あれらは世に出してはいけないものだ」
「はっ! 了解いたしました。必ずや見つけてみせます」
「うむ。期待しておるぞ」
「では、失礼いたします」
グードラスが一礼してから謁見の間を出ると、そこには聖国騎士団第一団長でありグードラスの弟であるドミラス・フィル・ドラゴンキラーがいた。
「ドミラス。何故ここにいる」
二人がいるのは普段は絶対に訪れない謁見の間の前である。自然とグードラスも怪訝な目になっていく。
ドミラスはグードラスの誤解を否定するように両手を胸元で左右に振りながら答える。
「まあまあ、誤解するなよ、兄さん」
「仕事の時は兄さんと呼ぶなといつも言っているだろう」
「二人だからいいじゃねえか。それよりも敵が来る」
その言葉にグードラスも真剣な表情になる。
ドミラスは危機予測というユニークスキルを持っている。
自身、近しい者に危機が訪れるのを前もって予測できるというスキルである。聖国騎士団はこのスキルで何度も危機を乗り越えている。
「どのくらいの危機だ」
予測できる危機は、ちょっとした危機、危機、命の危機、一度もないが滅亡の危機の4段階に分かれている。
グードラスも命の危機程度だと思っていた。命の危機ならば今までも何度も乗り越えてきている。
「滅亡の危機、だ」
「なっ!?」
滅亡の危機とは、一国が滅亡するほど危機が襲うことを意味している。
「他の団長を通じて全兵士に戦闘準備をさせろ」
勝算は正直全くわからない。だが、グードラスはすぐに行動を開始した。
「了解だ」
ドミラスは頷くと、直ぐさま走り出した。
どんな化け物が来るかわからない。
だが、
「聖国騎士団をなめるなよ。例えどのような化け物が来たとしても打ち倒してみせる」
グードラスの士気はこれまでにない程上がっていた。
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