14話 作戦開始
俺は今、玉座に座っている。
目の前には、フェリグリスと四天王、暗黒騎士団と新たにその団長に就任したミーシャがいた。
「それで、どうやって【グラハム聖国】を攻めるかを話し合いたいのだが。その前にミーシャ」
「はい。何でしょうか」
「お前は【グラハム聖国】か聖騎士。復讐するならばどちらだ?」
「どちらも、です」
俺は頬が吊り上がるのを感じた。
俺が期待していた答えだった。
「ならばその方向で話を進めよう。聖騎士は、隊長格を何人か殺せば十分だろう。聖騎士長がいればそいつも殺しておきたいな。で、【グラハム聖国】だが。何かいい案はないか?」
俺がそう尋ねると、スイカが答えた。
「【グラハム聖国】はミーシャさんが所持しているもの以外の【邪神武具】を全て保管しています。それを奪えば、大打撃を与えられるかと」
【邪神武具】。
邪神が封印される前に自身の魔力で創り出した武具のことである。
それらには邪神の能力が備わっていると言われている。
邪神を信仰している邪神教は、【邪神武具】が邪神の封印を解く鍵だと信じている。
「なるほど」
「私的にはそれに加え、影人族も救い出してほしいです」
「影人族か……」
俺はすぐに検索をかける。
影人族は、世界で唯一魔法スキル〈影魔法〉が扱える一族のことで、世界最強の隠密一族として知られている。
あらゆる汚れ仕事を請け負い、暗殺できない者はいないとまで言われたため【夜の支配者】と呼ばれている。
そのため、世界中から危険な一族とされ、【グラハム聖国】に幽閉されることになった。
確かに、隠密に優れているのなら、『隠』の軍に入れれば、大幅な戦力アップが狙えるだろう。
「救いだしてもいいが、時期はずらすぞ」
「はい、構いません。私の願いを聞いてくださりありがとうございます」
スイカもわかっているようだ
【グラハム聖国】を襲撃した時に救い出してもいい。それが効率的だろう。
だが、時期をずらせば更なる打撃が狙える。
連日、敵に国の中枢に入り込まれ、事件を起こされる。国に打撃を与えるのにこれほど良い方法はあるだろうか。
「カーミラ。いつ動ける」
ミーシャは暗黒騎士団に入ったばかり。そのため、勝手が知れているカーミラに尋ねた。
「今夜からでも。我々はいつでも出陣できるよう備えておりますし、準備も暗黒騎士団に貸し与えられた指輪型のアイテムボックスだけですので」
その解答に俺は満足し、頷いた。
命令を下す前に、俺はミーシャ用の鎧を創造し、与えた。
「よ、よろしいのですか?」
「普通の鎧だとミーシャの動きを制限してしまう結果になるからな。それならばお前の動きを阻害しないだろう。……では、命ずる。ミーシャ率いる暗黒騎士団は準備が整いしだい【グラハム聖国】に向け出立せよ。聖騎士の隊長格の殺害と【邪神武具】の強奪をしっかりとこなせ。現場の指示はミーシャとカーミラに一任する。良い結果を期待する」
『はっ!』
ミーシャたちは握った右手を胸に当て、答え、玉座の間を出て行った。
俺は礼をして出て行こうとするフェリグリスたちを呼び止めた。
「フェリグリスたちは残れ。お前たちには別の命を与える」
「何でしょうか」
「お前たちは今から順番にあの修行部屋で修行せよ。それが終わり次第、ゴブリン、オーク、オーガの集団をできるだけ集めよ」
『はっ!』
フェリグリスたちはミーシャたちと同じように答え、玉座の間を出て行った。
「作戦開始だ」
俺は玉座の間で独り言ちた。
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