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大罪の魔神王  作者: ひなた 奏
1章 復讐の暗黒騎士
13/21

13話 暗黒騎士団団長

不定期更新です

 俺はミーシャのステータスを鑑定した。

 その結果、ミーシャは自身のスキルを使いこなせていない、或いは使い方を知らない可能性がある。

 〈反転〉。

 〈黒炎〉、〈韋駄天〉、〈身体強化(極み)〉、〈黒炎之衣〉が取得できる強力なスキルだ。

 〈反転〉は絶望によって自分の価値観が真逆になることで取得できるスキルだ。


 原因は、十中八九村のことに関してだろう。


 〈反転〉を使いこなせたら、相当な戦力になるだろう。

 だが、それだけでは勿体ない。ミーシャはもっと上へ至れる才能が眠っている。


 ミーシャの〈反転〉は現在使用不可状態にある。

 まず、これを使用可の状態にしなければならない。

 その後、更なる上を目指してもらう。


 だが、正直言って二段階で行うのは面倒で、尚且つ非効率的だ。

 そのため、ミーシャにはこの二段階で行うものを一段階でやってもらう。


 覚悟はもう決まっているのだ。

 何が何でもやり遂げてもらう。


「あの、ここは……?」


 ミーシャは疑問を漏らす。


 それはそうだろう。

 連れてこられたのが大きな扉の前なのだから。


 途中で会ってから、付いてきたフェリグリスたちも困惑している。

 このまえまではこんな扉はなかったのだから。


「ここはいわば修行部屋だ。とびきり厳しい、な」


 そう、修行部屋だ。

 この部屋の中は、外とは時間経過が異なっている。

 

「部屋の中の一日はこっちでの一分だ。それに加え、部屋の中には強者が待ち構えている。そいつを倒さねば部屋からは出られない。強者の実力は、俺が少し本気を出す程度だ。部屋の中では何度死のうが生き返る。生にしがみ付き、技を盗み、自らを昇華し、自分を超えて見せろ」


「はい!」


 ミーシャは頷き、自分で扉を開き、部屋に入っていく。


(レイさん。いいえ。レイ様。ありがとうございます。私が再び部屋を出た時、私はレイ様に忠誠を誓い、あなたの剣となり、楯となります)


 ミーシャが部屋に入ると、自動的に扉が閉まり、魔法で鍵が掛けられた。

 この施錠魔法を解くことができるのは俺だけだ。


 フェリグリスはレイの説明を聞きながら、戦慄していた。


(まさか、時間までも操れるとは……。それはまさに神の所業。我々が仕えるに相応しいお方。しかし、ここまで実力が読み切れないお方は初めてですね)


 それはデルガたちも同様のようで冷や汗を流していた。


 ◇ ◇ ◇


 60分後、扉が開き、ミーシャが出てきた。

 ミーシャの纏う強者の雰囲気はフェリグリスを凌駕していた。


 俺は思わずほくそ笑んだ。


「ついてこい。お前の実力を確認したい」


 俺が歩き出すと、ミーシャは頷き、後ろを静かについてくる。

 

 闘技場に着くと、そこにはある集団が待っていた。


「暗黒騎士団、何故ここに」


 フェリグリスが疑問を口にする。

 当然だろう。本来なら、今の時間暗黒騎士団は訓練をしているのだから。


「俺が呼んだ」


 俺が呼んだと言うと、フェリグリスは納得したようだ。


「なるほど。……しかし、何故彼らを?」


 当然の疑問だな。


「ミーシャの実力次第で、ミーシャを暗黒騎士団の団長に指名しようと思ったからだ。暗黒騎士団も実力を確かめたいだろうしな」


「そうだったのですか。ご配慮感謝いたします」


 現団長のカーミラが一歩前に出て代表で頭を下げる。

 カーミラは天属性の使い手だ。そのため、金髪がとても美しい。メリハリのある体躯も合わさって神々しさまである。

 ちなみに、魔族は総じて肌が褐色な訳ではない。

 褐色なのは一部の種族だけで、殆どの魔族が普通の肌をしている。


 そういえば、カーミラには闘技場に来い、とだけ伝え、要件までは伝えていなかったな。

 まあ、いいか。


 ◇ ◇ ◇


 俺は舞台でミーシャと向かい合う。

 初めて会った時に比べれば、ミーシャは劇的に変化している。

 纏う雰囲気も変わり、余裕もあるように感じる。


 フェリグリスたちには観客席で見てもらう。

 カーミラたちはフェリグリスたちの後ろの席だ。

 暗黒騎士団はいわば近衛騎士団のようなもの。元々仕えていたフェリグリスとは並んで座れないということか。


 俺は視線をミーシャに戻す。


「準備はいいか」


 ミーシャは頷く代わりに口を開いた。


「レイ様。ありがとうございます。私を――」


「それ以上はまだ言うな。感謝はお前の復讐が終わってから聞く」


「左様ですか。わかりました。感謝は全てが終わったあとでさせていただきます」


 俺は頷き、再度問う。


「準備はいいか」


 今度は頷いた。


「はい! では、いきます!」


 ミーシャは片手長剣を手に向かって来る。

 あれは俺が部屋の中に用意していた剣だ。

 憤怒之剣は今現在もミーシャの憤怒を溜め込んでいる。もし、憤怒之剣を使い、その溜め込んだ憤怒が放出されるのを恐れたために用意した。

 もちろん、憤怒之剣は現在もミーシャが帯剣している。


 俺はミーシャと全く同じ剣を創り出す。

 これはミーシャの実力を測る戦いだ。条件を同じにしなければ意味がないからな。


 現れた剣を俺は握る。

 その瞬間、ミーシャの姿が掻き消える。


 そう、フェリグリスたちの目には映っているだろう。

 魔王ですら目で追えない移動速度。速度はそのまま威力に直結する。

 見えないミーシャの最高速度の攻撃を受ければ、さすがの俺もどうなるかはわからない。

 まあ、恐らく無事だとは思うが。


 そこで俺は右手を振り上げ、そのまま振り下ろす。

 すると、大きな金属音が響く。


 ミーシャの驚く顔が目に映る。


 見えている。


 再び、ミーシャが姿を消す。


 見えている。

 最初から全て、


「見えている」


 四方八方から迫るミーシャの攻撃を俺は危なげなくさばいていく。


 しばらく打ち合っていると、ミーシャの方から切り上げた。


 ミーシャと向き合う。


「やはり、だめでしたか。なら、私の本気をお見せします」


 そう言うと、ミーシャは魔力を高め、その魔力を体に纏わせていく。

 その魔力が炎に変わり、そして、黒炎になる。

 黒炎の形が変化していき、鎧を形作っていく。


「〈黒炎鎧装〉」


 なるほど。黒炎を鎧にしたわけか。

 確かに、強そうだ。


 みれば、剣も黒炎が覆っている。

 付与もできるのか。

 面白い。


「来い」


「行きます!」


 振り下ろされた剣を俺は受け止める。


 全体的に能力が向上しているのか。

 興味深いな。


「……ッ」


 受け止めていると、俺の剣が少し燃えていた。

 これが付与効果か。

 何気に恐ろしいな。


 俺は剣がだめになる前にミーシャの剣を弾く。

 すぐに剣を振るが、ミーシャには躱され、ミーシャは後ろに跳んで距離を取った。


「では、少し俺も本気を出そうか」


 俺は〈闘神〉と〈武神〉を少しだけ発動し、武器を強化し、身体強化を掛ける。


「今度はこちらから行くぞ」


 俺は一瞬で、ミーシャに肉薄すると、剣を振う。

 ミーシャは剣を楯にし、防いでいる。


 俺は何度もミーシャに斬りつける。


「くっ……」


 ミーシャは苦悶を漏らしながらもなんとか防いでいく。


 俺がそろそろ決めようかと思った時、ミーシャの魔力が膨れ上がり、それに比例するように黒炎も膨れ上がった。


 俺は咄嗟に距離を取る。


「さすが、ですね。勝てる気がしません。しかし、最後に抗わせてもらいます」


 ミーシャは剣に魔力を集めていく。

 それは剣の容量を遥かに超えていた。


「まさに最後の抵抗、か」


「はああああああああぁぁぁ!」


 気合と共に、剣を突くように振るった。

 そして、現れるはまさしく黒炎の奔流。


 触れるもの全てを焼き払いながら黒炎の奔流は俺に迫ってくる。


 これには俺も驚かされた。

 まさか、こんな切り札を隠していたとは。


「ならば、私も応えよう」


 俺は剣に風の魔力を付与する。


 振り上げ、一気に振り下ろす。

 

 そして、放たれるは全てを切り裂く風の刃。


 風の刃は黒炎と接触すると、黒炎を切り裂いていく。


 風の刃が黒炎を完全に切り裂いたと同時に、俺はミーシャの首筋に剣を当てていた。


「参りました。私の完敗です」


 ミーシャの剣はすでに灰になっていた。


「俺も楽しませてもらった」


 俺がフェリグリスとカーミラに視線を向けると、2人は頷いた。

 それに俺も頷き返し、ミーシャに視線を向ける。


「ミーシャ」


「は、はい」


「我、魔族の王【魔神】レイの命により、其方を暗黒騎士団団長に任命する。これから任務に励め」


 ミーシャは、右膝を地面につけ、頭を垂れ、握った右手を胸に当てた。


「謹んで拝命したします。これからは【魔神】レイ様の剣となり、楯となりお守りしていきたい所存です」


 こうして、新たな暗黒騎士団団長が誕生した。

読んでくださりありがとうございます。

至らぬ点も多いかと思いますが、これからもよろしくお願いします。


誤字脱字や矛盾点などおかしな点がありましたら、ご報告いただけたらと思います。

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