メルシーと黒の出会い
人間と神の間には、人間型人形通称ドールが居る。ドールは、昔人間が、誘拐されその人間のクローンとなっている。これは、とあるドールの話である。
「ふぅあーっ。」
僕は黒。んーまあごく普通の人だった。何で過去形かって?んー何となくそんな気するから。僕は取りあえず、駅に向かう。バイトに行かなきゃいけないからね。
「いらっしゃいませー。」
と、そこに女子高校生二人が、入ってきた。
「ねぇねぇ、知ってる?今話題の人間型人形通称ドール。」
「うんうん。知ってるー!ランクによって違うんでしょう?」
「私も欲しいなー!」
ドール?はん、バカバカしい。どうせ、ただの人形なんだよ。
バイトの帰り
「んー!」
「こんばんわ。人形要りませんか?」
歩いていたら、目の前に可愛らしい女の子が言った。
その少女は、黒髪で、横結いで、目が少しだけ吊り上がっていた。
いかにも強そうな女の子だ。
「人形?僕は、男だ。それに、そんな年じゃないから。それじゃあ。」
と言って、僕は女の子の脇を通ったはずだった。誰が見ても大袈裟じゃないかというくらい、間を開けて、脇を通った。
はずだったのに、女の子は僕の目の前ににこにこしながら、立っている。
「僕は、要らないよ。」
「自宅警備員さんですか?」
「はぁー!?」
「いえ、私を不要だというのは、自宅警備員さんだけですから。」
「君は、何なんだい?」
「おっと、私はこれで。また明日ここで会いましょうねー!」
と言って女の子はいなくなっていった。
何なんだ、あの非常識っぷり。どうゆう教育でああなるんだ。ったく、要るよな。自分が、不利になると、逃げる奴。絶対行かないね。
「こっちです。」
はぁ。なんだかんだで来てる僕に呆れる。
「君に聞きたいことが山ほどあるから、丁度良かった。」
「そうなんですか?そうには見えませんけど?」
「うっ。んまぁ、とりあえず、僕の家で話そう。近いから。」
「有難うございます。それじゃあ、お礼に、連れて行きますね。私に、案内してください。」
というと、女の子は、僕をお姫様抱っこした。
「え!?」
「何か、不満でも?」
「いや、普通逆じゃない?!」
「良いんですよ。細かいことは気にしないでくださいね。」
女の子は、そういうと、にこっと笑った。
コスモスの花のように綺麗だったなー。
「では、行きますよっ!ほっ!」
女の子は、僕をお姫様抱っこしたまま、しゃがみ、ジャンプした。
「すごーい!見て見て!僕、ここがこんなに綺麗だって初めて知ったよ!」
僕たちは、空を飛んでいた。大体、東京スカイツリーの展望台の所くらいだ。
「やっぱり、都会の夜景汚いですね。人の手が、かかりました!って感じの夜景ですね。田舎は、そうゆうお金とかないので、自然そのままなんだそうです。だから、田舎の方が、綺麗だって言ってる意味が分かりました。」
「そうなんだ。僕も見て見たいな。田舎の夜景。」
「はいっ!ぜひ、一緒にですっ!」
一緒に?え?
「とりあえず、黒案内してくださいっ!」
「何で、僕の名前知ってるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
僕の疑問は、夜空で、叫びに代わって言った。
「改めまして。人形要りませんか?」
女の子は、希望に満ちた目で、こっちを見ている。
「だからー僕は、男だ。それに、そうゆう歳じゃない。」
「そうですか!では、こちらで、勝手に契約しますねっ!」
「ちょっと待って!僕は要らないって!しかも、契約って何!?」
僕が、そういうと、女の子は、急に真顔になり、言った。
「今流行っている人間型人形通称ドールをご存じですよね。」
「んまぁ、噂で聞いた事ある程度だけど。で、それがどうした?」
「Sランク級ドールメルシーは、聞いた事ありますか?」
「うん。電車に乗ってるとき、おっさんが、『わしは、メルシーが欲しいー』って言ってたもん。」
「はぁー。誰が、キモおやじのドールになるもんですかっ!」
「ん?もしかして、君今の発言からして、君がメルシー?」
「はいっ!」
メルシーは、満面の笑みで笑う。
「いやいやいや。」
「どうしましたか?」
「よくありきたりな発表の仕方だなっーって。」
「驚かないんですか?」
「驚いたらありきたりな物語だ。この作者はできる限り自分の道を作りたいと思っているらしいから。」
「そうですか。話を戻しますね。私達には、ランクがあるのもご存知ですよね。」
「うん。上から、S、A、B、C、Dだよね。」
「はい。上に居れば居るほど、神になる可能性は高い。ですが、デメリットもあります。」
「何?」
「上に行けば行くほど、敵が増えます。それに、貴族や王だって敵に回してしまう危険性があります。」
「分かった。けど、なぜ、人間と契約しなければいけないんだ?」
「私達には魔力が必要です。人間が、出しているオーラを私達は、魔力と呼んでいるのです。その、魔力をもらわないで生活できますが、まぁ不便ですね。とりあえず魔力をもらわい限り、戦いのときとかは、不利ですね。」
「そうか。もらわないで生活すると何で不便なんだ?」
「私たちは、人間の心・体・礼儀を人間と契約することによって人間から学ぶんです。なるべく人間に近づくために。だから、人間と契約しないと、だたの人形です。ですから、マナーが悪いと追い返されます。」
「そうなのか。」
「はい。だから、契約した人間の育て方によってさまざまなドールになります。」
「分かった。疑問ばっかですまないが何で僕なんだ?」
「私はいつか、神の母{ゴッドマザー}になるのが、私に課せられた課題なのです。今まで、いろんな人を見てきて、これほどいい魔力を出す人間はいないなっと。この人の出す魔力なら私は、神の母の戦いに出れるなーっと。この人と一緒ならいいなーっと思って声をかけました。」
メルシーは、黒をじーっと見つめる。
黒の顔は死んでいた。
「あれ!?もっといい反応期待してたのに!?」
「はぁー。ホントありきたりだー。よくある話じゃないかー。そっから、どうせ契約して、戦って、その課題を達成してはいハッピーエンドーって終わるんだよ。大体オチは読めた。つまんねぇー。」
「むぅ?!では、どうしましょう。」
「仕方がない。契約してあげるよ。」
「有難うございます!では、おでこを出してください!」
「こう?」
僕は、前髪を上に上げおでこ丸出しにした。
「はいっ!そのままで!」
と、メルシーは言った。そして、キスができるくらいの距離まで近づいてきた。
「驚かないで。そのままでいて。」
メルシーは、僕におでこをぶつけると、目を閉じた。
「私メルシーは黒と契約を結びます。よって、私の名前は、メルシー・ブラック。黒の名前は、黒・漆となります。黒、私の名前を呼んで。」
「メルシー・ブラック」
「黒・漆。」
「これで、契約終了。」
「何で、ブラック?」
「メルシー・黒より、メルシー・ブラックの方が響きカッコいいでしょ。」
「黒・漆?」
「なんか漆とメルシー似てるから。」
「似てねぇーよ!」
と、僕が突っ込むとメルシーは充電切れを起こしたように、首が、がくんとなり、下を向いた。
「メルシー?」
「契約完了。データ初期化。開始。」
と、機械音声が喋った。
ん?待て。今データ初期化って言った?契約結んだばっかりなのに!?意味ないじゃないか!
「データ初期化終了。再起動します。」
ウィーン
そんな擬態語が合うような動作でメルシーは顔を上げた。
「初めまして。私は人間型人形通称ドールSランク級メルシー・ブラックです。貴方がマスターの黒様ですね。」
「う、うん。」
「その様子だと、前の私は貴方に何も教えてないようですね。私達ドールは、契約を結ぶと、データを初期化し、そのマスターの好みのドールが作れるのです。」
「だから、データを初期化するんだね。」
「はい。ここからは、黒様の好みに育ててください。」
「うん。とりあえず、僕を黒って呼んで。」
「承知しました。」
「返事も普通に!かしこまらなくてよろしい!タメ口で!」
「うん。分かった。」
「それと、服だね。立って。」
黒はメルシーを上からつま先まで眺める。
今のメルシーの格好は、白いニットワンピースに、黒い靴下だ。
「君はそれ以外ないのかい?」
「君じゃないよ。シェじゃなかったメルシーだよ。」
「ごめんよメルシー。もう一度聞くが、その服以外ないのかい?」
「無いよ。この服を着せられて、人間界に送られたんだから。」
「そうか。しっかし困ったなー。」
「何が?」
「僕は男だ。メルシーは女だ。メルシーに服を買ってあげたいが、男が買うと変だし。入りたくないし。センスないからなー僕。どうしよう。困った。」
「むぅ?黒ぶつぶつ何を言ってるんですか?」
「そうだ!あいつを呼ぼう!メルシー携帯取って頂戴。」
「これ?」
「そうそれ。有難う。あ、メルシー人から物を貰ったら有難うだよ。物じゃなくても何かしてもらったりしたら言うんだよ。感謝の気持ちを言葉に出して。」
「分かった。えーっと今教えてもらって嬉しいから有難うって言うんだね。」
「うん。」
「黒有難う。」
「どういたしまして。」
と言い終わると黒は電話をかけた。
「もしもし。あ、僕だよ。僕。いやいや僕僕詐欺じゃないから。黒だから。助けてほしんだけど。」
電話する黒をずっとただメルシーは見つめていた。
そして呟いた。
「お腹空いた。」