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過ちの恋  作者: 桜 詩
23/60

23,舞踏会 (Gilseld)

 舞踏会に招待し、参列している令嬢たちの中でも、高位にあるのは、エリー・マクラーレン侯爵令嬢、アイリーン・カートライト侯爵令嬢、そして続くのがフェリシア・ブロンテ伯爵令嬢となる。


後は、この前の狩猟で会ったコゼット・ベイリアル バジェット子爵令嬢をはじめとする王妃として仰ぐには問題があると王家の評価のついている令嬢達となる。

もうあと数年待てば……結婚出来る年齢になる、ウィンスレット公爵家のマリエがいるのだが、彼女はまだ13歳だった。


女性たちの社交も、飛び抜けた令嬢が少ないためどこかざわついていて、いわゆる女同士のいざこざが頻発しているという。

しかし、フェリシアには凛とした佇まいと、圧倒的な美とそして、エリアルドの寵愛の噂が助けているのか、そういったものとは無縁な様だった。


しかし、それでも警備には気を付けなければならない。

向かえる側の男性には、独身の貴公子たち、それから見映えのよい近衛騎士をはじめとして集め〝王子との集団見合い〟が行われる事になった。


気を持たせない程度に、もてなすというのは只でさえ大変であるのに、今回のはそれに輪をかけて骨が折れる。

しかし、他ならぬカートライト侯爵がたくさんの令嬢と知り合って頂くために、一人に令嬢に対してはワンフレーズずつでパートナーを交代してはと提案してきたのだ。

これはもちろん、エリアルドにフェリシアと長く踊らせないという意図であろうが、ギルセルドたちにとっても助けとなっていた。



会場は小広間、小といっても大広間よりはという意味で、狭いわけではない。白と青の室内は、若者が集う今回の主旨としてはしっくりとする。


ホスト役であるエリアルドとギルセルドは、入り口に立って令嬢達を出迎えた。ほとんどの令嬢たちは衣装にいつも以上に気を配ってきたと分かる。さながらドレスのショーだった。

そんな中でもやはり、目立ったのはフェリシアとそしてアイリーンだった。


なるほど、美しさというのは、これほどの力を持つのかと、密かにギルセルドは嘆息した。周囲の空気まで変えてしまいそうだ。まだ若いが、あと数年たてばどれ程美しくなるだろう?


清楚さと、そして初々しさとを彩ったドレスは白に近いブルーで上半身には白のレースで飾られウエストにはサテンのピンクのリボン、スカートはふんわりと広がり本物の花と花びらのような飾りがバランスよく飾られていた。

そこにはまるでフェリシアという花が存在しているかの様だった。隣に立つエリアルドはきっと、表情には出ていないが見惚れているのじゃないかとないかと思った。


アイリーンもまた、フェリシアとは違う美少女だ。白い肌に黒い髪を結い上げそしてすこしカールさせた髪を垂らし、ローズカラーのドレスはバッグスタイルに特徴を持たせた大人びた物であった。


「……彼女も、さぞかし美女になるだろうね」

こそっとエリアルドに言うと、

「だったら、おまえが結婚するか?」

「やめろ……もし子供が生まれたら本気で暗殺を心配しないといけなくなる。そんな危険な眠りはごめんだ」

冗談めかしてギルセルドは囁いた。


そんな事を話ながら、エリアルドとギルセルドは令嬢たちと踊りそして一人ずつと話を交わした。


そして、アイリーンがピアノを弾くとナサニエルが言い出し、それにフェリシアが引き出されたが、天はいくつ彼女に祝福を与えたのだろう。それは見事な歌声だった。


結果的に、フェリシアはより目立つことになった。



そして、舞踏会は無事に終わり、ギルセルドも少し安心した。

これが終われば、セシルに会うことが出来る。

そんな風に思っていた、夜。


「ギル、起きてるだろ?」

「どうかした?」

扉を開けたギルセルドはそこにエリアルドの姿を見つけた。


「ギル、黒髪の(ウィッグ)があっただろう。あれを貸してくれ」

「え?なに、兄上が変装してお忍び?」

「黒騎士とブロンテ邸を警護する。アイリーンから、フェリシアに危険があると手紙をもらった、思わぬ所に味方がいた」

「それで……自ら?」

「……そうだ」

ギルセルドは決意の固そうなエリアルドに、黒髪の鬘を渡して

「使って。それから、くれぐれも気をつけて。俺は万が一にも王位には就きたくない」

そう言うと、エリアルドは苦笑した。

「そのかわり、しっかりと働け」

「努力はする」


「ありがたく使わせてもらう」

「それはやるよ」


颯爽と歩いていく姿を見送る。

エリアルドが王太子らしくない行動を取り始めた事に感心が向いた。自分で行かないと気がすまないほど彼女の事が気になるのだろう。

ギルセルドにはその、気持ちがよくわかった。

セシルがもしも、誰かに狙われていると知れば同じように立場も省みずに側で護ろうとするだろうから。



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