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久々の帰宅

 西暦三二五四年。地球は三つの勢力に区切られて存在していた。ザライン連合国、ゲイル連合国、オラクル連合国である。

 均衡を保っていた三勢力は、不可侵で成り立ってきた。だが、より己らが優位な立場に立とうとする人間の欲望から、第四次世界大戦の序章が幕を開けた。


 そんな中……各国で「ABYSS」の開発が進められていった。


 「ABYSS」とは大型の人型兵器であり、コックピットにクルーが乗ることで、多彩な戦況を作り出すことが出来る、最強の鋼だった。


 中立を保っていたゲイル連合にも、他勢力が押し入ってきたことで、本格的にゲイルも戦禍に巻き込まれ、開発の遅れていた「ABYSS」をもとに、戦いを挑むようになる。

 旗艦「ホワイトクロス」に乗り、学院主席であったシーアは、ゲイル唯一の「ABYSS」、アライブに乗り、戦いに身を投じていた。


 そんな戦争も、シーアを中心とする若き勢力と、「自由」と「平和」を掲げて戦う「レンカ」の思想のもとに集まった仲間のおかげで、終幕を迎えることとなり、シーアは双子の弟、「セーラ」と共に、家に戻ってくることが出来た。




「ただいま」

「シーア!」

ゲイル地区ササカ市内にあるミツキ宅。シーアは、戦争を終えてすぐに、軍と決別して学院も転校。一般の中学に転入届を出してから、自宅に戻ってきた。レンカと共に、軍に身を置いたまま生きると言うセーラを説得し、シーアは父シズと母ミールと平和な暮らしを望んだ。その意見にレンカも賛同し、セーラもまた、軍から距離を置いた。

 もうひとり、ゲイルに戻ってきた者がいる。ナイトだ。ゲイルと敵対していたオラクルの軍人だった両親は、ゲイルには戻らず、停戦になった今も戻ることはないらしい。それでも、ナイトは今後の居場所をゲイルに戻すことを決断。シーアは、ナイトを自宅へと招いた。

「ただいま、母さん」

抱擁を受けるシーアは、久しぶりの温もりに安堵を覚えた。その様子を、玄関先からセーラとナイトが見守っている。

「そちらは……ナイトくんと、えっ?」

「こんにちは、おばさん」

「……」

セーラを見たミールは、目を疑うように青い光を放つ瞳を持った、我が子そっくりな姿の少年に、首を傾げる。その様子を見て、セーラは俯くことしか出来ない。

「母さん……セーラだよ?」

「セーラ……嘘よ、そんなはずはないわ」

「嘘じゃないよ。なんで? 僕の弟、でしょう?」

「……シーア。やっぱり僕は軍に……」

耐えかねて、セーラがそう口を開けたとき、シーアは母から離れてセーラの手を強く握った。

「逃げることない。セーラは僕の弟だよ」

「……シーア」

「死んだ」

「?」

セーラは母の呟きに振り返る。母親は、唇に手を当ててそう繰り返す。

「死んだと、聞いていたの。シーアが双子だというのは、事実。でも、弟は生まれてすぐに死んだって、お医者様が言ったのよ」

「……なぜ、そんな嘘を」

「シーアと僕は、生まれるべくして生まれた。でも、双子である必要性はなかったんです」

セーラは複雑そうな顔をして、言葉を紡ぐ。そして、一歩後ずさる。そのままにしていたら、消えてしまうのではないかと思うほど、陰の入ったセーラを、シーアは見逃さなかった。母を押し返して距離を置くと、セーラのもとへ駆け寄り、腕をしっかりとつかむ。そして、青い瞳をした自分と同じ顔をじっと見つめた。

「セーラが、これまで軍の秘密機構で育ってきたことは聞いたよ。でも、今はもう軍からは身を引いたんだ。戦争もない、ただの人間だよ!」

「そうだ、セーラ。シーアの言う通りだ」

ナイトが後を続ける。

「おばさん。シーアとセーラは、確かに双子なんだろう? 一緒に暮らすことは、ダメなのか? 何か、不具合があるのか? 俺も……此処で、お世話になりたかったんだけど、問題があるなら、俺はセーラとどこか安いアパート借りて、そこで生きるから」

それを聞いてシーアは目を見開いた。

「そんな! 一緒に暮らそうって、話し合ったじゃないか」

「でも、その話し合いの中におばさん達は居なかったんだから。迷惑なら、仕方ないだろう?」

シーアの母、ミールはフルフルと首を横に振った。そして、玄関から外に出て、セーラの顔をじっと見つめた。

「私にそっくりね。青い瞳は、お父さん譲りかしら」

「……ミールさん」

おどおどと、セーラは言葉を絞り出した。

「お母さん。そうでしょう? セーラ」

「! いいんですか? 僕も、家族に入れていただいて……」

「戸惑ってしまってごめんなさい、セーラ。我が子を捨てられるはず、ないわ。生きていてくれて、ありがとう」

そして、母親はセーラのことをぐっと抱き寄せた。胸に抱き寄せた我が子の感触にひたると、ミールは涙を浮かべた。

「ナイトくん。あなたも、大変だったのね。詳しいことは知らないけれども、ひとりでゲイルに帰ってきたのでしょう? 軍から、概ねのことは聞いているわ。お父さん方が、オラクルに留まっているということも」

「あ……はい」

ミールは、セーラを抱き寄せたまま、ナイトにも優しい視線を送った。

「みんな、この家で一緒に暮らしましょう? 学校は、クラリスから一般の中学に転入したのでしょう? 制服も買わなくちゃね」

ミールは、セーラの手を握ると、部屋の中へと招き入れた。歩き出し、そして室内に案内する。一軒家で、二階建て。

「夕食の準備をしましょう。シーア、セーラ、ナイトくん。手伝ってくれる?」

「うん」

「はい」

「もちろんです」

シーア、セーラ、ナイトが答えると、ミツキ家の扉は閉まった。


 その日、ミツキ家の灯りが消えることはなかった。




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