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グロアリスの思惑

薄暗く、年季の入った道具が並ぶ中で、ゆっくりと腰をかける。

「本当ですか?ケルベロスを一人でなんて」

驚きを隠しきれない表情は、まるで天変地異が起こったかのような、驚愕の表情だった。

「本当じゃ。わしが行ったときにはもう石しか残っておらんかったがな」

大きな机に置かれた剣晶石を撫でながら、あの少年を思い浮かべる。

「でもなぜオーバルトさんがヴェルティナに?」

「たまたま依頼の品を持って行ってたんじゃよ」

ケルベロスを一人で討伐など耳にしたのは何年ぶりだろうか。

「その者の実力は確かなのか、確かめる必要がありますね」

「では、一度ここに招待すればいいじゃろ」

武者震いのような興奮を目に浮かべながら、無言で頷いた。




俺は昨日の傷を癒すようにぐっすりとベットに入った。

癒えきらない傷を気にしながらも、剣を肩にかけた。

ダンジョンに向かうかを迷いながらも、宿を出た。

そう思い、役所へと足を向ける。

朝早いからか中には人気がなく、カウンターの女性が数名立っている。

「あのー、昨日怪我をしてここに来てた方ですよね?」

不意に後ろからかけられた言葉に体が飛び上がる。

「あ、昨日の手当てしてくれた?」

俺が座っていた椅子の後ろから回り込み、視界に頭を出したのは、昨日ケルベロスとの戦いのあと、ここで手当てをしてくれた女性だった。

「確かに僕は昨日ここに来ましたけど、どうかしたんですか」

僕の横に座ったその女性は、俺よりも年上のような落ち着いた雰囲気だった。

「昨日私が手当てをしたとき、ケルベロスを一人で倒したって聞いて」

真面目な顔でそう問いかけられる。

「確かにそうですけど。結構無茶しちゃって、迷惑かけましたよね」

昨日は体の傷を見たこの女性が無償で手当てをしてくれた。その時は疲れからボーッとしていたわけで、意識が薄かったのである。

「いや、結構怪我してたみたいですし、私の事は良いんです。それより、ケルベロス討伐時にオーバルトさんにあったんですか」

オーバルトという名前を一瞬忘れかけていたが、すぐに老人の顔を思い出す。

「会いましたけど」

「実は、ケルベロス討伐の件で話がしたいと、グロアリス本城への招待状が届いてるんです」

あのオーバルトという鍛冶師がグロアリスという言葉を口にしていた。

「グロアリスって?」

「グロアリスって言ったら有名な先進国ですよ。このグラムで一番大きい都市ですし」

そんなに偉い方々が俺に一体なんの用があるというのだろうか。

「そしてこれが今朝届いていたお手紙です」

右手に封のきられた手紙が握られている。

「でも差出人はオーバルトさんではないようですが」

パッとしない声色を響かせる。




「えっ!・・・アリシア女王ですって!?」

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