対ケルベロス
「そこの坊主、早く逃げろ。死んでも知らないぞ」
そう言いながらヒゲを生やした中年くらいの男が門の方へと走っていく。
そんな言葉を聞き流し、剣を抜いた。
自信があったわけではない、ただ少し興味があった。自分の力はいくらほどなのか。
今日の戦闘でファクトとの戦闘のコツは掴んだつもりだ。
大きな雄叫びをあげているケルベロスを睨み、走った。
自分の身長の3倍以上の大きさのケルベロスは、先ほどと同じように大きく腕を振り上げた。
全速力でダッシュし、腕を避ける。ダンジョン内にいた犬のファクトは、物凄いスピードで噛み付いてきた。それに比べれば避けれないスピードではない。
そのまま後ろ足を切りつける。バランスを崩したケルベロスはよろめく。
続いて反対の足にも剣をあてる。傷を負った足に力を入れ、3つの頭をこっちに向ける。
すると一気に3本の首を伸ばし、俺に噛みつこうとすると、俺は足を取られて見事に頭突きを食らった。
追い打ちをかけるように腕を振る。強烈なパンチを食らって遠くへと転がった。
「くっそ...」
このままではいけないという緊張が、俺の足に力を入れた。剣を立てて立ち上がると、再び走り出すと、ケルベロスは大きく口を開けて頭を俺の方へと向かってくる。
それまま俺は剣を振り上げ、大きくケルベロスの頭に叩き込んだ。すると、「グオォォ」と大きな声をあげている。
その勢いで前足も切りつけると大きく体をふらつかせ、そのまま倒れこんだ。
間髪入れずに倒れたケルベロスの胸に剣を突き刺す。
勢いよく剣を引き抜くと、ケルベロスは動きを失い、光とともに消え去った。
それと同時に巨大な剣晶石が現れた。赤く綺麗な色をした剣晶石は、大きな木の幹ほどの大きさで、一人ではやっと持てるほどだ。
ケルベロスが消えた後もしばらくその場で大きく息を切らしていた。
息を整え、周りを見渡すと、人の姿は全く見えなかった。
地面にはケルベロスの足跡が残り、ダンジョンの入り口は少し崩れていた。
すると、一人の老けた男がこちらに歩いてくるのが見えた。
「そこの若いの、まさかケルベロスはあんたがやったのか?」
ややかすれたような声で俺にそう問いかける老人は、この場には少し似合わないような、作業服のような格好をしている。
『そうだよ。って、おじさん誰?』
「わしか、わしはグロアリスで鍛冶屋をしているオーバルトというもんじゃ」
鍛冶屋という言葉はゲームの中でしか聞いたことがなかったが、この世界だと結構当たり前に使われる。
『鍛冶屋か、じゃあこの剣晶石あげるよ。今の俺じゃ重くて運べないから』
戦闘終わった後、急に足に痛みが走ったと思うと、傷だらけだった。
老人に対して手を振り挨拶をすませると、俺は門を出た。
その後、剣晶石の換金をしてもらった。
足の傷を見た役員の方が軽い手当をしてくれた。綺麗な女性だったのだが、疲れのあまり意識することなどなかった。
以外と時間が経過していたみたいで、既に日が沈み始めている。
役所のベンチに座っているとなんだかお腹が唸りを上げていたので、ご飯を求めて腰を上げた。