始めての出会い
「す、すみません!」
そう言って頭をさげる女の子に戸惑いながら、大丈夫だよと声をかける。
『こんなところでどうしたの?』
世界が変わってもコミュ障が直ることはなかったようだ。
「実は、最近田舎から旅に出てきたばっかりで、それで...」
そう不安そうに語る彼女はピンク色の髪をした女の子だった。
「ここに来る途中悪そうな男の人たちに絡まれちゃって、お金とか取られちゃって」
きっといつものようにゲームをしている自分なら構わずどこかへ行ってしまうのだが、なぜだかかまってしまう自分がいた。
『じゃあいっしょに来るか?少し俺のように付き合ってもらうことになるけど』
我ながらくさいセリフを吐いていると思いつつ、彼女の様子を伺う。すると、女の子は嬉しそうに微笑んだ。
「いいんですか!?」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はアリシアと言います」
『俺はレン。よろしくな』
何か羽織る物が欲しいと言ったところ、最初訪れた広い道にでていた店のなかから探してくれるという。
「こんなのいいんじゃないですか?」
黒っぽいコートのようなマント状のものを持ち上げながらアリシアが話す。
『そうだな、じゃあそれにするよ』
いくらかも知れないが、とりあえず金が入った袋を取り出す。
「5Gだよ」
袋に入ったコインを何枚だせばいいのかわからずに困っていると、アリシアが状況を察したらしく、「5枚です」と教えてくれた。
言われた通りに5枚のコインを店のおばちゃんに渡すと、だんだん日が暮れ始めているとこに気づいた。
近くの宿屋を探すことにしたのだが、流石に一緒に泊まるのは気がひける。そんなことを考えている俺を尻目に、アリシアはここまで来て遠慮している。
中央の道から少し離れたところに宿屋を見つけた俺たちは、早速部屋を借りることにした。
「2部屋ないか?」
『そんなの悪いです。私は一緒で構いませんよ』
気がひけたが、正直金に余裕がないことを考え一緒にした。
部屋に入ると、そこにはベッドと小さなテーブルが置いてあるだけのせまい部屋だった。
気づけばすでに外は暗くなっていた。今日はい ろんなことがありすぎて疲れ果てた1日を終えて、一気に睡魔に襲われる。
アリシアも疲れたのかベッドの上で既に眠ってしまっている。
そっと布団をかけて、俺は机の椅子で寝ることにした。