始まりの町
男との戦いのあと、20分近く方角も分からないままオネイロスの言う方向に歩き続けた。
すると整備されていない長い道の先に、建物が見え始めた。
疲労が溜まりに溜まった足を弾ませながら、目の前に迫る町へと向かう。
道の先には大きな門が立っている。周りは建物より少し低い塀で囲まれ、建物が頭を覗かせている。
昼間だからだろうか、門は開けられ、人々が自由に行き来している。
Tシャツにハーフパンツという服装のせいか、周りから少なからず視線を感じるが、気にすることなく門をくぐった。
門をくぐると、広い道の脇には店を出したりしている人たちも多かった。
まるでゲームのような町が広がっていることに感動しながら行き先もなく足を進める。
行き交う人たちは皆、大小を問わない様々な剣を下げ、それぞれのこだわりが見えたりする。
中にはきらびやかな鞘をぶら下げ、周りから視線を集めている者もいた。
少し歩いたところでオネイロスが唐突に口を開いた。
「僕が案内できるのはここまでだよ。これから先、どうするかは君の自由だが、精一杯生き抜いてくれよ」
突然の言葉に戸惑うなか、空に姿を消していったオネイロスを追いかけるが追いつくはずもなく、町を探索することにした。
幸い男から奪った袋には少なくはない量の金が入っていたため、今日のうちは大丈夫だと思われた。
だが、この世界のお金の稼ぎ方が分からないため油断はしていられない。
町行く人のなかには鎧やマントを身につけている人たちも多いため、身近に戦闘が行われていることが想像される。
流石にこの服装に問題を感じた俺は、羽織るものを求めて町の中心に広がる道を外れて、入り組んだ細い路地に入った。
酒屋のような店がいくつか看板を出している。
どこに行けばいいのかわからずにあたりを見ながら歩いていると、気づけば人の姿はほとんど見えなくなっていた。
細い路地に入ったことを後悔しながら、路地を抜けようと元来た道をたどる。
薄暗い道の横に、明るい道が見えた瞬間に反対から何かがぶつかる感触が伝わる。
「あ、あの、すいません!」
横には困った顔をした女の子がいた。