お城生活1日目
幅の広い大きなベッドで目を覚ました俺の視界はだんだんと鮮明になっていく。
高い天井の手前に顔を出したのは、大人びた顔立ちの銀色の髪を垂らした女性だった。
「おはようございます」
そう言った彼女は黒と白のメイド服に身を包んでいた。
短めのスカートから伸びる脚はすらりと長く、女性にしては高身長である。
髪にはカチューシャは見当たらない。
メイド服にしては地味な飾らない服装だった。
「この城のメイド、カレンと言います。よろしくお願いします」
状況が飲み込めずに目をパチパチとしていると、すぐに回答が帰ってきた。
「早く着替えて下さい。仕事は山ほどあるんですよ」
手元には黒い服が一着かかっていた。
服を着替えると、カレンの見よう見まねで雑用をこなしていった。
部屋の掃除から服の洗濯など、城全体にたまる大量の仕事を消化していく。
カレンの手際とは逆に、おまけ程度の作業量の俺は必死に手を動かしているのだが、空回りに終わってしまっている。
手を休めることなく作業を続けていたカレンは、俺を引っ張りながらまた広い城の中を移動し始める。
連れてこられた場所はどうやら脱衣所のようだ。
「そこに置いてあるものに着替えてください」
言われるがままに手に取ると、一枚の水着のような物だった。見た目は少し大きなパンツである。
ドアを開けると、広い大浴場のような洋風のお風呂が広がっている。
そして目線の真ん中には大きなブラシを2つ持ったカレンの姿がある。
カレンはまるでビキニのような必要最低限の布を着ていた。
それなりの凹凸があるその体を隠す様子もなく作業を始めるカレンだが、健全な男の子ゆえに胸元に目がいかないわけがないのだ。
ブラシをこするたびに前後に揺れている。
「鼻のしたが伸びていますよ」
その指摘にドキッとしたが、怒っている様子はなかった。
綺麗な銀色の髪の毛を小さく結び、少しばかり疲労を見せながら吐息を吐く姿は、色っぽく見えてしまうものだ。
時間をかけて隅から隅まで擦りまくったお風呂はピカピカとひかり、浴槽にお湯を張っていく。
「そろそろ買い出しに行かなければいけません」
既にヘトヘトなのだが、俺に拒否権はないことはわかっている。
「敬語はなんだか堅苦しいんだよな。タメ口でもいいのに」
「私たちはそんなに仲は良くありません」
冷たい反応に肩を落としつつも、必死にカレンの後を追った。