グロアリス到着
遠くから高いベルの音が聞こえてくる。段々と戻ってくる意識の中に大きくなる光の中に、音を止めるために手を伸ばした。
手探りで辺りを撫でても、硬い机に手が届かない。
もうちょっとと思い切り手を伸ばした。手にはカチっとおささるボタンの感触ではなく、なにやら得体の知れない柔らかな感触があった。
数秒後、ベルが止まるのと同時に頬が何かに打たれる感覚に呼び起こされ、馬車の中の俺は意識を現実に引き戻した。
状況を把握できずに飛び起きた俺の前には、胸元を抱えながら赤い顔をしているクレアさんがこっちを睨んでいる、気がした。
「おはようございます・・・」
俺はなにやら涙目のクレアさんに控えめの挨拶をしたところ、泣き声混じりの声が返ってきた。
状況がイマイチ読めないのでそっとしておくことにした。
窓に目を向けると日が明け、登りかけの太陽が外に見えている。昨日の夜に見えていた木々は薄れ、辺りが明るくなっている。
「もうそろそろで着きますよ」
赤くなっていた顔はすっかり戻り、冷静な姿に戻っていた。
道を進むにつれて岩肌が見え始め、しばらくすると背の低い草がちらほら見える程度になっている。
ゴツゴツとした大きな石が敷き詰められていた道は小石や砂利に変化し、昨日は登っていた山をくだり始めている。
見晴らしがいい道の向こう側には視界の端まで広がっているとても大きな門が見えた。
石で作られた壁によって囲まれ、がっちりとした門が組まれている。
門の前で止まった馬車からクレアさんが降り、門番のような男話をしている。
戻ってきたきクレアさんが馬車に乗り込むと、大きな門が開いた。
門の奥には道が伸び、その奥には大きな城がそびえ立っている。
道の真ん中を進み、城の周りを囲んでいる城壁の元へと進む。一つ一つ、クレアさんが説明し中へと進んでいった。
城の扉の前で馬車から降り、クレアさんに案内されながら城の中へと入って行く。
時間を指定されているのだろうか、女性の役員の案内で女王へと会うようだ。
入り組んだ通路の奥の扉を女性が開くと、広く天井の高い部屋が見える。
緊張感がクレアさんの背中から感じられる。
中に入ると、大きな椅子にすわる小さな人影があった。
「初めまして、女王のアリシアです」
そう声をかけた女の子を俺は知っていた。