グロアリスへの遠征計画
アリシア。その言葉に俺は少しばかりの驚きを得ていた。
「女王ってどういうことですか」
「アリシア女王はグロアリス王国の女王様ですよ。アリシア女王にはお兄様がいるそうなのですが、剣士の道を歩むべく、政権を妹のアリシア様に譲られたのです。それが、どうしたんですか」
「いや、知り合いにアリシアって奴がいたので」
なるほど、というような顔を浮かばせ、その女性は思いがけない提案を俺に持ちかける。
「グロアリスに行くのは強制ではないんですけど、ここからグロアリスまで馬車も出ますし」
「実はグロアリスとか全然わからなくて。田舎から出てきたばっかりなので」
そんなわかりやすい嘘をとっさに口にしてしまったが、この世界の知識が薄い自分に自信がなかったのは事実だ。
「じゃあ私がついていきますよ。案内役が必要だと思うますし、新しい服も新調した方がいいと思うので付き合いますよ」
そう言って笑う彼女だが、一体なにを言ってるんだと耳を疑った。
パチパチと瞬きをしていると、なだめるように女性が話す。
「ケルベロスを倒したってことですから、信用してますよ」
そんなこと言われてもなぁ。
「そんなこと言われると断る理由がないですからね」
「決まりですね。自己紹介が遅れましたけど、私はとクレア言います」
「レンです。迷惑かけることも多いと思いますけどお願いします」
「構わないですよ。出発は明日のお昼でいいですか」
この会話をしている間にも時間が流れ、お昼を過ぎている。
「わかりました。ここに来ればいいですか」
「はい。ここに来てもらえれば馬車を用意しておくので」
話がまとまったところで、すでに固まりつつあった腰を持ち上げた。
小さくクレアさんに挨拶をした後、唸りを上げているお腹をなだめるべくご飯を求めて外に出た。