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誕生編 第一話
あの恥ずかしかった記者会見から二時間が経過していた。私は今、タクシーの中、後部座席で一人悶々とあの記者会見を思い出していた。
「何なの……もう」
ふと、口をついて出た。
「はい、何ですか? お客さん。何か?」
「何でもないです。なるべく早く行って下さい」
つい、一人ごとが出てしまった。運転手さんに聞かれちゃった。ああ、恥ずかしい。
二時間前。
空港第二ビルの別室。さまざまな記者達に囲まれて会見が始まった。
「青野さん、今回の帰国は、やはり、ワールドワン出場のためですか?」
「エキシビジョンだけの出場ですよね?」
「女の子なんだから試合って訳にはいかないですよね?」
「影美さん、こっち向いて笑って下さい」
矢継ぎ早に、終わらない質問に四苦八苦していた。
「あー、いっぺんに喋らないで! 指名しますので、質問のある方は挙手して下さい!」
雑踏とした記者会見も遅れていた、司会の人が来て対応してくれたことで、ようやく落ち着きを取り戻していた。
今日、私は、イスタンブールから二年ぶりに帰国して、なぜかだか記者会見を受けてしまう身に陥っているのだ。