8話 邂逅
なんと、お蔭様で評価が100ポイントを超えました。
皆様のお蔭です、より一層楽しんでいただけるよう頑張ります。
なので更新が遅れたことは許してつかーさい!何でも(ry)
俺が自分のステータスを言うと他の地球勢の顔が少し強張る。
まあ普通、魔術が使えないって言われたら自分が魔術が使えると喜んでいたことに気まずくなるのは仕方ないことではあるが。
「そんな顔するなよ皆、使えないのは二極四元魔術だけっぽいし。まあ、なんだ小説とかで良くある無属性ってやつっぽいぞ」
俺がそう言って励ますと皆ホッとした表情になり、まあこれで一安心かと思えたがアルールが爆弾を落とす。
「威神様、あんまり気になさらないでください。私も光属性しか使えないので魔術師としては落第ですから」
地球勢はいきなりのカミングアウトに驚愕の表情をする。
「えーっとアルール?それってどういうこと?一つの属性が使えるなら魔術師じゃないの?」
涼子は魔術師として落第という部分に疑問に思ったようだ。もっともな疑問であるが。
「はい、一応、魔術師ではありますよ?でも一つの属性しか使えない魔術師は往往にしてこう呼ばれるのです。《馬鹿の一つ覚え》とね。こと魔術師として食いぶちを稼ぐのでしたら最低でも二つは属性を使えたほうが良いのです」
「で、でもなんで二つ以上なの?」
「そうですね、例えるならば冒険者としてパーティーを組んだとしましょう、自分は魔術師として。そしてダンジョンにいきます」
「ダンジョン!?」
「うん、勇士ちょっと黙ってような……」
俺はため息をつきながら、ゆっくりと背後に近づき、勇士にチョークスリーパーをかける。どうして一々ファンタジー用語が入ると中断するのか……
ちなみに遊びでやるようなちゃちな絞め方はしていないが、反省を促すため緩めだ。
生かさず殺さずなせいで勇士は顔が真っ青だが俺は知らん。
「アルールすまん。続けてくれ、こいつはこうして黙らせておくから」
首を絞められた勇士を見せるとアルールは少し驚いたが、何事もなかったかのように再開する。
……何故かカイアがチラチラこちらを見てきているが。それも何故か見ていけない物を見たかのように手で顔を隠している。
当然、指の間からガン見だが……。
「えーと、その際に敵と対峙したとしましょう。そしてその敵が自分の使えるたった一つの属性に耐性があったとしましょう。金井様ならどうします?」
「えーっとパーティーで来てるんだから、他のメンバーに任せればいいんじゃない?」
「そうですね。パーティーで来てるのですから自分の攻撃が効かない相手は味方に任せればいいのです。しかしそのような敵が大量にでてきたなら、それはもう任せるのではなくただ守って貰うだけ。言い方は悪いですが置物なんですよ。そして劣勢を強いられた場合、まず切られるのはその人でしょうね」
「そんな!パーティーを組んでる仲間なのに、そんなことになるの……?」
「逆に聞きます。何故、人はパーティーを組むのか分かりますか?」
「それは……お互いの欠点を補うためと自分の長所を活かすためじゃないの?」
「正解です。ダンジョンに潜るのはそれ自体が危険ですからね。だからです、力を頼りにするための仲間なのに力にならない。そんな仲間ははっきりいっていらないのです。そしてそれが一つの属性しか使えない魔術師なのです」
「じゃあ一つしか属性を使えない人はどうするの?」
「魔術はサブとし武器をメインとして前衛に就くことが多いですね」
辛辣とも言える言葉に当事者でもないのに打ちひしがれる涼子。
というか俺とか言っているアルールが当て嵌まるんだぞ。何て言うか申し訳なくなってくる。
「涼子、なんでお前がそんな顔するんだよ。大丈夫だ俺には威神としての技がある」
「別に御影のことなんてどうでも言いんだけど、そんな世知辛い現実にちょっと思ったことがあるだけよ」
おい、心配して損した。なにが御影なんてだ親しき仲にも礼儀ありだぞ、ったく。
そして不意に勇士を見ると泡を吹いて白目を剥いていた。忘れてた。
手を離しその際に気付のツボを押してやると、倒れながら目を覚ました勇士はヘブッと情けない声をだして床にキスをしたのだった。
――――――
暗い話はこれまでにして向こうの世界について教えてくませんかとアルールは言うので皆、気持ちを切り替えて話を始める。
そうしていると大分時間が過ぎ、窓の外を見ると夕暮れなずんできていた。
しかし部屋の使用許可を取りに行った騎士は一向に姿を現さない。
これは何か有ったかと思っていると、噂をすればなんとやらで、この部屋に近づく気配を感じる。
廊下を歩く人の気配は結構あったのだが、これ程明確にこちらに向かって来る気配は初めてだ。それに聞きにいった騎士と同じ気配なので間違いないだろう。
そして天井裏や隣の部屋にいるこちらを伺っている密偵の気配もバリバリ感じている。
しかし向こうの身内であるはずのアルールは何も言わない。気付いていないのかもしれないが、流石に有り得ないので気付いた上で何も言わないのだろう。
なので俺も何も言わない。しかし、なにかしてくるようだったら容赦はしないがな。
案の定、扉の前で気配は止まる。そうすると勇士や涼子も気付いたのであろう扉を見る。
師範代としてはもう少し早く気付いて欲しかったが気付いただけ及第点だ。
ちなみに水鳥はもう少し早く気付いていたが直ぐに普通通りにしていた。
流石に高いレベルだけあって気配を気取るのは早かった。
そして扉がノックされる。
勝手の分からない地球勢や勝手の出来ないメイドのカイアに代わり代表としてアルールが答える。
「はい、開けて大丈夫ですよ」
「失礼いたします」そう言いながら扉が開けられると、予想通り先程許可を取りに行った騎士の姿があった。
「皆様、大変お待たせいたしました。お部屋の許可が下りました。勇者様はこのままこの部屋をお使いいただき、他の皆様は別の部屋を用意させて頂きましたのでそちらをお使いください。そしてこの後の御予定なのですがもうすぐ夕食時なのでお食事を持ってこさせて頂きます。そしてお食事が終わりましたら、今日はこのままお休みなさってください」
「あら?予定ではこのあと王様との謁見のあとに晩餐会だったはずでしたよね?」
説明の途中からアルールが不思議そうにしていたが本来の予定と違っていたからからか。
アルールの指摘にうろたえる騎士。
「私にも言えないことなんですか?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
チラッと俺らのほうを見る騎士。
俺らには言えない内容なのだろう。
「大丈夫です、お話なさい。責任は私がとります」
普段とは違う高圧な口調に騎士が折れた。
気にしていなかったがこういう口調もスラッと出てくるのを見るとアルール自身の身分は高そうだ。
貴族位以上にいるのは確定だろう。
「そ、それが魔族連合から魔王様とその御一行が訪問にいらしてまして……。それで王様はそちらへご挨拶等に忙しく、仕方なく明日に延期ということになったそうです……」
「……そうですか。それでは仕方ありませんね、すみませんお話いただきありがとうございますね」
「い、いえ聖女様に感謝されるようなことではございません!元はといえば私が言い渋ったことが原因ですので誠に恐縮です!」
口調が戻ったアルールに感謝され微笑まれた騎士は顔を赤くしながら早口にまくし立ている。
聖女の人気は凄まじいらしいことが伺える。
「では、お夕食は皆でこちらで頂くといたしましょう。お給仕の方に持ってきてもらえるようお願いできますか?」
「了解いたしましました!直ぐに持ってくるよう言ってきます!」
「焦らなくても平気ですよ。ではお願いします」
「はい!」と言う良い掛け声とともにに飛んでいってしまった。
騎士を手玉に取るアルールに俺は立場と力の使い方の上手さに感心したのだった。
―――――
日が沈み、暗くなってきたぐらいにメイド達が夕食を運んできた。
夕食はコース料理らしい。なので作法やらなんやら難しいことをしなければならないのかと辟易しかけたが、アルールがここにはそんなものを気にする人はいないので気楽に食べてくださいと言ったので遠慮なく頂いた。
俺と勇士はがっつり、涼子は上手くはないが丁寧だったが、水鳥と榊、アルールは上品に食べていた。
決して威神の人間が粗野という訳ではない、ホンドダヨ。
山篭もりの修行の時に精々丸焼きをするぐらいだ。
冒険者の人間も野営じゃそれぐらいするだろうしフツウフツウ。
ワイワイとまではいかないがそれなりに楽しんで夕食を終えると皆、疲れからか、満腹からか口数が少なくなる。
そんな様子の俺達を見兼ねたアルールはメイドに直ぐに俺達を部屋に案内するよう命令する。
俺達は勇士にお休みを言うと部屋をでて各々案内してくれるメイドについていく。
嗅階段に差し掛かるとアルールはではまた明日と一人で上の階へ行き、俺達は階段を下った。
俺が使う部屋は勇士の部屋より一階下の階にあり勇士の部屋よりもグレードも落ちる。豪華は豪華なんだか向こうよりも質素に感じる。つまり俺達は勇士のオマケと言うことなんだろう。
まあこの部屋も豪華なので、魔族の人間に良い部屋を回した可能性も否定できないので気にしないことにする。
俺は部屋に入ると直ぐにメイドに質問する。
「風呂に入りたいんだここにはあるのか?」
高校の帰り道にこっちに拉致られたので汗が気になる。しかしメイドは申し訳なさそうに、
「すみません、この部屋にはお風呂はごさいません」
「そうか汗が気になるがないなら仕方ない。このまま寝るとするよ。無理を言ってすまんな」
「い、いえ。あの……お湯とタオルなら直ぐにに用意できるのでお持ちいたしましょうか?」
「そうかなら頼む。よろしくな」
「はい!すぐにお持ちしますね!」
そう言い部屋をでていくと、数分でメイドは戻ってきた。
俺はタオルを受け取ろうとするが何故かメイドは離そうとしない。
「えっと、タオルをこっちに渡してくれないか?」
「それはできません!お客様に一人でお体をお拭きさせることはメイドとしての矜恃が許しません。ですので服を脱いでください!」
「恥ずかしいんだが本当に脱がないとだめか?」
「是非、お願いします!」
「じゃ、じゃあ背中だけ頼む」
「分かりましたではこっちに背を向けてくださいね」
俺は頷きながら服を脱ぎメイドに背中を向ける。
正直凄く恥ずかしい。
メイドはカイアとは違い美しいよりは可愛らしい見た目をしていたのもあって何かいけないお店のようだ。ちなみに行ったことない、未成年だからと念を押す。
メイドは背中を拭き始めるとすぐ感心したように「凄く逞しいんですね。お背中硬いです」とか「広い背中って憧れます」とか言っているが、俺は無心になって受ける。
そして背中が終わるとタオルを受け取り、メイドを部屋の外に出し体を拭く。
大変危なかった。何がとは言わないが。
拭き終わりメイドを呼ぶとタオルと桶を渡す。テキパキと片付け終えたメイドが「では、失礼いたします」と言って出ていこうとする。
「で、あんたさっきのメイドじゃないな。誰だあんた」
俺は殺気をぶつけながらメイドを呼び止める。
背中を拭いていたメイドとは瓜二つだが気配が違う。幻惑の魔術の気配もするしこいつは真っ黒だ。
しかしこいつは嬉しそうにニンマリと笑い。
「ばれてしまっては仕方ない」
そう言うと姿が揺らぐ。
そして正体を現したそこには先程までのメイドではなく、長く艶やかな黒髪と紅い瞳が印象的な美しい女性が立っていた。
「妾はベリエライア魔族連合国の王、魔王エナリア=スーサイドだ。よろしく頼む勇者殿」
そう言って鷹揚に頷く彼女。
決まったのだろうが、一つ間違っている。俺は勇者じゃないぞ!
お読みいただきありがとうございます。
可愛らしいメイドは一般通過メイドですので物語には絡みません。
ですがいきなり乱入、勘違いをした魔王様(笑)は重要キャラなので絡みまくります。
ネタバレはここまでにして、ではまた次回で。