5話 サプライズ
お待たせしました。
最近忙しいかったり、急性胃腸炎になったりで大変だった作者です。
では、短いですがどうぞ
P.S. 7/1 描写の追加
アルールの歓迎の後、タンニーンは王都の前には降りず、そのまま外壁を越え王都の上を低空で飛ぶ。
そして眼下に栄える王都の様々な所から喚声が聞こえてくる。
「タンニーン様がお越しになったぞ!!」
「見てみろ、背中には聖女様が乗っているぞ!しかし後ろにいるのは誰なんだ?」
「ありがたや~」
「聖女様踏んで!」
「タンニーン様ぺろぺろしてください!」
・・・・最後の方はなんか変な叫びだったが。
何だよ、聖女様踏んではまぁ分かる。
だが何故タンニーンにぺろぺろされたいんだ・・・・
あれか本当に本当の特殊性癖なのか?
そんな混沌としたざわめきの中、タンニーンは広場の上で空中で留まる。
何事か?と徐々に喧騒は薄れ静かになっていく。
そして完全に静寂が訪れると、アルール待っていたかのようにこう宣言した。
「皆様、私達は遂に勇者様の召喚に成功しました!後ろのお方達がそう・・・・私達の勇者様方なのです!もう魔獣に怯える心配はありません!そして勇者様達に盛大な歓迎を!」
魔術によって拡声された声は広場を超え、王都各地に届けられる。
言い終えて数瞬、静寂が王都全体を支配する。
しかし、すぐ事態を理解した国民達は、
「「「うおおぉぉぉおおお!!!」」」
先程までの喚声すら生温い、大地をも揺るがす程の裂帛した喚声が上がるのだった。
――――――
言い切ったアルールはそのままタンニーンに座り、タンニーンは静止をやめ、喚声鳴りやまない内に再び王都の上を飛行する。
そしてアルールはこちらを振り返ると、
「ちょっとしたお披露目程度にしようと思ったのですが、つい興が乗ってしまいました」
やり遂げた感満点の良い笑顔でそう言う。
「いきなりなのでびっくりしました・・・・最初の喚声すらびっくりなのに、最後の喚声なんか心臓が止まるかと思いました」
「でも、なんかあんなに喜んで貰えるとなんかアタシ達まで嬉しくなるわね」
「フフッ、そうですか。サプライズをしたかいがありました」
「でも~私達まだな~んにも~してないんですけどね~」
「そうだね、俺達はまだ何も出来ていないし何も出来ない。だからこそ、あの声援に応えるために頑張らないといけないな!」
「ああ、そうだな」
そう各々、決意を新たにするとふいに涼子が疑問を上げる。
「そう言えば気になってたんだけど、あの塔からアタシ達はタンニーンに乗ってきたじゃん。でも先に出てったローブの人達はどうやって帰ってくるの?」
「宮廷魔術師の方達ですね?彼等は各々得意な魔術でこちらに向かっているはずです。あそこは聖域と言って魔力が飽和する土地で大規模魔術の行使に重要な場所なのですが、人の手のほぼ入らない自然でなければならないため、王都から離れた所にあるんです。なので馬車ですと半日はかかります。ですが彼等なら後2~3刻ぐらいで帰って来ると思いますよ?優秀な魔術師達ですし」
誇らしげに答えるアルール。
「え?そんなすごい人達でもそんなにかかるの?やっぱタンニーンってすごいのね!」
『我にとってはこの程度些細な距離、威張るほどのことではないがのぅ』
そう言うタンニーンだが少し声?が弾んでいるのはきっと気のせいではないだろう。
そしてアルールは「せっかく王都の上を飛んでいるので、少し王都についてご説明しますね」と王都の区画について説明を始める。
「先程の広場がある外壁近くの南側の区画を生活街と言い、主に平民や職人の人達の家があります。隣の西区画はギルド街と言い様々な職業の寄り合い施設があります。北の区画は商業街と言い商店が並んでいます。しかしここは武具や防具、回復アイテムを売るお店が多く、兵士方や冒険者方が・・・・
「ギルドって単語がでてきてたからもしやと思ってたけど、冒険者ってあの冒険者!?ラノベとかでよくある、魔獣を倒したり、薬草の採取、街のお手伝いで報酬とポイントを稼いでより高ランクの依頼を挑もうとするあの!?」」
冒険者という言葉にすぐさま食いつく勇士。
イケメンリア充な勇士だがこうみえてラノベ、ゲーム好きの隠れオタクなのである。
「え、ええ・・・・またしても謎の単語ラノベがでてきましたが、冒険者は剣様がおっしゃった物で相違ありません 。よくご存知ですね・・・・」
目をキラキラさせている勇士に若干引き気味のアルール。
「また、始まった勇士の子供返り。こうなったのも全てあんたのせいだからね御影!」
そうなのだ、俺がラノベやゲームを貸してやっていたらこうなった。
俺が仕込んだと言っても過言ではない。
「ははは!すまん、すまん涼子。あー笑ったあの勇士はいつ見ても笑える」
「でも、いつもはカッコイイ勇士さんのこういう無邪気な所も何て言うか良いと思います・・・・」
「ギャップ萌え~?って言うやつかしらね~かわいいのよね~」
・・・・うん。恋は盲目と言うが、爆発しろ。
「っは!?ごめん、アルールさん脱線しちゃって」
正気に戻った勇士がアルールにあやまる。
「いえ、大丈夫ですよ。気を取り直して商業街は兵士方や冒険者方向けの商店が並んでいるのはお話しましたよね?逆に人々が生活に必要な食材などは屋台や露店、市場として先程の広場で買えます。東区画は歓楽街でお食事所などがあります。次に中層は貴族の方達がお住みになられる屋敷街。そして最後が私達が向かっているこの王都の中心王城です」
「え?王城って王様がいる所でしょ?アタシ達が行っても大丈夫なの?」
根っからの小市民の涼子が俺達の言葉を代弁し、地球組が頭をウンウンと縦に振る。
「大丈夫も何も皆様方は勇者様なのですよ?王様に会っていただかないと困ります」
最初に言って欲しかったとグチを零す涼子。
すでに緊張しているのだろう若干、顔色の悪い水鳥。
逆に王様に会えるテンプレだ!とまた、子供に返っている勇士。
王城ってどんなところなのかしら~と平常運転の榊。
まあ何とかなるだろうと楽観している俺。
そんな反応に流石に説明しておくべきだったと反省しているアルール。
そんなこんなでゆっくり飛行していたタンニーンは王城に辿り着くと庭園らしき場所に降り立つのだった。
話は進んでいない。
ちゃんと纏められる構成力が欲しい。
今後の流れはステータス確認、謁見、その後に定番の戦闘訓練にて初戦闘になります。
訓練なので余り激しくはないですが、すぐその後に大きな戦闘があるのでお楽しみにしていてください。