第56話
今回は、かなり長い文章になりました
第56話
事件の次の日、僕は病院の起床時間である6時に目が覚めた
結構早い時間に起床するが僕はいつもこれぐらいに起きているので普通に起きることができた
しかし、左腕にギブスがはめられているため少し起きづらかった
少しして看護婦さんがやってきた
やってきた看護婦さんはだれが見ても美人と答えるだろう容姿をしていた
「今日から退院までの間、文弥くんの担当になった水瀬ですよろしくね」
水瀬と名乗った看護婦さんはにっこりとほほ笑みながらそう言った
「あ、はい、よろしくおねがいします」
僕はその笑顔に少しドキッとしてしまった
しかし、それと同時に一つの疑問が浮かぶ
「あの今、退院までって言いました?」
「ええ、この病院は、一人の患者さんに一人の看護婦がつくのよ。その方が患者さんとのコミュニケーションもとりやすいし患者さんもコロコロと担当が変わらないから余計な気を遣わなくて済むのよ。昨日は突然の入院だったから担当とかは特に決まってなかったけど今日の朝に私が担当に決まったのよ」
「そうなんですか、でもそれって夜勤のときとか大変なんじゃないですか」
「そうね大変だけど、ちゃんと睡眠を取る場所とかもあるし慣れれば平気よ」
「それに文弥君のような可愛い子の担当ならお世話も苦にならないわよ」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃあ、血圧と体温を計るわね」
水瀬さんが血圧や体温などを計り部屋から去って行ったあとは朝食まで少し時間があるのでテレビを見て過ごすことにした
ホントはヘッドホンをつけるべきなのだろうけどいきなりの入院だったのでそう言った準備はしていなかったのだ
しかし僕が入院した部屋は個室なのでテレビも周りの迷惑も気にせず見ることができた
テレビには昨日の事件のニュースが流れていたが・・・
テレビを見始めてから1時間ぐらいたった時、病室の扉が開いて僕はそちらに目を向けた
そこには、はる姉と亜姫がいた
「兄さま・・・おはよう・・・ございます」
「和ちゃん・・・おはよう」
「おはよう二人ともどうしたの朝早くに?」
「和ちゃんの・・・着替え・・・持ってきた」
「そうなんだ、でも朝じゃなくてもよかったのに」
確かに昨日、はる姉たちは明日必要なものを持ってくると言っていたが僕は学校が終わってから来るものだと思い少し驚いていた
「出来るだけ・・・早い方が・・・良いと思って」
「でも、面会なんかの許可とれたの?確かここの病院面会はお昼の1時くらいからだったよね?」
「さっき・・・受付で事情を説明したら・・・許可くれました」
僕の質問に亜姫がそう答える
「そうなんだ」
「はい・・・後少しぐらいなら・・・ここに居てもいいって・・・言ってました」
「だから・・・少しここでお話でも・・・してから学校に向かう」
「まぁ確かに少し早いよね」
「だから・・・少しの間ここに・・・居ます」
「うん」
二人は近くにあったイスをベットに近くに並べ座った
「兄さま・・・腕痛くない・・・ですか?」
亜姫が心配そうな顔でそう聞いてきた
事件は解決したけどやっぱりまだ少し恐怖心があるのだろう
「うん大丈夫だよ」
「良かった・・・」
亜姫がホッと胸をなでおろす
「そういえば、昨日あれからどうだった今日もテレビ見てたら昨日のニュースが流れてたんだけど」
「帰るときに・・・マスコミの人にいろいろ・・・聞かれた」
疲れた顔をしてはる姉が説明してくれた
「なんとかそれをくぐりぬけて・・・家に走って帰ったけど・・・家にもマスコミの人がいて・・・とても大変だった」
ホントに大変だったようでその話を聞いていた亜姫も思い出したように疲れた表情をしている
「た、大変だったね」
僕は苦笑いでそう返すしかなかった
そして時刻は8時、そろそろ二人は学校に行く時間になった
「じゃあ・・・学校行ってくるね」
「行ってきます・・・兄さま」
「行ってらっしゃい二人とも」
「学校終わったら・・・また来るから・・・何かほしいものとか・・・あったら・・・学校が終わるぐらいの時間に連絡してね」
「何か食べたいものでも・・・いいですから・・・看護婦さんに許可も取りました」
「うん、わかった」
二人はそう言ってから部屋を出た2人と入れ替わりに水瀬さんが朝食を持ってきてくれた
「文弥君、朝食を持ってきたわよ」
「ありがとうございます水瀬さん」
「フフ、ちゃんと名前呼んでくれるのね」
「そうですね、癖みたいになってるので」
「そうなの、今の二人はお姉さんと妹さんかしら」
「はい、そうです」
「文弥君の家族ってレベル高いわね」
「そうですね、二人は学校でも人気者ですから」
「へぇ~そうなの、あ、朝食はここに置くわね」
朝食をベットの隣に置いてある台に乗せてから水瀬さんはイスを用意して腰かける
ん?あれ?
「あの、水瀬さん何やってるんですか?」
「イスに座ってるのよ」
「いや見ればわかります、どうしてイスに座ってるんですか?」
「まぁ、文弥君とコミュニケーションを取るためかな。後、食事が終わった時すぐに片付けられるように。あ!もちろん食べるのはゆっくりでいいわよ片腕使えないわけだし、それとも私が食べさせてあげよっか」
「い、いいです自分で食べますから」
「あらそう残念」
水瀬さんは微笑みながらそう言った
「まぁ実際、ホントにコミュニケーションを取るためなのよ」
「そうなんですか、それじゃあいただきます」
僕は、箸を取りご飯を食べ始める。しかし、見られているため少し食べづらい
「じゃあ今日の予定を少し説明するわね、食べながらでいいから聞いてね」
「はい」
「今日は、エコーの検査を受けてもらうわね後はレントゲンね両方とも朝のうちに検査があるから検査の直前になったらまた知らせるわね」
「分かりました、お昼は何もないんですか?」
「ええ、お昼は検査入れてないわ。だから自由にしてて良いわよ少し外を散歩したかったら別にしてもいいわよ」
「分かりました」
「文弥君って真面目なのね」
「どうしてですか?」
「だって私と話すときはちゃんと食事の手を止めるんだものいまどきなかなかいないわよ」
「そうですか?」
「ええ」
「まぁ、人が話してるのに何か食べながら聞くのも失礼だと思うし」
「やさしいのね」
「そんなことないですよ」
「でも、一週間も入院じゃ大変よね学校の授業とかも遅れちゃうでしょ」
「そうかもしれませんね、まぁ友達とかにノート見せてもらえばいいし多分なんとかなりますよ」
僕は、そう言いながら朝食を食べ終える
「朝食食べ終えたみたいねそれじゃあ持っていくわね、検査の前にまた来るけど何かあったら気軽に呼んでね」
「はい、ありがとうございます」
水瀬さんはそう言って部屋から出て行った
僕は、特にすることもなく再びテレビを見ることにした
数時間後、検査をしに行くと水瀬さんが知らせてくれた
僕は、水瀬さんに連れられ検査室へと向かう
まずはエコーの検査をするため受付に診察券を出して順番を待つ
すぐに名前が呼ばれて呼ばれた番号の部屋に入る
ベットに横になりエコー検査が始まる
しばらくしてエコー検査が終わり次はレントゲンを取るため場所を移動する
その後のレントゲンもすぐに終わり僕は診察券を受け付けの人から返してもらって案内のためにずっとついていてくれた水瀬さんと病室に戻る
病室に戻りついでだからと血圧などを計ってから水瀬さんはナースステーションに戻って行った
再びテレビに目を向け時間をつぶす
どんなものをやっているかとチャンネルをころころ変えているとまた昨日のニュースが流れていた
「はぁ、ホントに大変なことになってるなぁ」
僕は、テレビ画面を見ながらため息を漏らす
そのニュースを見てみるやはり何度も見たとはいえ自分の周りで起こったことなので何かまた変わったことがあったかどうか気になるのだ
テレビには今、昨日僕たちがストーカーに襲われた公園が映し出されていた
公園には、血の跡などがまだ残っており完全に封鎖されていた
しばらくニュースを見ていると水瀬さんが入ってきた
「文弥君、昼食持ってきたわよ。ってどうしたの怖い顔してるけど」
「え?」
水瀬さんの言葉に僕は少し驚いていた、普通に見ていたつもりだったのだがまさか自分がそんな顔をしているとは思わなかったからだ
「もうしかして左腕が痛むのかしら」
「い、いえ、そのなんでもありません」
「ホントに?」
「はい、ホントです」
「じゃあどうして怖い顔してたのかしら?」
「えーと、ニュースを見てて」
「ニュース?」
「はい、今流れている」
僕がそう言うと水瀬さんは昼食を朝と同じ場所においてテレビを見る
「ああこのニュースね、なるほどそりゃあ怖い顔にもなるわね」
「はいまぁ、この事件の事知ってるんですか?」
「そりゃあ患者さんのことはある程度知っておかないといけないからねあなたの治療をした医者から説明されてるのよ」
「そうなんですか」
「ええ」
「自分では、普通にただ見ているつもりだったんですけどね」
「もう解決したんでしょ?だったら気にしちゃダメよ」
「はい、そうですね」
「さてお昼でも食べましょ、おいしいもの食べれば気分も良くなるわよ」
「はい、って水瀬さんもここで食べるんですか?」
「もちろんよ、朝と違って用意に抜かりはないわ」
そう言って水瀬さんはコンビニで買ってきたであろうお昼の入った袋を見せてきた
「いいんですか?そういうことして」
「いいのいいの、それに見たいテレビ番組もあるしまた文弥君があのニュースを見ないように見張っておかないと」
「でも、ホントの理由は前者でしょ」
「まぁね」
「まぁ、別に見たい番組があるわけじゃないから僕はいいですけど」
「それじゃあ変えてもいいかしら?」
「いいですよ」
僕がそう言うと水瀬さんはリモコンを取りチャンネルを変えた
僕は、水瀬さんが見たがっていた番組を一緒に見ながら食事を食べることになった
昼食は、洋食だった箸ではなくフォークやスプーンでの食事になるので朝よりは食べやすいかもしれない
水瀬さんも自分用に買ったサンドイッチを食べていた
僕も昼食を食べ始める
先におかずなどを食べてから僕は、食パンに一緒に付いてきたジャムを口と右手を使って開けてパンに塗る
それを手に取りテレビを見ながらモフモフと食べているとなぜか途中から視線を感じた
「あの~なんですか水瀬さん」
僕は、感じた視線の方へ目を向けた、というよりここには僕以外には水瀬さんしかいないのだから感じた視線は水瀬さんしかあり得ないんだけど
「いや~食べる姿も可愛いなと思ってね、なんか癒されるわ」
「癒されるって・・・普通に食べてるだけなんですけど」
「でも見ている方は癒されるわよ、知らないかもしれないけど文弥君他の看護婦からも人気あるのよ私が担当になった時も変わってほしいって何度も言われたしね」
「そうなんですか?」
「そうよ、今日検査に行くために少し病室から出ただけでそれに拍車がかかってるもの、なんていうか母性本能をくすぐられる感じがするのよねぇ~」
「よくわからないですね僕には」
「アハハハそうかもね、さてとそろそろ仕事に戻ろうかしらね昼食も片付けて大丈夫かしら」
「はい、もう食べ終わりましたから」
「了解、それじゃ片付けるわね」
「お願いします」
「夕方頃にまた血圧とか計りに来るから」
「はい」
また後でねと一言言って水瀬さんは病室から出た
「しかし、ホントにすることがないな売店にでも行ってみようかな暇つぶしになりそうなものがあるかもしれないし。あ、でも、財布入ってるかな」
僕は、はる姉と亜姫が持ってきてくれたのもつの中から財布を探してみる
「あったあった」
僕は、荷物にまぎれていた財布を取り出して病室を出る
とはいえまだほとんど病棟内を把握しきれていないので近くにあった案内図を見る
「売店は、1階と2階にあるのかすごいなここの病院」
ちなみに僕がいる病室は4階でこの階からは病棟しかない
「とりあえず、2階でいいか」
僕はエレベーターに乗り2階のボタンを押す
2階に到着し降りてさっき見た案内図通りに進み売店を目指す
売店名に到着し店内を見て回る
思っていたよりも広かったのでいろいろと見て回ってみた
大分時間が潰せた僕は、暇つぶし用にクロスワードの本とペンを一本買って病室に戻ることにした
4階に戻り自分の病室に到着してドアを開けようとした時、消してきたはずのテレビの音が聞こえた
「誰かいるのかな?」
僕がドアを開けるとそこには
「あら~和人君、こんにちは」
そこには春香さんがいた
「こんにちは、春香さんいつここに?」
「今さっきよ~、渉から話を聞いてねお見舞いにきたの」
「わざわざ、ありがとうございます」
僕はお礼を言いながら自分のベットに腰かける
「いいのよ~気にしないで、そうだフルーツ買ってきたんだけど良かったら食べる?」
「はい、いただきます」
「それじゃあ、用意するわね」
そう言って春香さんはあらかじめ用意していたであろう果物ナイフを取り出し皮を剥きだした
リンゴの皮をむきながら春香さんが僕に話しかけてくる
「怪我の具合はどうなの和人君?」
「何箇所か軽い打撲がありますね。後は、まぁ見ての通りなんですけど左腕の骨折ですね」
「そうなの、最初に渉から話を聞いたときは少し疑ってたんだけど本当に大変だったみたいね」
「そうですね、でも、この程度の怪我ですんだのは不幸中の幸いですね」
「ニュースでも大分話題になってるわよ、家にも何人か記者の人が来たもの」
「ホントいろんなところに迷惑かけてるみたいですね・・・」
「そんなことないわよ。和人君には感謝してるわ、渉も助けてもらったみたいだしそれに和人君のことを知ってる近所の人ものすごく感心してたわ」
「まぁ、警察の人が来なかったらヤバかったですけど」
「皆が無事なら何も文句はないわよ、今は怪我を治すことだけ考えなさい」
「はい、そうします」
「はい、リンゴ皮剥いたから食べてね」
「ありがとうございます」
「夕方には、渉も来るし由香も友達と一緒に見舞いに来るって言ってたわ。お昼まで時間もあるし散歩でもする?気分転換にはなるかもしれないわよ」
「そうですね、少し外に出てみたいですね」
「それじゃあ、リンゴを食べ終わったら行きましょう」
「はい」
僕は春香さんが切ってくれたリンゴを食べる
「他の果物も食べやすい大きさに切って冷蔵庫に入れておくわね」
そう言って春香さんは病室に完備されていた冷蔵庫に果物を入れる
「ありがとうございます春香さん」
「フフ、どういたしまして」
しばらくしてリンゴを食べ終えた僕は春香さんと一緒に外に散歩に行くことにした
外をブラブラと散歩しながら春香さんと話をする
「9月に入って結構たつのにまだ暑いわねぇ」
「そうですね」
しばらく同じように話しながら歩いていると知らない人がこちらに近寄ってきた
「もしかして、文弥和人君ですか?」
「はい、そうですけど」
「私は、〇〇テレビの者なんですが先日の事件について詳しく話を聞かせてもらえませんか?」
「そ、その、すいません、あんまり話したくないので」
「そこをなんとかお願いします!」
相手の記者の人は何度も同じようなことを言って頼んでくる
だが僕としてもあんまり話したいものではないのでそれを拒否する
しかし、他の記者の人も何人かいたらしく此処の騒ぎを聞きつけ数人の人が近寄ってくる
少しは覚悟していたことだがやはり精神的に結構きつい
何かやましいことがあるわけじゃないし気にする必要がないと言えばそれまでだがやはり助かったとはいえ殺されかけた身としてはあんまり話したい気分じゃない
相手の記者の人も人数が増えて勢いがついたのか答えるとも言ってないのにいろいろ質問してくる
僕が相手の勢いに負けて困り果てていると春香さんが僕を庇うように前に出てきた
「いい加減にしてください!さっきから黙って見ていれば!なんですかあなたたちはこの子は話したくないって言ってるんです!お帰りください」
春香さんが普段からは想像もつかないような大きな声を出して記者の人たちにそう言った
相手の方も少し驚いて少し後ずさったがすぐに質問の対象を春香さんに向けた
「あなたは文弥和人君の母親ですか!それなら代わりに詳しくお話を」
「私は、この子の友達の母です今日はお見舞いに来ただけです!それよりこれ以上この子を追い込むのはやめてください!」
その後も春香さんは数人の記者の人たちと口論する
しばらくは相手の方も粘っていたのだがやっと無駄だと判断したのだろうやっと記者の人たちは退散してくれた
記者の人たちが帰って行くのを春香さんは少し睨みながら見ている
見えなくなったところで僕の方に顔を向けいつもの様子で話かけてきた
「大丈夫、和人君?ごめんなさいね私が散歩に行ってみようなんて言わなければこんなことにはならなかったのに」
春香さんが申し訳なさそうに僕に謝る
「そんな大丈夫ですよ僕は、いい気分転換にもなりましたからホント大丈夫ですから」
「もう戻りましょうか、少し休んだ方がいいわよ」
「すいませんそうさせてもらいます」
僕と春香さんは病室に戻った
病室に戻った僕はベットに横になった
「和人君、少し眠りなさい」
春香さんがやさしく布団をかぶせながらそう言った
「私は、ここにいるから安心なさい」
「はい、すいませんご心配かけて」
「気にしないの今は休みなさい」
「はい・・・」
僕は、春香さんの言うとおりに少し休むため目をつぶった
ホントに疲れていたのか目をつむるとすぐに眠気が襲ってきてすぐに眠りについた
眠ってから数時間後、再び意識が戻ってきた僕はゆっくり目を開けるまぶしいライトに一瞬目がくらむもののすぐに視野も回復し僕は体をゆっくり起こす
「あ、和人さん起きたんですね」
僕は、聞き覚えのある声の方に顔を向ける
顔を向けるとそこには由香ちゃん、優菜ちゃん、美奈ちゃんがイスに座っていた
「由香ちゃん、優奈ちゃん、美奈ちゃんもお見舞いに来てくれたの?」
「はい、そうですよ」
と由香ちゃんが言った
「和人さん、腕大丈夫ですか?」
美奈ちゃんが僕の腕を見て心配そうに言った
「私、ギブスって初めて見ました~」
優菜ちゃんが物珍しそうにギブスを眺める
「ちょ、ちょっと優菜」
優菜ちゃんの若干ズレタ発言に由香ちゃんがあきれながら優菜ちゃんを見る
「あ、ごめんごめんついね大丈夫ですか和人さん?」
「うん、大丈夫だよ3人とも心配してくれてありがと」
「和人さんが怪我したって兄貴から聞いて昨日からずっと心配してたんですよ」
「そうそう私も、あの強い和人さんがまさか怪我して入院するなんて由香から話を聞いてびっくりしましたよ」
「私も~ビックリしましたよ」
「まぁ怪我と言っても大きなけがは骨折だけだし入院もあくまで検査のためだからね検査が終わればすぐに退院できるよ」
「そうなんですか良かったです」
由香ちゃん達と話していると病室のドアが開いた
「お、和人起きてたのか」
「和ちゃん・・・お見舞いに来た」
「兄さま・・・具合はどうですか」
「やっほー!和人君元気~」
「和人君、起きたのね」
渉、はる姉、亜姫、美里先輩、春香さんの順番で病室に入ってきた
「皆、来てたんだね」
「当たり前だろ、友達の見舞いに来ないやつはいねぇよ」
「夕方にまた来るって・・・朝言ったから」
「私も・・・兄さまと約束・・・しました」
「私も和人君の様子は気になるしね」
「ありがと、皆」
皆に一言お礼を言うと、渉が僕に話を振ってきた
「そうだ、なぁ和人何か文化祭のアイデアあるか?」
「え?文化祭?」
「学校で文化祭の話し合いが始まってるんだ。それで何かアイデアがないか聞いて来いって頼まれてな」
「そういえばもう話し合いが始まるころだったね」
「まぁ、1か月ちょいしか時間ないしな、で、何かあるかアイデア」
「今何が出てるのアイデアは?」
「今有力なのは、執事&メイド喫茶とフリーマーケットの二つだな」
「なるほど、でも僕はあんまりアイデアないかな~」
「そうなると、前者が結構決まりかけてるんだよなフリマも結構票が入ったけど喫茶店ほどじゃねぇし」
「でも、服はどうするの?」
「服はどうにかしてかき集めるさ最悪自分たちで作ればいいし」
「まぁそうだね」
「ふ~ん和人君たちは執事&メイド喫茶ねぇ」
「美里先輩のクラスは何やるんですか?」
「うちも喫茶店よ」
「どんな喫茶店なんすか」
渉が興味深そうに質問した
「私たちのクラスはなんと!猫耳喫茶よ!」
「ね、猫耳喫茶ですか」
「しかも、語尾を猫にするわよ」
「なんか美里先輩ウキウキしてますね」
「まぁ、今年で最後の文化祭だしね今からもう楽しみなわけよ!」
「なるほど。亜姫のクラスは何やるか決まった?」
「私の・・・クラスは・・・お化け屋敷です」
「なるほどそういう手もあったか」
渉がフムフムとうなずいている
「へぇ、それも面白そうだね」
「そういえば、由香たちの学校の文化祭はいつなんだ?」
渉が由香ちゃんにそう聞いた
「私たちは、9月のちょうど終わりごろですね」
渉の質問に美奈ちゃんが答えた
「じゃあ行ってみようかな」
「か、和人さん、く、来るんですか?」
僕の発言に由香ちゃんが驚いた様子でたずねてくる
「え、行くつもりだけど、駄目かな?」
「い、いえその、駄目ってわけじゃないんですけど」
僕がそう聞くと由香ちゃんは困った表情でそう言った
「違いますよ和人さん、私たちもメイド喫茶やるんですけど由香はその衣装を見せるのが少し恥ずかしいだけなんですよ」
由香ちゃんの隣で優菜ちゃんが笑ってそう答えてくれた
「ちょ、ちょっと優菜」
由香ちゃんが頬を真っ赤に染めて優菜ちゃんに抗議の目を向けていた
「由香ちゃんたちもメイド喫茶やるんだね、あれ執事はやらないの?」
「はい、うちのクラスは女子のレベルが高いから男子には全員料理とか飾り付けをまかせてるんです。まぁ良く言えば裏方、悪く言えばパシリですね」
「そ、そうなんだ」
美奈ちゃんのズバッとした回答に少し苦笑いの僕
「まぁ、確かに前に由香の学校まで行った時ちらほらとその辺にいた女子もレベル高かったしな」
「そういうわけでぜひ遊びに来てくださいね!由香のメイド姿も見れますよ~」
「由香ちゃんメイド服似合いそうだもんね」
「え!そ、そうですか?」
「うん」
「あ、ありがとうございます」
「そういえば、今年の文化祭ではもう一つイベントがあるわね」
美里先輩が思い出したようにそう言った
「そうなんですか?」
「ええ、今年は仲良し同士でバンドを組んで演奏もできるわよ去年までは軽音部とか吹奏楽部だけの演奏だったけど」
「それは面白そうですね」
「そう?だったら私たちで出てみる?」
「え!僕たちでですか!?」
「そりゃあいいな面白そうだ」
美里先輩の提案に渉が食いつく
「和人君はどうする?」
「どうするって言われても僕の骨折が治るのはちょうど1ヶ月後ですから楽器を練習する暇はありませんよ」
「だったらボーカルでいいじゃない、歌ならいつでも練習できるし和人君歌うまいし」
「そ、それなら、まぁできますけど」
「じゃあやりましょ、思い出づくりだと思って」
「分かりました、少し興味もあるし僕もやります」
「なら・・・私も・・・やる」
「私も・・・やります」
「このメンツならかなり盛り上がりそうね」
「そうっすね」
「いいわねぇ、青春って感じね」
春香さんが僕たちの会話を聞いて微笑みながらそう言った
しばらく話し合っていると水瀬さんが入ってきた
「おお!いつのまにか賑やかになってるわねぇ」
水瀬さんがそう言いながら近寄ってくる
「文弥君、血圧測るわねそのあと夕食持ってくるから」
「はい、わかりました」
「この人、和人の担当の看護婦か?」
「うん、そうだよ」
「なんて、うらやましい!なんでお前の周りには美人が寄ってくるんだ!」
「わ、渉、少し落ち着こうよ」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるわねぇ~」
そんな会話をしながら血圧や体温を計り、そのあとすぐに夕食を持ってきてくれた
「それじゃ、私たちは帰りましょうか」
「そうっすね、和人もあんま大勢の前じゃ食事しずらいだろうしな」
そう言って皆が帰る支度を始める
「私は、もう少し残ってるわねぇ~和人君のこと心配だし」
周りが帰ろうとするなか春香さんが意外な言葉を発した
「お母さん、まだ残ってるの?」
春香さんの言葉に由香ちゃんがそう聞いた
「ええ、やっぱりいきなり皆がいなくなるのは寂しいと思うし。渉、悪いんだけど夕食代わりに作ってくれる」
「了解」
「そ、そんな、僕は大丈夫ですよ」
「まぁいいじゃねぇか、和人、母ちゃんがいたいって言ってるんだし」
「でも悪いよ」
「だったら・・・私と・・・亜姫が・・・残ります」
「もっと・・・兄さまと・・・話も・・・したいですし」
はる姉と亜姫がそう言うと
「駄目よ」
春香さんが真面目なトーンでそう言った
「また何かあったら大変でしょ二人は帰りなさい」
「でも・・・」
「私も、和人君が夕食を食べ終わる頃には帰るわ」
「・・・わかりました」
「今日は・・・帰ります」
はる姉と亜姫はしぶしぶと引き下がった
「それじゃあ、決まったみたいだし帰りましょうか」
「うーす、じゃあな和人またなぁ~」
「うん、それじゃあ」
皆、一言さよならと言って病室を出る
「皆帰ったわね」
「そうですね、すいません春香さん迷惑かけてしまって」
「気にしないで、私が残りたいだけなんだからもちろん面会時間ぎりぎりまでいるわよ」
「え、でもさっき、僕が夕食を食べ終わる頃には帰るって」
「ああでも言わないと美晴ちゃんと亜姫ちゃんは帰らないでしょ、ああもちろん家のことは大丈夫よ渉はきっと私が最後まで残るの気付いているから大体のことはやってくれると思うわ」
「どうしてわかるんですか?」
「あの子は、こういうときは鋭いのよ」
「そうなんですか」
「そうそう、それより夕食冷めないうちに食べちゃいなさい」
「はい」
僕は、夕食を食べ始める
しばらくして、夕食を食べ終えた僕は、少しゆっくりした後、お風呂に向かい素早く体を洗った
そのあとは、春香さんといろいろ話をして時刻は8時になった
「それじゃあ、そろそろ帰るわね」
「はい、ありがとうございました最後までいてもらって」
「ウフフ、どういたしまして」
春香さんは、椅子を片づけて持ってきていたかばんを持ちドアの方へ向かう
「それじゃあ、ゆっくり休むのよおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
一言そう言って春香さんは帰って行った
正直言って春香さんの厚意は嬉しかった春香さんの言うとおり皆が帰ると行った時、僕は寂しさが込み上げてきたからだ
春香さんはおそらくそのことを理解して僕のそばに最後までいてくれたのだろう
春香さんが帰った後もしばらくテレビを見ていたが眠くなってきたのでテレビを消して僕は眠りに着いた