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天の邪鬼と猫かぶり  作者: 陸一じゅん
二章:兄の王子様抹殺計画
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文字から色を見る少年

「山崎さんは待ってて下さい」その言葉に頷いて、梓は順番待ちの椅子の端に座った。平日の夕方だからか、勤め帰りの姿が目に付く。

 邪魔だからと追い払われた感が否めない。

 兄妹だろうか。ふと、後ろの席に座る小学生の甲高い声の会話が耳に入った。


 どうしてそんな会話になったのか、首をかしげるような内容だった。

「『さしすせそ』は秋の文字だろ。だから秋の色なんだ」



「・・・・ふーん。じゃあ、『あいうえお』は?」

「水色とか~朝の色!」

「朝は水色なの?」

「ったりまえだろ。空気が水色じゃん。夜は紺色!で、夕方とか朝は青!」

「へー、じゃぁ『かきくけこ』は?」

「かきくけこも秋の色。あっでも、さしすせそは枯れた木の色で、かきくけこはこーよーの色」

「赤とか、きいろ?」

「んー・・・・あと、くだものの色!」

「たちつてとは?」

「みどり。夏のはじめの、ん~・・・・・しち月くらい」

「木の色?」

「葉っぱの色。夏のはじめのこと、初夏ってゆうんだって。だから初夏の文字」

「なにぬねの」

「むらさきとオレンジ」

「ふたつ色あるの?」

「なにぬねのも秋!」

「どう違うの?」

「なにぬねのは今くらい。じゅーいち月。『もうすぐ冬ですよ!』って感じ『なむねの』はむらさきだけど、『に』だけオレンジ。五個全部おんなじ色じゃねーもん」

「違うの?」

「あいうえおも、『え』だけきいろ。他もおんなじ水色じゃなくって、ちょっとだけ濃さが違う。

 えっと、学校の帽子とかじゃなくてチョークの黄色みたいな薄いきいろ」

「違うの?」

「水色はぁ、えーとっ、チームカラーなんだ」

「ねーねー春の文字は?」

「『はひふへほ』と『あいうえお』と・・・・・あと『やゆよ』!」

「『わをん』は?」

「それはお正月」

「『まみむめもは?」

「二月。冬」

「『らりるれろ』~」

「夏!」

「なんで?」

「『らりる』に『れろ』ってすると暑そうだから」

「・・・・・意味分かんない」

「なんでだよーこう、ふいんきが」

「・・・・・ふんいきだよー」

「なんでだよふいんきっていうじゃーん」



 男の子の方がむくれた声を出した。女の子の方も納得がいかないように唸っていたが、そのうち「せいこーくんがそれでいいならいいんじゃないの」と言った。

 小学校低学年くらいだろうに。男の子はいつでもちょっと馬鹿だ。



「あっ!そーだあっちゃん、この前さあ、おれのワニノコがアリゲイツに進化したんだ!」

 とたんに機嫌を取り戻した兄に、妹が小さく溜息を吐くのが聞こえた。




「・・・・小学生怖え」梓は思わず、聞こえもしない声で呟いた。あの兄妹の、主に妹の方の数年後が不安になる。

 いや、案外自分もあんなもんだったかもしれない。梓は苦笑して、もう一度兄妹の微笑ましい会話に耳を傾けた。






「は?」

 窓口の事務員が、思わず、といったふうに声を漏らした。

「あの・・・・ですから、三日前に交通事故に遭った、あの、山崎梓さんの、」

 質問をそのまま言ったのが悪かったのだ。事務員は眉を下げて、困惑したように藍を見返した。

(・・・・言葉がよくわかっていないと思われてる)

 胃のあたりから湧いてくるような嫌な汗と、あの感情が吹き出してくる。藍は慌てて蓋を閉めた。

「ですから、」その時だった。




「ねぇ今アンタ、『交通事故に遭ったヤマザキアズサ』って言ったよね」

 肩に置かれた手。一拍置いて、藍は振り返って相手を見た。




せいこうくん(7歳)

周 晴光くん。ポケモン好き。背の順で一番後ろなのが自慢。


あっちゃん(6歳)

三浦 朝子ちゃん。マリオやぷよぷよの方が好き。正直こいつと趣味は合わないと思っているが、自分の方がお姉さんだし(※精神的に)、長い付き合い(※幼稚園から)なので遊んでやっていると主張する。


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