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天の邪鬼と猫かぶり  作者: 陸一じゅん
五章:六人目の被害状況
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:人魚姫


 この苛立ちを、どう処理したものか。

 彼女の中で、二つ三つと姿が現れ消えていく。

 カーテンの隙間から三日月が見えた。昼間は明るい水色のカーテンも、宵の中では深い藍色を被せて揺れていた。今夜は風が少し強い。

 苛立つことばかりだ。腹立たしい、腹立たしい――――自分を邪魔するもの、道をふさぐもの、惑わすもの。



 なんで、どうして、どうして、どうして。

 叶わない恋だったことは、わかっている。でも今の私の動力源は、まさしくそれなのだ。邪魔するものを排除しない限り、動けやしない。

 あの丸い、真珠の様な両眼を思い出す。美しい人だった。海の底の大粒の真珠である。手のひらにツンと立つそれは、確かに大切に守りたくなるような姿だ。



 わかっている。―――分かっている。

 決して、わたしは同じ土俵上に居るわけではない。劣っているのは自分の方だ。

 競うとすれば、彼のように、または彼女のように、特別な眼でも無いと駄目なのだろう。特別な力でも無いと駄目なのだろう。あの兄妹のように、秀でた何かが無いと。私は舞台の下から、野次を飛ばすことしか出来ない。

 最近、一人クラスメイトが事故に遭った。

 恐ろしいことに、その日、恐らく私が彼女に最後にコンタクトを取ったのだ。

 ――――といったって、睨みつけただけだけど。

 視線は合った。そのあと彼女は、なんでもないように先に眼をそらし、・・・・・その帰り道、歩道橋から落ちた。



(そんな、まさか)

 その翌日に、先生から彼女に悩みはあったかと聞かれた。教師は自殺を疑っているらしい。

 そう話す方ではない。実を言うとあの日、初めて視線を合わせて会話した。しかしあの時の自分の意見を主張する彼女の眼は、あまりにも強かったのだ。自殺なんてするだろうか?




(まさか)

 もしかしたら、なんて考えてしまう自分は末期なのかもしれない。冬は近いが、まだ温かい秋の夜だった。窓を開け放してもいいくらいには。

 だというのに。





【魔法使いのはなし】

 魔法使いは言いました。

 おんなじになりたいのです。

 違うから省かれるのです。ならばおんなじになりましょう。

 そう言って魔法使いはみんなにお化粧をほどこしました。

 まるで、魔法のようだとみんなは喜びます。

 踊るみんなに魔法使いは手をたたき、祝福します。

 さて、そして輪になるみんなの中、うまく踊れなくてしょんぼりする一人を指しました。

「次はあなたが魔法使い」

 と。





【trope】

 言葉の比喩的用法。言葉のあや。


【pageant】

 パジェントとは「ページを開く」と言う意味の言葉から来ており、歴史的な出来事の場面を本のページをめくるように次々と表現し、自由に創造するという意である。

 ・(歴史的な場面を舞台で見せる)野外劇、ページェント。特にクリスマス聖誕劇のこと。

 ・(時代衣装などをつけた壮麗な)行列、山車、華やかな見もの

 ・(壮麗な行列を思わせる)目を見張るような連続

 ・壮観,壮麗,盛儀

 ・ラテン語「舞台」

 ・(意味のない)虚飾、見せびらかし



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