エピローグ
さて、その時、歩道橋に居たのは五人の学生だった。それぞれ面識などは無い。ありふれた、年齢もバラバラな五人の学生である。時刻は丁度、午後4時ごろ。少しずつ下校途中の学生が零れてくる時間。
眼鏡の女子高生は歩道橋から落ちた。
金髪に蒼い目の男子中学生はそれを見た。
もう一人の蒼い目の少年はその場を何事も無かったかのように離れた。
蒼のランドセルの女の子はそっと下を覗き込んでみた。
赤い髪の不良は慌てて歩道橋を駆け下りた。
これはハッピーエンドをより盛り上げるため、魔法使いがかけた魔法なのだ。
魔法使いというウイルスは、〟魔法使い“という病気に感染させ、去っていく。
小嶋凛に感染し双子を再会させ、廻り廻って四日前に山崎梓をあの歩道橋から落とし、坂城藍に導いた。辻聖はあの日三浦朝子と出会ったし、彼らはこの先、その存在によって何かを変えられるのである。
この魔法が始まったのはきっと、ずっと昔。
むかしむかしのお話、だったのだ。
今のボクにあるのは、ファンタジーとやたら厚い猫型の面の皮、そして持ち前の好奇心と彼らへの濁った愛である。
しかしそれも、いつしか忘れてしまうだろう。魔法使いに意思なんてないのだ。ただ求められるように魔法を使い、そして他を探しに行く。
風に流されるままのタンポポの綿毛に、何処で芽吹くかなんてわかりやしないのだ。