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「ミヅキ、休みだって」

「ミヅキ、休みだって」


 めずらしく険しい顔でなっちゃんが言った。

「・・・・心配だね。ミヅキいつも元気なのに」

「精神的なのじゃなきゃいいけど・・・・」

「・・・・・」





 こればかりは何とも言えない。なっちゃんはケータイを開けたり閉じたり手で玩びながら、たまに開いて画面を覗き込む、といったことを繰り返している。パチッ、パチッ、と鳴る音が少しうっとおしい。

「なっちゃん、大野さん睨んでるよ」

「・・・・んん・・・」パチッ、パチッ、

「・・・・ちょっとウルサイんだけど」

 大野まこと。彼女は、見るからに女子高生ギャルといった感じの子だ。普段はそんな気の強い子ではないのだけれど、なぜだかわたし達を目の敵にして何だかんだとつっかかってくる。

 そう、あの日のことも、彼女たちのグループとのトラブルが原因だった。彼女はクラスでも特に目立つグループのまとめ役だ。「何?酒氏さん休みなのー?へー」

 ライバルが居なくて嬉しいのだろう。ご機嫌で彼女は今日も、わたし達に話しかけてくる。

「どうせ寝不足とかの理由でサボりでしょ?やだ、あんた達、西藤だけじゃなくって酒氏までお盛んなわけ?

 いいよね~小金持ちは。財布が重いんじゃないの?今頃ラブホのベットで札束数えてたりして」

「だから西藤ちゃんもその兄貴もエンコーなんかしてないって何度言ったらわかんのよ!青島のヤロウと歩いてたのは人違いだっつーの!何?昨日言ったことも忘れたの?あったま軽いわね中身詰まってんの?ベンキョーしなさいベンキョー」

 あらかさまな中傷になっちゃんがいきり立った。機嫌がいつもより悪いからか、勢いも三割増しだ。いつもの光景に、わたしはお約束の溜息を吐いた。どうやら、現国担当の青島先生とわたしの噂が立っているのだ。



 きっかけは、青島先生のパスケースの中にわたしの写真が入っていた、という噂だった。どうやらそれは真実らしい。好奇心でわざわざ確認した生徒がいたのだ。でもわたしには、それが“わたし自身“とは思えない。

 次に、青島はわたしを贔屓している、と言い出した生徒がいた。そんなことはない。そう言っても火に油、鎮火など夢のまた夢だ。


 しかしなっちゃんに言わせると、それもあながち間違いでもないらしい。

「こないだのテストでさ、西藤ちゃん消しゴム落としたじゃない?」そんなこともあったっけか。

 首をかしげると、なっちゃんは呆れたように「西藤ちゃん本当興味ないのね!」興味のないどうでもいい出来事はすぐに忘れてしまう性質なのだから、しかたない。


「そこでさ、青島わざわざ拾って、埃はらって、西藤ちゃんに手渡ししたじゃない。机に置きゃいいものを、わざわざ西藤ちゃんの左手にポンッて」

「・・・・・それで?」

「で、一言。『気をつけろよ』」

「・・・・・・」


 で?という話だ。


「でも普通、ただの生徒にそこまでする?青島って、対・西藤ちゃんだと、さりげない仕草にそういうのが滲み出てんのよ。贔屓っていうのは違うにしても、あれはそういう眼で見てるよ」

「・・・・・・・」


 女の感というやつだろうか。わたしはどうやら鈍いらしい。女子高だからして、この学校は女子比率が異常に高い。そんな女の群れには、一教師の一時の気の迷い程度、お見通しなのだろう。


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