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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

天国のコタツ

掲載日:2026/06/28

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 おお、つぶらや、きたな。ここんところ、ご無沙汰だったなあ。まあ、ゆっくりしていけよ。


 ――天国のコタツについて、もう一度取材しにきた?


 へえ、お前もまた熱心なやつだな。

 思えば、あれを見つけてからもうどれくらいになるのか。しばらくは俺とお前の秘密ってことにしていたが、最近は俺ももうちょい多くの人に知られてもいいんじゃないかと思い始めたよ。

 というのも、俺の知り合いにも同じようなモンを見つけた、と報せてくるやつがいてな。ひょっとしたら世の中にこういったモンが増えているんじゃないかと思う。

 だとすると、注意喚起の意味合いを兼ねて伝えておいてもいいかもしれん……とも考えるようになったのさ。昔は秘密の独占に大きな関心を持っていたが、これもまた心境の変化ってやつかねえ。

 とと……じゃあ、コタツのもとへ向かうか。


 場所については、お前も把握している通りだ。この家のわきの林、その中のボロ小屋に今も置きっぱなしにしている。

 おっと、今のうちにこれ飲んどけ。大吟醸の一杯だ。

 子供のうちは、なんともなかったんだがな。大人になってからは、一杯ひっかけていないと、あのコタツのもとへ意図的にたどり着くのは困難……お前も知っているだろう?

 なんでかねえ。子供のときは開放されていた何かが、大人になるにつれて栓をされてしまったかのようさ。こうしてどこかを麻痺させないことには、足を運べないものもできる。ひとつの防衛機構なんだろうかね。

 飲めたか? そんじゃ、先に行くとしよう。


 このあたりも、ちょっと前の台風でだいぶ葉が落ちたもんだ。いつもより、見通しがきくだろう。でも、例の小屋って不思議と見過ごしやすいんだよなあ。

 ……ほれほれ、つぶらや。行き過ぎだぞ。ここだって、ここ。

 もっと奥まったところにあると思ったか? 感覚そのものは分からなくもないがな。大人になってからは、このあたりも鈍っちまっているのかもしれん。

 しかし、ちっこいころによくこんなあばら家を目に止めたもんだな。秘密基地の代わりになると思ったんだっけか。

 玄関の引き戸の奥には6畳間。荒れ放題の畳に、四方を囲う障子たち。そのど真ん中に掘りごたつのみが、デンと置かれている。

 あのときから変わっていないもんだ。言っとくが、俺は全然手を入れていないぜ? お前だってそうだろ?

 少なくとも数千日はそのままのはず。その割に傷みが進んだ様子がない。

 俺たち以外の誰かが手を入れているのか。あるいは、この小屋そのものがどうにかしているのか?

 まあ、今回のお前の目的はこのコタツだろ? さっさと取材を済ませようぜ。


 天国のコタツ。

 俺たちがはじめて出会った時に、そう名付けたんだよなあ。ほとんど直感だったが、あながち的外れでもなかったと思っているぜ。

 こんな蒸し暑い夏場でも、中に足を入れると冬場のときのような心地よさを覚える。たいしたもんだよな。電気も通じていないだろうに。

 なんというか、大人になってみるとこの手のやすらぎを求めたくなるよなあ。子供のころは元気の出力にリミッターがないから、一日中、疲れ知らずで動き回ることもできた。

 いざ疲労を感じても、今度はばたんきゅーでぐっすりと熟睡ができる。中途半端な睡眠になりがちとなってくると、どうやってリフレッシュさせるかは人によって選択肢が異なってくるなあ。

 昔はどうしてこうもマッサージとかを提供するお店が多いんだ、と思っていたが……おいおい、つぶらや! うとうとしているとあぶねえぞ。


 そりゃ気持ちいいのは分かる。俺たちが天国と評した理由のひとつだからな。だが、もうひとつの理由を、忘れちゃいまい?

 いま一度、コタツ布団をめくって確かめてみろよ。オレたちの足にまとわりつく骸骨たちをよ。こいつらが足にまとわりついて、引っ掻いている間は痛みが全部、心地よさに変換されるのさ。

 血がにじみ、肉をつねられて、骨がきしんだとしても、気持ちよさだけが増していく……おそらく精神的にも肉体的にも、あの世へのいい階段になるだろう。

 そう考えて、名付けたはずだ。俺とお前とでな。

 さあ、出ろ出ろ。もう取材も大丈夫だろ?


 はああ、だいぶ青タンになっちまったな。

 耐久力のおとろえか、あいつらの引っ付く力が増しているのか分からないが、そうおちおち使えそうにはないよな、あそこ。

 こうして自制がきくぶんにはいいけど、今回はお前単独だとだいぶ危なかったんじゃないか? 心地よさをはねのけられずにいたなら、気持ちいいままにあそこのコタツで骨になるのかねえ。

 あいつらの仲間にさ。

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