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共依存の泥沼と、憐れみの視線

作者: 夜永じゅん
掲載日:2026/03/10

とある社内での出来事を綴っています。

不倫を認めるものではありません。

共依存の泥沼と、憐れみの視線


「本当にお疲れ様です……」


マリエがフロアの反対側へ消えた直後、同僚の一人が小声で僕に言った。その目には、深い同情の色が浮かんでいる。

職場において、僕は決して嫌われてはいない。むしろ、あの「腫れ物」であるまりえに最後まで寄り添い、そして今、理不尽極まりない逆恨みを受けている被害者として、仲間内では同情の的になっていた。


マリエは内縁の夫であるヨシオより一回り以上年上で、この職場の誰もが近寄りたがらない人物だ。

彼女は自分のミスを認めず、他人のミスには異常に厳しく、社内ルールを平然と無視する。そんな彼女を唯一、見捨てずに接してきたのが僕だった。プライベートで彼女の誘いに乗ってあげていたのも、彼女が孤立しないための僕なりの配慮だった。たまに頼み事をした際も、僕は丁寧すぎるほどのお礼を言い、品物を渡して礼節を尽くした。

丁寧すぎるというのは同僚が言っていた。

僕は当然のことだと思っていた。

品物を選ばせると、度を超えることもあったが、仕方ないと諦めていた。


それなのに、彼女の中では「遊んでやった、楽しませてやった恩」にすり替わり、今や「恩を仇で返した裏切り者」として僕を無視し続けている。


事の元凶であるヨシオの不倫。

しかしその不倫劇は、あまりに惨めな形で幕を閉じた。

一回り以上年下の不倫相手。

そんな若い不倫相手の親に不倫がバレンタインた。

しかし、娘が本気でヨシオが好きだと知り、ある条件を提示した。

その親御さんが提示した条件は、極めて真っ当なものだった。

「内縁の嫁と別れること」「正社員として責任を持って働くこと」。

ヨシオは30才半ばでフリーターの身。

そんな男に結婚を前提に娘を渡す親はいないだろう。


しかし、ヨシオはその「当たり前」から逃げ出した。

年上のマリエと別れる修羅場を乗り越える勇気も、住む場所を失う覚悟も、正社員としての重圧を背負う気概も、彼にはなかった。彼は、不倫相手をあっさりと見捨て、「待たせすぎたから無理だよな」と言い訳をしてマリエの元へ這いつくばって戻ったのだ。

2ヶ月間、何も行動に移そうとしないままにだ。


今のヨシオは、僕が彼を救おうと必死に動いた過去をすべて「なかったこと」にしている。

マリエからのDVから救ってあげたい気持ちと、ヨシオの逃げ出したい気持ちが合致して、シェアハウスできる部屋を探し、引っ越したボクの行動に感謝もせず。


ちなみに、マリエも別れたいと言っていたため、ヨシオを救いだすという手段を選んだ。

マリエも働いているし、いつの旦那との子かはわからないが、社会人の子どもがいたから、大丈夫だと判断した。


マリエは自分から周囲に事情を詳しく話してはいない。だが、彼女の僕に対する極端な拒絶ぶりから、周囲の関係が壊れたことは誰の目にも明らかだった。

「あのマリエさんに、あんなに尽くしていたのに、どうしてああんな態度を……」

同僚たちはそう囁き合い、僕に同情の声をかける。


しかし、同情される側であることも、また別の辛さがあった。

僕がマリエに尽くした善意も、お礼に渡した品物も、すべてがこの醜悪な夫婦の「ヨリを戻すための生贄」にされた事実は変わらない。


マリエは今日も、社内ルールを無視して暴走し、職場のチームワークを乱し続けている。

周囲は彼女を冷ややかな目で見ているが、真正面から注意できる人間はもういない。注意すれば、僕のように「煩わしいやつ」のレッテルを貼られ、執拗に攻撃されることを皆が知っているからだ。


ひとりの人生をめちゃくちゃにし、僕を泥沼に引きずり込み、責任から逃げ出した夫。

そして、自分の非を認めず、逆恨みをガソリンにして僕を無視し続ける年上の妻。


僕は、同僚たちの憐れみの視線を背中に受けながら、この壊れた共依存の檻の中で、今日も不毛な業務をこなしている。この理不尽な徒労感が報われる日は、まだ見えない。

読んでくださり、ありがとうございます。

モヤモヤとした気持ちをスッキリさせたくて書きました。

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