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追放された地脈調律士の山奥スローライフ 〜戦わずに魔境を安全地帯にしていたら、王国が慌てて探しに来ました〜  作者: 山奥たける


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第9話 揺れる力

 夜は、静かすぎるほどだった。


 焚き火の火が、ぱちりと音を立てるたびに、ミリアの肩がわずかに揺れる。

 昼間の出来事が、まだ胸の奥で収まっていないのだろう。


「……眠れないか」


 俺が声をかけると、ミリアは小さく頷いた。


「少しだけ……頭の中が、ざわざわして」


 グランは少し離れた場所で見張りをしている。

 今は、二人きりだった。


「魔力か?」

「……はい」


 ミリアは、自分の胸元に手を当てる。


「昼間、魔物の気配を感じた時……はっきり、見えたんです」

「見えた?」


「流れが、色みたいに……絡まって、尖ってて……」


 俺は、息を呑んだ。


 それは、ただの感覚じゃない。

 視えている。


「……怖かったか」

「怖かったです」


 素直な答えだった。


「でも、それ以上に……止めたかった」


 その言葉の直後だった。


 ――ごうっ。


 地面が、低く唸る。


 焚き火の炎が、不自然に揺れた。


「……来る」


 ミリアの声が、震える。


「近い……近すぎる……!」


 俺は立ち上がり、地面に手を当てる。

 地脈が、乱れている。


 違う。

 乱されている。


「ミリア、落ち着け」

「でも……止まらない……!」


 彼女の周囲で、空気がざわつく。

 見えない流れが、彼女に引き寄せられている。


 グランが駆け寄ってくる。


「どうした!?」

「近づくな!」


 俺は叫んだ。


 ミリアの力が、無意識に周囲の魔力を引き込んでいる。

 このままでは――


「……嫌……私のせいで……」


 ミリアの目に、涙が滲む。


 恐怖。

 罪悪感。

 そして、制御できない力。


 ――かつての俺と、同じだ。


「ミリア」


 俺は、彼女の前に膝をついた。


「聞け。お前の力は、悪じゃない」

「でも……!」

「暴れるのは、力じゃない。恐怖だ」


 彼女は、はっと俺を見る。


「……呼吸を合わせろ」


 俺は、ゆっくりと息を吸う。


「地面の感触を感じろ。冷たい水の流れを思い出せ」


 地脈に、そっと触れる。

 無理に抑えない。

 引き剥がさない。


 ――整える。


 ミリアの呼吸が、少しずつ落ち着いていく。


「……見える……静かに……」

「そうだ」


 地面の唸りが、次第に収まる。

 焚き火の炎が、元の高さに戻った。


 沈黙。


 やがて、ミリアは力なく座り込んだ。


「……ごめんなさい」

「謝るな」


 俺は、はっきり言った。


「力を持つことは、罪じゃない。制御できない環境が、悪い」


 王都。

 教会。

 管理と隔離しか考えない世界。


「ここでは、違う」

「……本当に?」


「ああ」


 俺は、地面を叩いた。


「この山は、力を拒まない。ただ、正直なだけだ」


 グランが、腕を組んで言う。


「なら決まりだな」

「何がだ」

「ここで、力を制御する」


 彼はミリアを見る。


「逃げ続けるのは終わりだ」


 ミリアは、驚いたように目を見開き、そして――

 小さく、でも確かに頷いた。


「……頑張ります」

「一人で頑張るな」


 俺は言った。


「ここにいる限り、俺が見る」


 それは、約束だった。


 夜が、再び静かになる。


 だが、俺は分かっている。


 今のは、前触れだ。


 ミリアの力は、

 この山奥で、さらに目覚めていく。


 そして――

 いつか、王国に知られる。


 だが、その時は。


 俺は、もう逃げない。


 この居場所を、

 この少女を、

 今度こそ、守る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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