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第17章 黒き狩人の誕生

遥かなる星間。


虚無から蘇った“存在”は、ついに目指す星系へと辿り着いた。




その本能は驚異的だった。


遠大な距離を隔てながらも、強大な力を察知し――喰らうべき獲物として認識する。




「……もっと……強く……」




まだ幼児のように拙い思考しか持たぬが、本能が告げていた。


――強くなれ。喰らえ。支配せよ。




こうして“狩り”が始まった。




高い戦闘力を持つ存在を次々と襲い、打ち倒し、喰らう。


そのたびに能力を取り込み、己の力へと変換していく。


ただ力が増すだけではない。知性すらも成長していった。




やがて中級の戦士を喰らった時、彼の知性は十二歳の少年に匹敵するまでに至る。




最後の獲物は、この星系を荒らし回る宇宙海賊だった。


彼は唯一無二の能力――「多層障壁」を持っていた。


炎、雷、衝撃、毒、精神干渉……あらゆる属性に応じた障壁を幾重にも展開する防御の達人である。




突如として襲いかかった怪物に、海賊は即座に障壁を張り叫んだ。




「お前……何者だッ!?」




怪物はその言葉を繰り返す。


「……なにもの……? なに……もの……? ――俺は……誰だ?」




断片的な意識が渦巻き、やがて一つの答えにたどり着く。




「……名を与えよう。俺の名は――黒き狩人ブラックハンター。」




そう呟いた瞬間、無数の障壁が音を立てて砕け散った。


海賊の絶叫も虚しく、彼は喰われ、その力までも取り込まれる。




こうして黒き狩人は新たな力――障壁の術を得た。


そして知性はさらに進化し、より高次の思考に至る。




彼の胸に燃える憎悪は、ただ黄金のオーラを纏う少年を殺すという単純なものから、


「より強き力を求め、世界を支配する」という野望へと変貌した。




「もっと……強者を狩る。血と力を喰らい……俺は頂点に立つ。」




黒き狩人の旅路が、今始まった。







アウレリア城、閉ざされた空間。




ノーランの剣が振り下ろされる。


それはあまりに単純な縦一文字の斬撃だった。




「甘い」


ギュスタは片手で容易く受け流す。




だが次の瞬間、ノーランは体を捻り、回し蹴りを放つ。


狙いは胴。




ギュスタはもう一方の手でその脚を掴み、鼻で笑った。


「無謀すぎる。その程度では何も得られん。」




ノーランは不敵に笑う。


「……勝つための攻撃じゃありませんよ。」




その背後に、突如として黄金の光が閃いた。


――トゥーロ。


疾風の如き蹴りがギュスタの胸を打ち抜いた。




ドンッ!




ギュスタの体がわずかに揺れた。




「……!」


トゥーロが目を見開く。


「……何がおかしい!?」




ギュスタは腹を抱えて笑い出した。


「いや……良いぞ。よく連携した。私を少し侮っていたようだな。」




笑いを収めると、真剣な眼差しで二人を見据えた。


「だが――まだまだ弱い。もっと基礎を鍛えねばならん。」




「基礎?」


ノーランが眉をひそめる。




「そうだ。これから残された時間の八割を、肉体の鍛錬に費やす。」




「な、八割も!? なぜそこまで――」




ギュスタの声は厳しく響いた。


「最終的に行き着くのは“肉体”だ。


弱い体では大きな力を制御できん。


弱い体では長く戦えん。


弱い体では強烈な一撃に耐えられん。


強き者の根本は常に肉体だ。――それを忘れるな。」




二人は押し黙り、やがて真剣に頷いた。







訓練を終え、現実の世界へと戻る。


疲労困憊のまま、二人は城の大広間で食事をとり、


これから始まる苛烈な鍛錬の日々に思いを巡らせていた。







休憩室前。




扉を開けて出てきたギュスタに、ユキが声をかけた。




「ねえ、ノーランとトゥーロはどうしてるの?」




「順調だ。まだまだ学ぶことは多いがな。」




ユキは微笑み、首をかしげる。


「私も一緒に修行しちゃダメ?」




ギュスタはしばし無言でユキを見つめ――


「駄目だ。あいつらは二人で鍛える必要がある。」


そう言って、意味深な笑みを残し立ち去った。




「ふぅん……まあ、いいけど。」


ユキは小さく呟き、肩をすくめる。







歩き去るギュスタの脳裏には別の思考が渦巻いていた。




――あの娘……ただの小娘に見えるが。


その奥底から溢れる力は、私をも凌駕する。


何者だ……?


気を抜けば、容易くこの城を吹き飛ばすだろう……。




「……要注意だな。」




ギュスタの目は、一瞬だけ獰猛な戦士のそれへと変わった。

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― 新着の感想 ―
黒い狩人は非常に恐ろしい存在に見える。特に、敵を捕食することで復活し、進化する能力が印象的だ。
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