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第16章 予期せぬ出来事

アウレリア城の訓練場。


トゥーロとノーランは木剣を構え、同時にギュスタへと飛び込んだ。




「速い……だが無謀すぎる!」




二人の攻撃はすべて容易く弾かれ、動きは次々と崩される。


ギュスタは片手で剣を握り、余裕を持って攻撃を受け流していた。




ノーランは魔法を織り交ぜた連撃を放ったが、一つとしてギュスタには届かない。


ギュスタの魔力は桁違いに強く、弱い魔法はその場で掻き消されてしまうのだ。


トゥーロが横から切り込んだが――次の瞬間、二人は地面に叩きつけられていた。




「目で追うな。相手の意図を読み、存在感を感じ取れ。そうすれば不意の一撃も避けられる」




二人は立ち上がり、汗を拭って再び構える。


だが、ギュスタの視線はトゥーロに注がれていた。




「トゥーロ。お前はまだ本当の力を隠している。なぜだ?」




トゥーロは低く答えた。


「……その力を使えば、自分を制御できる自信がないんです」




「詳しくは知らん。だが今こそ試せ。万一の時は、私が止める」




その瞬間、トゥーロの体から黄金の光があふれ出した。


空気が震え、訓練場全体を圧力が覆う。


ギュスタは片手を上げ、静かに呟いた。




「ここは狭すぎる――【空間転移】」




一瞬にして、二人は外界から切り離された閉ざされた三次元空間――


時間の流れさえ緩やかに歪む「ポケット次元」へと移された。




「さあ、その力でどこまでできるか。ここで制御を学べ」




「……はい!」




剣と剣がぶつかる。光と衝撃音が閉ざされた空間を満たした。


その次元で、トゥーロは全力を出し切るまで苛烈なスパーリングを続けた――。







同じ頃、アルガンタ軍。


銀河腕の一角に展開していた司令部で、将が命を下す。




「戦士部隊および侵攻部隊、出撃せよ。目標は地球。優先度を二段階引き上げる」




アルガンタは地球からの抵抗を見逃さなかった。


黒き紋章を掲げた艦船が次々とハッチを開き、侵略の準備を整える。


内部には重装の兵士、魔導士、そして魔力を嗅ぎ分ける狩猟獣が収められていた。




彼らの使命はただ一つ。地球を完全に制圧し、抵抗を根絶すること。







一方、月軌道の遥か彼方。




かつてトゥーロに消し去られたはずの存在が――再び集まり始めていた。【復活】


不死の鳥フェニックスの細胞を取り込み、虚無からでも蘇る力を得ていたのだ。




やがて姿を成す。人型に近いが全身を甲殻で覆われ、胸には自然の鎧、顔は顎の動きに合わせて開閉する仮面で覆われていた。




その影はゆっくりと立ち上がる。


記憶は断片的だったが、黄金のオーラへの憎悪だけは鮮烈に残っていた。




彼はまだ未熟だったが、知性は急速に発達していった。


そして復活した肉体は進化を重ね、戦闘に最適化された。




彼はやがて理由も告げず、別の恒星系へと向かった。


その速度は――光をも超えていた。


アウレリア城の訓練場――。




閉ざされた「ポケット次元」での苛烈な鍛錬は、ついに終わりを迎えた。


黄金の光を振り絞ったトゥーロの意識は限界を越え、崩れ落ちる。




空間の歪みが静かに解け、彼らは現実へと戻った。


ノーランの前に姿を現したのは、片腕にぐったりと気を失ったトゥーロを抱えるギュスタだった。




「トゥーロ!」


駆け寄るノーランの声には、焦燥と心配が滲んでいた。




ギュスタは肩を竦め、淡々と告げる。


「心配するな。命に別状はない。ただ――力を解放したがゆえに制御を失い、意識を落としただけだ。まだまだ学ぶべきことが多い」




ノーランは唇を噛み、トゥーロの顔を見下ろした。


その幼さを残す顔立ちは、あまりにも重いものを背負っているように見えた。




ギュスタはさらに言葉を続ける。


「無尽蔵に力を垂れ流すだけでは意味がない。いずれ心身が耐えきれず、こうして倒れるか……あるいはもっと悪い結末を迎えるだろう」




そう言うと、彼はトゥーロの体をノーランに預けた。


「医務室へ運べ。休ませろ」




ノーランは仲間の体をしっかりと抱きとめ、頷いた。


その背に、再びギュスタの声が降りかかる。




「……今年、銀河規模の大会が開かれる。『銀河武闘会』だ」




「銀河……武闘会?」ノーランが振り返る。




ギュスタの眼差しは鋭く、しかし確信に満ちていた。


「勝者には王家から一つ、望みを叶える権利が与えられる。もしお前たちが本気で元の世界へ帰りたいと願うのなら――その舞台を目指せ。勝利すれば、王家に帰還を願い出ることも叶う」




さらにギュスタは付け加える。


「既にこの星の王家から、私にお前たちを大会まで鍛える許可は下りている」




「……!」


ノーランの胸に歓喜が走る。霧に閉ざされていた道が、突如として光を帯びた。




「やります! 必ず参加します!」




ギュスタはわずかに口角を上げる。


「ならば準備を始めろ。残された時間は少ない」




ノーランの胸には喜びと決意が満ち溢れていた。帰れるかもしれない――その思いだけで十分な力を与えていた。







同じ頃、遠く離れた地球。




巨大な格納庫では、アルガンタの侵攻に対抗するための宇宙船建造が急ピッチで進められていた。


鋼の梁が組み上げられ、魔導炉が据え付けられる。


戦士たちもまた限界まで鍛錬を重ねていた。




カインはエルフォフの山岳にこもり、精霊力濃厚な自然の中で修行を積んでいた。


炎の魔法は進化し、自律して敵を追尾する「魔焔の追尾弾」を編み出す。


炎は単なる破壊ではなく、多様な応用を持つ刃となっていった。




メイラは忍の術――隠密と「瞬歩」を極めていた。


一瞬で数十メートルを移動し、痕跡も呼吸も残さない。


彼女はまるで幽鬼のように姿を消した。




そしてリナ。


彼女の精霊への適性は日に日に強まっていた。


風を自在に操り、森の精霊の声を聞く。


その遠い祖先にはエルフがいたと言われる。外見には現れていないが、力は確かに受け継がれていた。




風を纏い、彼女は決意に満ちた瞳で鍛錬を続ける。


精霊の導きによって、より大きなエネルギーを扱い、多彩な攻撃を編み出していった。




その頃、各国の王たちは集まり、声明を発した。


「侵略は一国の問題ではない。惑星全体の脅威だ。我らは手を取り合わねばならぬ」




こうして「特務戦士隊」が正式に発足した。


多くの精鋭部隊が組織され、銀や金の位を持つ戦士が配置された。


彼らは惑星を守る最終の壁となるために。







時は流れ、二日後。




トゥーロは目を開け、白い天井を見上げた。


「……ここは……?」




隣にはノーランが座っていた。肩を撫で下ろし、安堵の笑みを浮かべる。


「やっと目を覚ましたな」




ノーランはギュスタの言葉、銀河武闘会、そして帰還の可能性をすべて語った。




トゥーロは信じられない気持ちで聞いていた。


だがやがて、その瞳に炎が宿る。




「……わかった。俺も出る。どんな戦いでも挑む。そして勝つ」




ノーランは拳を握る。


「そうだ。俺たちならできる!」




大会まで残されたのは八ヶ月。


それは長いようで短い。




だが二人の心に迷いはなかった。


この日から、彼らの生活はすべて鍛錬に変わった。




彼らの視線は、銀河の頂点と――帰還の道へと向けられていた。

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― 新着の感想 ―
良い章で、説明が多く、物語への没入感があります。
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