第10話 壊滅
「ローラーを出せ! 準備はいいな!」
四機の流雲と一機の竜雲の足元からローラーがせり出す。
「起動!」
ローラーが回転する。砂埃を巻き上げながら、五機のジェネシスが地面を滑る。
膝を曲げ、バランスを調整する姿はまるで雪山を滑り降りる人間のようだ。
速度は馳走時の倍近く。目標に向け、編隊が疾走する。
先頭の竜雲カメラが蟷螂を捕らえた。
地鳴りを立てながら進む巨体――角度を微かに変え、十字に鎌を振る。
「全機開脚!」
五十嵐の声に応じ、流雲四機は百八十度足を開き、ローターでバランスをとる。
竜雲は開脚せず、右足前、左足下。膝を深く折り腰を低くすることで、鎌鼬を寸前で回避する。そのまま左足ローラーにブレーキをかけ、右足で追い越し反転。次に右足にブレーキをかけ、左足をフル回転させ正面を向く。
「やらせんぞ!」
縦に振られた鎌を回転で避け、その勢いで手のブレイドを投げつける。
翅を広げた蟷螂に、風を切り裂くブレイドが触覚を切断した。
「シャーーーーー!」
蹌踉めく蟷螂。それを合図に、下がっていた流雲が前進する。
「煙を出せ!」
腰元から黄色い煙が噴射される。これはただの煙幕ではない。痺れ効果のある特殊煙だ。目眩ましとして十分な威力を持つ。
「てめえにゃレーダーなんざ付いてねえやな!」
煙に飛び込む竜雲。肘から肩にかけて展開するブレイドが金属音を立て、腰のブレイドを手に持つ。
「まずはコイツだ!」
両肘が火を噴き、展開ブレイドが煙を切り裂き蟷螂に襲いかかる。
ガキィン、ガキィン――防がれた音が二度。続けざまに手のブレイド二本を投げ、蟷螂の真横を通過し旋回。腰の大型刀を抜き、煙に身を隠して背後から斬りかかる。
「これで終わりだ!」
煙が晴れ、蟷螂の複眼が竜雲を捉える。
口を開き、うねる触手が姿を現す。だが竜雲は止まれない。
一気に刀を振り下ろす――鎌がそれを防ぐ。
顔を蹴り上げるも鎌に切断される。
「クソ!」
「シャアァァァァァ!」
二本の鎌が音もなく竜雲の胴体を切断。
火花が散り、真っ二つにされた機体が地に落下する。
衝撃が五十嵐を襲い、肺の空気が押し出され視界が歪む。
「クソが……」
目の前に禍々しい長い足が迫る。
「隊長!」
射撃音。複眼に銃弾が直撃し、蟷螂が微かに狼狽える。
刹那、翅が開かれ、煙が吹き飛ぶ。
助けに入った流雲は、すれ違いざまに切り落とされ、地面に叩きつけられる。
爆音。斬られどころが悪く機体が粉々に爆散した。
「てめえ! よくも五十嵐隊長と近藤さんを!」
「待て椎名! 焦るな! 隊列を!」
茶髪の青年がブレイドを引き抜き突進する。
だが翅による突風で阻まれ、ブレイドを構えたまま動けない。
死神の鎌が振り下ろされ、五十嵐部隊はクラスAエネミーにより全滅。
「クソっ……。クソが!」
地面に転がるジェネシスを蟷螂は見ることはなかった。
運よく生きた五十嵐は、遠ざかっていくその背中を睨みつけながら涙を流す。
死者は二名となった。




