ホツマツタヱオノブ(奉呈文) ~序 の 上~
『ホツマツタヱ』奉呈文(はじめに的なお話)スタートです。
『‥‥‥』や『――』が多いかと思います。
ひとりノリツッコミみたいなものが多かったりするので多用してます。
読みづらかったらすみません。
僕は扉を開いて、逸る気持ちも抑えきれず土蔵に踏み込んだ。土蔵の中は真っ暗で‥‥‥でも奥の方がホワ~ンと明るくなっている。丁度キャンプで使うランプで辺りを照らしているような明るさで、その明かりが揺れている。
大きくなったり小さくなったり――人が懐中電灯を手に何かを探しているかのようなその揺れに、これは完全に泥棒だと思い込んだ僕は、焦りも露に奥に向かって雑然とした通路を走り出した。だって明かりはまさに『魔導書』のある辺りで揺れているから。いてもたってもいられなくて、危険とかおかしいとか考え付きもしなかった。
通り慣れているおかげで通路の周りに散らばるガラクタに蹴躓くこともなく、なんとか『魔導書』に辿り着いた。そして僕が見たのは不思議な、信じられない光景。
――『魔導書っぽい冊子』が『本物の魔導書』にクラスチェンジしてる――
そうとしか言えない。だって冊子が自ら光っているのだから。その上、不審な声がさっきよりもずっとはっきりと聞こえてくる‥‥‥その冊子から。
意味不明で。ただただ呆けて『本物』となった魔導書を見つめてしまう。そんな驚き固まる僕をお構いなしに、発光する光は脈動するように強くなったり弱くなったりを繰り返して、聞こえてくる声も徐々に大きくなっていく。
何をしゃべっているのか‥‥‥昔の言葉?
分かりそうで分からない『音』が魔導書から溢れてくる。明滅がどんどん早くなり、次の瞬間、光が一気に強くなって――
「うわっ!?」
咄嗟に右手を上げ、目を庇う。それでも眩しくて思わず目を閉じる。音は騒音レベルで朗々と響き渡り、僕の脳を直接攻撃してくる。
グルグルと渦巻く光と音の洪水。眩暈を起こすほど意識がグチャグチャにかき乱される。感覚が敏感に鋭くなっていくのを止められない。光が全身をグサグサ刺してきて痛みを感じるほど。鮮明な声が一音ごと鼓膜をバシバシ叩き揺らして‥‥‥
何とか立っていたけど、そろそろ限界で。
スーッと血の気が引き、意識が遠のき始める。
と同時に、一段と強くなる光と音。
次の瞬間、確かにそれに飲み込まれた――そう感じた。
気絶寸前で、でも徐々に感覚が戻ってきた。気持ちの悪い眩暈も治まっていく。
ヘロヘロ状態で立ち尽くしていた僕。恐る恐る目を開けて――再び驚き固まった。
見たことのない室内。何処なのかも分からない。あえて言うなら飛鳥時代とか、それ以前かも?古墳とか弥生とか??実際にその時代のことなんか詳しく知らないのだけど、めっちゃ昔っぽい雰囲気とか気配が漂っている。
目の前には男の人が座っていて、僕はその人の真後ろに立っていた。その男の人も日本武尊とか取り扱っている歴史系・都市伝説系の書籍や番組や動画に出てきそうな髪型や服装で(背中側しか見えないけれど)、少し高い特別感のある場所に座っている。でもって着ているものが昔風とは言え少し豪華で、その頭には冠的なものものっかっていて‥‥‥うん、これはきっと偉い人だ。
そして前の方からハッキリと聞こえる知らないじいちゃんの声。いや、知ってるな‥‥‥ずっと魔導書から聞こえてきていた声だ。そう思って少し離れたところにいるじいちゃんに視線を向けると、姿勢正しく座って、僕の目の前にいる男の人に何かを朗々と語っている。
色々意味不明で。
そもそもここはどこなん?そんでもって僕はどうなった?
・・・、え、待って?僕死んだ??
霊魂的な???
だって僕がここに立っていても誰も気づいていないみたいで。
あ、もしかしてラノベ的な展開とかそういうこと?
でもこういう場合、神様とか死神とかそういうのが迎えに来るような。しかも幽霊として現れるのって、自分にとって大切な場所とか未練のある場所だよね?こんな知らない場所に出るとかないわ~‥‥‥って、イヤイヤ、そうじゃない。
死んだ覚えはないし、僕は土蔵に入っただけで。
確かに魔導書が『本物』になっちゃった、みたいな現象は目撃したけど。あれだってなんだったんだ?
ヤバイ、めっちゃ混乱してる。こんな状況でラノベの展開かもなんて一瞬でも考えられた僕、ある意味冷静だし『僕』らしいかもしれないけれど!
‥‥‥落ち着こう。
まずはここは何処なのか、僕はどうなってしまったのか、ちゃんと見極めなくちゃ。
動揺しまくりの心を抱えたまま、僕は目の前の光景に意識をしっかり向けることにした。
何か答えがあるかもしれないし、なにより無事に元に戻りたいから――
相変わらず朗々と響く声。じいちゃんなのにいい声だ。でもやっぱり意味が分からない。喋ってる言葉が僕の知る『日本語』じゃないって言うか、古めかしくて難しい言い回しや言葉遣いっぽい。ところどころ、意味が分かりそうな言葉があるんだけど、前後の繋がりも不明で文章として理解できない。
と、そんな風に思っていたら
「アメツチノ ヒラケシトキニ
フタカミノ トホコニヲサム‥‥‥」
『天地開闢により始まりましたこの国は、長い年月をかけ神々が整えてまいりました。しかし6代目オモタルノミコトが治めていたころには、まるで天と地が分かれたように朝と民との間に隔たりができ、神の教えが民に伝わらなくなっていました。そのため国は荒れ混沌とした世になってしまったのです。そのような状況を打開し、再び天の道へと民を導くため7代目イザナギとイザナミの両神が職を引き継ぎ、神器である瓊と矛をもってして、世の中を治めていきました。』
‥‥‥翻訳機能かな?
脳内にまるで同時通訳のように、じいちゃんの難解な言葉が僕にも分かる言葉で聞こえ始めた。内容はだいぶ堅苦しい話ではあるけれど。
っていうか、じいちゃんの口から出ている言葉の量と、翻訳?されてくる言葉の量、違くない??明らかに翻訳の方が長すぎ。
な~んて思ったら、なぜか頭の中にフワッと『掛詞になっている』『言葉の意味を何重にも掛けている』などなど注釈的なものが流れ込んできた。
ご都合主義か!
親切設計だな!ありがとうございます!!
だったらもっと話をまとめて、現代高校生でも簡単に理解できるように語ってくださいませんかね!?
だってこんな状況で堅苦しく語られても頭に入ってこないよ、マジで。とにかく知りたいのはこの状況の答えなわけで。
何ならギュッと要約して、大事なとこだけ語ってくれてもいいくらいなのに。
そんな僕の心模様を知ってか知らずか、まぁお構いなしなんだろうね――誰とは言えないけど――『語り』は続く。
ありがたくも?僕の願いは聞き届けられ、『現代高校生でも簡単に理解できる程度』に砕かれた言葉で。
「イザナギ様、イザナギ様のお子のワカヒコ様――のちのアマテル様です――が治める頃にはすっかり神の教えが広がり、民も増えました。そしてこれからも豊かに平和に治めていくためにと『瓊』と『矛』に『御鏡』を加え、三種の神宝としてお子のオシホミミ様へ、そしてお孫のニニキネ様へと継承していきました。国は益々安寧に豊かになっていきました。」
‥‥‥ちょっと待て。
今の話って、なに?
イザナギノミコト、イザナミノミコトのお子様の話っぽいけど――
確かに二柱は日本神話に国生みの神様として登場する。天沼矛で海をコ~ロコ~ロとかき混ぜて、引き上げた先から落ちた海水でオノゴロ島ができて~とかいうやつ。
だから二柱には子ども(?)が何柱もいるけど、こんな風に『めっちゃ後継者です!!』って感じの神様なんかいた??あえて挙げるならアマテラスオオミカミ、ツクヨミノミコト、スサノオノミコトかなぁ?
で、今回出てきた神様の名前は“アマテル”様。しかも二柱の子どもで、もともとはワカヒコって名前らしい。間違いなく男神だよね。
・・・、いったい誰さ!?
響き的にはアマテラスオオミカミ‥‥‥っぽいんだけど。
え?
アマテラスオオミカミってイザナギノミコトが1柱で、左目洗って生まれたんじゃないの!?しかも男!?!?
いやいやいやいや、そんなバカな!
あまりの話の内容に、一人パニック状態の僕。でもじいちゃんの言葉は止まらない。むしろ溢れる思いを止められないというように益々熱く語っていく。
ここでもう一段階、翻訳後の言葉が僕のなじみの言葉に砕ける。もしかしてパニックを起こしている僕にでも理解できるようにという配慮ですか?だってじいちゃんがちゃんと発している方の言葉は相変わらず難解な言い回しをしているけど、僕の脳内に展開される翻訳は、僕に合った軽めの言葉をチョイスしてくれているから。親切設計、マジありがとうございます!!(ヤケクソ)
「私、オオタタネコの先祖はオオモノヌシです。そして祖父のオミケヌシへと続いてきたわけですが、そのオミケヌシが宮に勤めていた当時、とんでもないことをやらかしてしまいました。
原因は第9代開化天皇の犯した禁忌『己が母犯せる罪――母との結婚はタブー』です。開化天皇は先の天皇であり、自身の父親でもある孝元天皇の妃イカガシコメ様を自身の妃に迎えてしまったのです。
祖父は非常に生真面目な男だったので、そのことが許せなかったのでしょう‥‥‥憤り、キレ散らかして開化天皇に物申してしまったのです。
が、よく考えてみれば‥‥‥いえ、考えるまでもなく相手は『天皇』、自分とは立場も身分も違う尊いお方。そんな存在に対し、いくらタブーを犯し天の道に反しているからといって、全力で諫めるべきではなかったと深く悔やみ、畏れ多いことをしてしまったと心から反省した祖父は職を返上し、民に紛れ、隠れるように余生を過ごしました」
おおぅ‥‥‥
天皇に物申すって、命知らずにもほどがある。
でも、義理とは言え母親と結婚か~、確かに『ない』わ~。
人間関係ドロドロ系の作品ならネタとして『あり』なのかもしれないけど、僕は無理。
目の前の人たちもタブーとして認識しているみたいだし、完全ギルティだろう。オミケヌシさんがキレちゃったのもしょうがない気もして、同情を禁じ得ない。
で、そのオミケヌシさんの孫が今語っているじいちゃん、オオタタネコさんで。民に紛れてしまった人の孫ってことだから、オオタタネコさんは僕と同じ一般人ってことになるけど。その割には暫定『偉い人』とこうして面談しているわけで‥‥‥?
でもその理由はオオタタネコさん自ら、すぐに説明してくれた。(まぁ僕にしたわけではないけども。)
「当然父も私も祖父の悔恨の想いは良く分かっていましたので、同じように民の一人として暮らしてきたわけですが――この度、そのような身の上の私を宮に呼び戻し、こうして再び仕えることを許してくださったこと、心から感謝しております。
歴史は繰り返すと言います――いつかまた民の心が乱れ、混沌に飲まれ、苦しみ、結果として国が傾くことがあるかもしれません。
そんなときどうすればよいのか、心の在り方など対処法を少しずつ書きため、神の真の教え――『ホツマツタヱ』として40篇にまとめました。後世まで残すべき風習や習慣、言霊についてや神々の歴史など、古からの教えが詰まったものなので、きっとこれからの景行天皇の国の運営にも役に立つと思います」
そう言ってオオタタネコさんは目の前に供物のように台――たぶん三方の古いバージョンだと思う――に積まれた何本もの巻物を、僕の目の前に座る偉い人(確定)こと景行天皇に『こちらです』と促すように手で示した。
わぁ、目の前の人天皇だったー、そっかー、‥‥‥って、天皇!?
景行天皇ってちゃんと歴史の教科書とかに出てくるよね?
え、ここ過去なの??
突然自分が何処にいるのか気づかされた僕は、驚き過ぎてぶっ倒れそうになった。そんな僕を置いてけぼりに、語りはまだまだ続く。
「これを読めば次々と波が起こるように、その教えがどんどん心に浸透し磨かれていくことでしょう。その教えを生かし国を営めば花が満開に咲き誇るような美しく豊かに栄えた世となるでしょう。
砂浜の砂はいつか数え終わることもあるでしょうが、ホツマの教えは後の世まで尽きることなく、ずっと語り継がれていくべきものです。ですので――
三輪の臣、オオタタネコが234歳のときに一念発起し、謹んで執筆いたしました。この内容が間違いなく素晴らしいものだという証として、私の花押も添えてあります。」
······いやいやいや。
にひゃくさんじゅうよん!?
なにその年齢、ご長寿過ぎやしませんか!?!?
意味分からないよ!!
思わず全力で(心の中でだけど)突っ込んだ。
ただツッコミたいのはそれだけじゃない。
砂の数、数え終わるとか不可能じゃね?そもそも誰が数えようと思うのさっ!?
語る内容が壮大すぎるって!
『ホツマツタヱ』の最初の部分、『奉呈文』の途中まででした。奉呈文、長いので分けます。
語り手はオオタタネコさん。
それを『僕』が聞いている形で進んでいきます。
オオタタネコさんの語る相手は景行天皇ですので仰々しく難解な言い回しで語っています。
そのままでは分からない内容を『僕』の脳内のフィルターを通すことで、今どきの表現とか言い回しに変換されていく‥‥‥そんな感じです。
『僕(作者)』がポンコツなので、友達に説明しているような、砕け過ぎた言葉に変わっていきます。現代の表現や物の名前や現象に変換されていくことが多いかと思います。
読みづらかったり、ツッコミどころ満載かと思いますが、あくまでも素人翻訳(?)ということでお許しください。