4.エミーナ嬢の企み
~エミーナ嬢視点
なんなの?この子。
エルドレッド様の爵位と公爵家の財産に惹かれて婚約者になったわけじゃないの?
今までエルドレッド様に近づいてきた女はエルドレッド様の声を聞いただけで引き下がっていったわ。
この女、一筋縄じゃいかない。
なによりも、エルドレッド様のお母様が一目で気に入ってしまったじゃない。
おかげで私は玄関に置き去りにされたわよ。
というより、今後も婚約者など現れずに、幼馴染のこの私がエルドレッド様の婚約者になるはずだったのよ。
なんの手も汚さずに公爵夫人の座が手に入るというとても素敵な計画だったのに、あの女はなんなの?
私の家の爵位はそうよ、伯爵位だけどこのままエルドレッド様の婚約者が現れなければやむを得ず私に白羽の矢が立つ予定だったのよ。
黒子みたいなもの?
冗談でしょ?あの声で愛を囁かれたら大爆笑よ。
ピロートークなんかできないわね。
それを特に気にしてない?鈍感にも程があるわよ。
*****
ルイス公爵家の昼食は非常に美味しかった。
今夜のうちの食事、美味しく食べられるかな?食べられなかったらシェフに申し訳ないなぁ。
エルのお母様、可愛い方だったなぁ。
お母様というよりもなんだか『お友達』のような―――腕を組んでいたからかな?
エルの家族はエルの声の事気にしてないんだなぁ。
私が気にしてるかどうかすらも聞かれなかった。
エミーナ嬢からはいろいろ質問されたけど、どれもどうでもいい質問だったなぁ。
エミーナ嬢よりもエルのお母様の方がお友達って感じがしたなぁ。
エミーナ嬢から感じたのは、敵意。
……まさかねぇ?
私には価値はないわよ~。
とすると、エル?そうね、彼女は幼馴染らしいけど公爵家と伯爵家だからね。
うーんと私みたいにエルの声を気にも留めないでエルの婚約者になるという人間がもしもいなかったら―――お父様とお母様はエミーナ嬢をエルの婚約者にと考えた可能性もあるわね。
それかしら?
可能性があるくらいで恨まれたくないわ。
あ、エルの声を知ってるから可能性も結構あるのか。
その可能性に賭けるより、早く嫁入り先を探した方がいいと思うのは私だけだろうか?
不確定な事に賭けるなら、早く嫁入り先を探さないと行き遅れって社交界で後ろ指を指される羽目になるけど?
ああ、『嫁入り先を見つける<エルの婚約者になる(不確定)』 だから、彼女の頭の中では社交界でエルの伴侶としてトップに君臨するような野望が……。
私だったら不確定要素に賭けたくないなぁ。
どこにでもいるんですよね。こういう困ったちゃん。