白い雪と紅い華
起きたら母親が死んでいた
といっても私が殺したのではないようだ
眠っているようだが肌の冷たさと色白さがそうではない事を物語っている
外を見ると雪がしんしんと降っている
私は灰色のワンピースみたいなパジャマのまま裸足で外へ出た
「いってきます」
ただそれだけを言って家を去った
まずは近所の幼馴染へ行った
徒歩1分もかからない所にある
彼も死んでいた。まるで寝ているかのように
次は一番仲のいいあの娘のところ
40分間私は歩いた。歩いて歩いてやっと着いた
なぜか彼女も死んでいるという確固たる確信があった
そのまま鍵のかかっているはずの玄関のドアを開けて私が知らないはずの彼女の部屋へ迷うことなく行く事が出来た
彼女もやはり死んでいた
いつもの元気に輝いていた瞳は今はまぶたの中に隠れてしまっている
無性にその眼を抉りたいと思った
けれどそれは止めた勿体無いものね
そこに嵌まってこそその眼は輝くんだから
私は彼女のお気に入りだった懐中時計を彼女のバックから抜き出した
チッチッチッチッ
私もこの時計の時を刻む音が好きだった
「じゃあ、これ貰っていくから」
彼女が聞いたらきっと怒るであろう台詞をいって彼女の家を出た
いろんな人の家に行った
何件も何十件もこんなに沢山の家の場所を私は知っていたのだろうか
結局みんな死んでいた
彼女の懐中時計は11時30分を指している
雪はまだ止む気配がない
そういえば足から血が出ている
私の通ったところが紅く道のようになっていた
何故かそれがとても嬉しくて私は嗤った哂って笑って哂って笑って嗤って
くすくすくすくすきゃはははははははは
あはははははははははははくすくすくすくす
きゃはははははははははははあははははははははははは
私は回る廻るまわるくるくる回る
血が撥ねて周りの雪が深紅に染まった
「何やってんの」
振り向いたらあの娘がいた
「蒼!一緒に踊ろう!」
回るのは2人に増えて再び私はくるくる回る
もう1人じゃないね
「蒼」
「何?」
「ずっと一緒に居てくれる?」
ねぇ良いって言って?
「良いよ、ずっと一緒に居てやる」
ありがとう
本当にありがとう
ずっと一緒だよ
どさっ
雪の上には新しく真っ赤で可憐な華が2つ
その隣には銀色に輝いていたであろう紅いナイフと
時を刻みつづける美しい懐中時計があった
チッチッチッチッチッチッーーーー




