俺が思う、一番運が良い事
「お前の願い、なんでも叶えてやる」
学校の屋上。
神様はテンプレさながらのモジャ髭を遊ばせながら、舞い降りて来た。
「お前の願い……」
――なんでも叶えてやる! 魅力的な提案に心躍る。
凡人で大した努力も、恵まれた才能も無い俺が、こんなビックイベントを体験できるなんて!
絶対、失敗しない願いをしてやるぞー!
そう意気込み、最初は金、恋、特殊能力、はたまた第二の人生なんて思いついたが、どうも面白みがない。
どうにか一捻りした願いを叶えたい。
そうして俺が辿り着いた願いは……
「俺が思う、一番運が良い出来事に遭遇させてくれ!」
神様は何か納得したように手のひらを打つ。
「なるほど、理解できた。それでは失礼」
白いモヤに包まれて消えてしまう神様。
特に変化がないなと不思議に思いつつ――残された俺は山あり谷ありな余生を過ごした。
まあ、普通の人生を過ごしたわけだが……願った願いと違くない!?
せっかく死んだし、直談判してやろ!
どこまでも真っ白な空間を幽体になった身体で進み神様の前に立ち塞がる。
「話が違いますよ神様ぁ! 一番運が良い出来事はどこへいったんですか!」
一メートルほどに伸びたモジャ髭を櫛で解きながら神様は言った。
「ワシも不思議におもっとった。お前のようにつまらん奴がランダム願い叶えてやろう企画に引っかかるなんてな……」
開口一番に侮辱された俺は一旦怒りを抑え、一言。
「……結局、願い叶えられてないじゃないですか!」
ふふ、と笑いを堪えきれず笑った。
「叶えられているんだよ。お前が思った、一番運が良い出来事はワシと出会うことなんだから」




