表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

5 全開放!

「じゃママ、行ってくるね!」


「はぁ〜い 千夏、今日も素敵よ(笑) 試験頑張ってね!」


 メガネを壊されて1週間が経った。なぜ泣いてしまったのか……今は冷静に分析することができる。まず驚いたのだ……自分に向けられた悪意、そして、モノを故意に壊すという愚かな行動に。そして、そのメガネは……姫さんから貰った大切なもの、プライスレスなものだ。


 それを理解するまで1週間もの間を要した。前の学校の親友にも相談をした。そして千夏は今日、完全復活を成し遂げたのだ!


「そうよね! もう魅力全開でいくね!」


 あのメガネは「オーラを消すメガネだよ〜」って姫さんからもらったメガネ。千夏は超美人だからって姫さんが掛けていたものをその場で譲り受けたものだ。だが、もう壊れてしまった。なので魅力はもう……隠さない。




 学園までは歩いて15分ほど距離。髪を棚引かせながら颯爽と歩く。学校の近くになると学園生がたくさん歩いている、男女問わず多くの視線を感じる、が、お構いなしに歩く……もう隠さない。注目を浴びながらも学校に着き、教室に向かう。





「おはよ…………千夏? なの?」


「おはよう ひな もちろんワ・タ・シ よ(笑)」


 ひなにウインクしてみせた。これが本来の私、もう迷わないし隠さない。


 ユーミや音羽もやってきて試験前に雑談をしている。その時であった。


勅使テシちゃん…………ホントにごめんね でもあれ、壊して正解じゃね! そっちの方がテシちゃんマジ可愛いし!」


 千夏を見て早速あの二人組が謝りにきたのだ〜田沢と柳沢である。反省をしてないのは掛けられた言葉でわかる。


「そうね」


 千夏は席を立った……そして力の限りを尽くして二人にビンタをした。その行動にはビンタをされた二人も、周囲のクラスメイトも凍りついた……時が止まったかのようだ。


「お前らは今後絶対に許さない! けど、今ビンタしたからメガネを弁償しろとは言わない 分かった!?」


 クラスメイト全員に聞こえるように千夏は声を張り上げた。


「メガネは弁償するからさ……やっぱ許してよぉ……」


 田所はどこまでもふざけた奴だった。


「ねえ、田所! あなた壊したメガネの金額調べてからモノ言いな」


 千夏はそう言うと静かに自分の席に座った。紗理奈と会話した後にあのメガネの値段について調べたが……あのメガネ、ケリーマリーというブランドでシュウ・ヤマモトがデザインを手掛けた超高級品。そして、アイドル、中川ひめ限定モデルである。定価は88万だが、中川ひめが直接掛けてたもの、プレミア価格が付くので高校生が買えるような金額のものではない。


 その金額知ってか知らずか、ビンダされた二人は静かに自分の席に戻っていった。それと同時に始業のベルが鳴る。



「おーい、みんな、席につけ! 試験を始めるぞ! まずは英表からね!」


 先生は一度千夏に目をやった。試験終わりに職員室に来い、という合図なのだろう、顎を振られた。


 そして2年一学期の中間試験が始まった。



△△△△△△△△△△△



 試験終了後、千夏は職員室に向かった。職員室に行くと、大鷹先生が手招きをしている……職員室の更に奥の部屋に呼ばれている。


「失礼します」


 職員室の奥の部屋はどこか尋問室のような作りであった。何も無い伽藍洞な部屋に机と椅子、そして机の上には何故か電気スタンドという……。


 千夏は先生と向い合せに座った。ここで……カツ丼食べてみたい。


「勅使河原さん、試験期間中なのに悪いね。もう体調はいいのかな? 心の体調も含めて……」


「はい。もう治しました(笑) 1週間もお休みしちゃってごめんなさい」


「勅使河原さんが謝る事ではないよ。まあ……なんだ……ユーミから色々聞いてるから……」


「そう、ですよね。大丈夫です。今朝、解決しましたので……ビンタで(笑)」


 大鷹先生は少し引きつった顔をしている。


「なんだろ……気の強いタイプ………なのかな? 勅使河原さんは……」


「先生! 言葉を選ばなくても大丈夫ですよ。気が強いとか、よく言われますから(笑) でも……そうでもなかったです。メガネ壊されてビックリして泣いちゃいましたから……」


 先生には今回の出来事の詳細は伝えなかった。きっと把握をしているだろう。それよりも、等身大の自分を印象付ける事に終始した。決して気の強いお嬢様ではない事、ふざける事もある普通の高校生だと言うことも……。


 そして会話はメガネの事に移っていく。


「ところで、あのメガネって、いくらくらいすんだ? 随分と高価だと聞いているが」


「先生、それ、聞きます?」


「ま、参考にな」


「そうですね〜具体的金額は決められないので……購入するとなると、私が持ってるサックスくらいはすると思います」


「マジか…………」


 先生はサックスの相場など知っているのだろうか……きっと知らないだろう。ましてや千夏所有のサックスは最高級品である。


「ま、高いってことです。でもいいんです、元々頂いたものですし。弁償しろって言っても同じものは手に入りません。 だから強制終了ですよ、こんな問題(笑)」


「そうか……わかった。ウチはクラス替えがないから、あの二人とは2年近く同じクラスだから……なにかあったらすぐに私に伝えてくれ!」


「頼りにしてますっ! センセ(笑)」


 千夏は可愛さ全開の笑顔で先生に微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ