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追悼コンサート

 次の日、放課後前の緊急ホームルームで彩理の死についての発表がなされた。彩理のお母様から学校へ連絡があったようだ。このまま退学という形でフェードアウトしようと考えていたお母様だが、少しでも彩理を慕ってくれる友人がいたとしたら、このままではいけないと思ったという。千夏はスマホの写真を見返した。


 クラスに動揺が渦巻いた。


 合わせて、千景が頻繁にお見舞いに行っていた事が彩理の支えになっていたことや最期は笑顔でこの世を去った事も伝えられた。千景との個人的な関係は語られなかったが、きっと先生は知っているであろう。




「千夏……部活の前にちょっといい?」


「……うん」


 ホームルームが終わり動揺が覚めやらぬ中、目を真っ赤に腫らしたユーミが千夏を呼び止めた。ユーミは彩理と千景の個人的な関係も知っているのであろうか、発表があってから涙にくれていた。


「私……彩理の為に、追悼コンサートやりたい。どこでもいいの、学校内でも、何処でも……私が出来ることってそれくらい…………だから」


「……分かった。協力する」


 千夏も追悼コンサートの開催を検討していたが、コンクール本選を控えた中、それは言い出せなかった。曲の準備、スコア手配、練習……吹奏楽部のメンバーには大きな負担になる。


「彩理は……フラワーが好きだったから……フラワーの曲と、コンクールの課題曲なら何とかなると思う。私、やる!」


 ユーミの目に固い決意が表れている。ここは全面的に協力すると、千夏も決意をした。フラワーとは誰もが知っているアイドル声優ユニット〜ひめさん達の事である。二人組の相方、武田ゆりさんとはカトレア学院の先輩で、今も在学中であるが話したことはない。


「フラワーなら、ひめさんに相談してみる」


「千夏、ありがとう…………」




 部活終わりにユーミと打ち合わせをして、話はトントン拍子で進んだ。ひめさんにはSNSで事の次第を連絡、今夜電話を貰うことになっている。コンサート会場は学校の体育館を想定、曲目は4曲〜フラワーの楽曲を3曲、コンクール課題曲1曲、フラワーの楽曲は以前吹奏楽部で演奏した曲をチョイスした。これでコンクールへの影響を軽減できる。


 学校からの帰り道、相変わらず雨が降っていた。最近は雨になることが多い。今週はずっと雨模様の天気予報である。



△△△△△△△△△△△△△△△△△△



「千夏、今大丈夫?」


「はい。ひめさん。ご連絡ありがとうございます」


「そんな……千夏は私の大切な仲間でしょ! 私が出来ることは全力でする。それに、私にとっても、大切なファンなんだから」


 千夏が家に戻ると早速ひめさんから連絡があった。


「…………はい」


「彩理さんだっけ? ゆり推しってことは私と同じね……そうそう、ゆりにも連絡しといたから。そしたらお母様へ手紙書くって……あの子らしい……だから大好きなんだよね」


「私、ゆりさんとは面識なくって……ご迷惑では……」


「……ゆり、泣いていたわ。千夏からの詳細メール送ったの……そしたら、電話かかってきて……」


「ありがとうございます、ひめさん」


 ひめさんは少しタメを作り話し出した。


「あのね、千夏。私の力なんて本当に小さいものなの……だって、世間には、私達のファンで、私達の助けが必要な人達ってたくさんいると思う。全員にしてあげたいけど……それは不可能。だからせめて、私の周りの人を全力で助けたいって思ってる。これは私のエゴ、だから逆に千夏が頼ってくれることが嬉しいし、感謝してる…………ありがとう、千夏」


「そんなぁ…………」


 千夏はひめさんからの言葉に胸が詰まった。厚かましくもお願いしている立場なのに、感謝の言葉。


「泣かない! 涙は追悼コンサートで流しなさい。私もゆりも今回は参加できないけど、近いうちに私も彩理に会いに行くから…………」


「ありがとうございます…………」



 ひめさんと会話をした2日後に千夏宛の荷物が届いた。ゆりさんとひめさん直筆のお母様への手紙と、ひめさんが作曲した未発表曲のスコア、彩理へのメッセージ入りフラワー2人の写真。千夏は人との出逢いとその絆に感謝した。

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