26文化祭始まる
「千夏! 会いたかった!」
「紗理奈!」
文化祭1日目、千夏は紗理奈と学校の正門前で待ち合わせしていた。今日は出番がない。紗理奈と1日文化祭を楽しむ事になっている。旧友との再開に大きな喜びを感じている。
「千夏! なんか大人っぽくなった? オトコいると違うねー(笑)」
「だから居ないって!」
「こんな可愛いのに、放流されてるわけ無いっ!」
「まあまあ、それは良いから! とりあえず案内するから」
最近、紗理奈と話す時はこの手の話が多い。お決まりのようになっていた。千夏はまず、自分の教室に案内をした。2年B組は縁日を催している。
「へー、縁日じゃん! 楽しそう! でもさ、この輪投げとか綿あめとか、安すぎない?」
「紗理奈、ここはカトレアとは違うの 経済の仕組みを学ぶために利益を追求するような事はしない、というか出来ないの」
「これ、ざっと見て赤字よね。カトレア以外の文化祭でももう少し…………でも楽しんじゃお!」
紗理奈は流石である。将来、経済アナリストになりたい、と思っているのは伊達じゃない。お得と感じたのか、爆裂に遊び始めた。
そして千夏に気付いたユーミが近づいてきた。
「あれ? 千夏 お友達?」
「うん、前の高校の………紗理奈ちゃん」
「山科紗理奈です」
「あれ? 紗理奈?」
「もしや、由美?」
なんと、紗理奈とユーミは知り合いだと言う事が分かった。遠縁にあたるそうで、ユーミが東京に旅行に行く時に何度か紗理奈の自宅に泊まっていたらしい。同じ苗字だな、とは思っていたが世間とはなかなか狭いものである。
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千景はグラウンドの芝生に座っていた。文化祭は登校日になっているので学校にきてみたが、1人で各クラスを回ることもできない。グラウンドではサッカー部主催のキックターゲットが行われていて、結構な盛り上がっている。
「ねえ、アナタ、1人なの?」
千景の後ろから声がした。立ち上がって後ろを向くと、そこには大きなメガネを掛けた女性が立っていた。ジーンズにスニーカー、白いブラウスが眩しい。
「はい……」
「暇なの? なら私に付き合ってくれない! 私、あれやりたいから! 」
どうやら、キックターゲットがやりたいみたいである。サッカー経験者なのであろうか。
「……分かりました」
半ば強引に手を引かれキックターゲットの会場にやってきた。女性は受付を済ませてニコニコしている。
「そう言えば、アナタお名前は? 私は……伊集院姫っていうの。ひめさんって呼んでね(笑) 東京の大学行ってて、ワケありで今日は文化祭遠征!」
「河原千景です」
「ならチーくんね、よろしく。見ててね! 私、これでもサッカー経験者なの! きっと……パーフェクト出すわ」
とても距離が近い。そして明るくお喋り。メガネでよくわからないがきっと美人さんである、それも千夏級の……。
そしてひめさんの番になった。持ち球は10球、ターゲットはサッカーゴールを9分割してあり、2球外したら即終了である。今までの最高は4枚抜きのようだ。
「千景〜見てろよー」
ひめさんはそう言うと…………次々とターゲットを抜いていく。1枚、2枚、3枚…………。そして、2球を残して8枚をあっという間に抜いてしまった。
「どうよ! でも最後のターゲット小さ過ぎね(笑) 抜いたらハイタッチしよーぜ! 諸君!」
ひめさんのパフォーマンスもあってか、キックターゲットの周囲に人だかりが出来ていた。
「いっくよー! ほれ!」
掛け声と共に放たれたボールは真っ直ぐ小さな真ん中のターゲットに向かい、そしてターゲットを打ち抜いた。
「いえーい! ほらな、千景! お姉さん凄いだろ」
誰彼構わずハイタッチをしている。そこに……ユーミと千夏が現れた。そしてもう1人、知らない顔である。
「ひめさん! 何してるんですか!」
「あ、ごめん……紗理奈。だって、楽しそうだったんだもん…………」
「とにかくこっちへ!」
大きな声援に応えながらも……ひめさんは知り合いと思われる女性に手を引かれ、先程千景が座っていた人気のない芝生へ移動していく。もちろんユーミと千夏も一緒である。千景も芝生の方へと足を向けた。
「千夏! 久しぶり!」
「ひめさん!」
「やっぱ可愛い! 千夏大好きっ!」
ひめさんは千夏とハグをしている。その横でユーミが千景を手招き、合流することになった。
「改めまして、私、伊集院姫と申します。千夏と紗理奈の先輩で今は大学生! 今回は千夏のコンサート飛び入り参加する為、熊本にやって参りました!」
「ひめさんって…………あの…………」
ユーミが口を開く。千景も……気付いた。
「そうなの、声優でアイドルの中川ひめさん」
「千夏、元アイドル声優ね! 基本的には引退してるんだから一般人! 間違わないように(笑)」
千景は興奮した。かつて声優アイドルユニット「フラワー」に所属し、現在は男子なら誰もが大ファンである「ドラゴンと魔法使い」(ドラマホ)の主人公の声を担当している、伝説の声優さんである。
「ごめんね、由美。この人、文化祭大好きなの。お祭りオンナっていうか……」
「皆さん大丈夫。更なるお祭り酒乱オンナも呼んであるから……乞うご期待!」
文化祭の1日目が終了した。その夜、千景は何故か鉄板焼のお店にいた。ひめさんが千夏&Friendsの為にサプライで用意した食事会らしい。荷物運搬担当の千景も呼ばれてここに居る。メンバーはひめさん、ユーミ、千夏と千夏の親友の紗理奈さん、である。とにかく盛り上がっている。
「ひめさん、大学の単位大丈夫なんですか?」
紗理奈さんがひめさんに質問をした。
「まあ何とかね〜。もし落としそうなら、色仕掛けか多額の賄賂って手段もある!」
「やっぱ面白いですね、ひめさん(笑)」
千夏も笑っている。この前のモンスターパフェ事件から気まずい感じであったが、ひめさんの登場て全てが反転してしまった。
「千夏さぁ、ひめさんのこと知らないから笑えるのよ。ひめさん、本気よ! 大学の単位なんて金で買えば良いって本気で思ってる」
「そうなのですか?」
「まあ……緊急手段としてはね…………」
「そもそも、ひめさん、熊本までどうやって来たのですか? また……ですか?」
「うん……だって、公共の交通機関だと身バレすると大変だし(テヘ)♡」
「プライベートジェットって異常ですよ」
「だって……アフレコが1日早く終わったし、早く千夏にも会いたかったし、それは仕方ない! Pricelessだから(笑)」
千景は話についていけない。というか、今日は男子が1人しか居ない。そして、この美人揃いとあっては……気軽に話せる気はしない。紗理奈さんの一言で千景の立場が一変した。
「千夏、ここに千景くんが居るってことは……千夏の彼氏ってこと?」
千夏はドキッとした。
「だからぁ、彼氏なんていないから(笑)」
その一言で女子全員の視線が千景に注がれることになった。返す言葉もない。
「なるほど、そうなのか! 人口増加は我が国の礎になる! 卒業したら国力増強に励めよ!」
ハチャメチャな食事会になっていくのである…………。




