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24二学期始まる

 9月に入った。本日は二学期の始業式であるが、千夏にとってはいつもと変わらない時間に自宅を出て学校に来ている。文化祭のコンサートを受けてからは毎日、吹奏楽部に顔を出し、自身の練習、そして1年生2人の指導をしていて、始業式の日である今日も朝から吹奏楽部に顔を出している。


「千夏さん、あのー、コンサートって本当にぶっつけ本番なんですか?」


「うーん、どうだろう……1時間もあれば大丈夫とは聞いてるけど……私の友人がプロ級を集めるって言ってるし」


「千夏さんの前の学校って、吹部も全国常連なんですよね?」


「最近は行けたり行けなかったり、かな。まぁ、音楽関係のOGはたくさん居るから、任せておけば何とかなるっしょ」


 そんな話を振ってきたのは黒澤凛ちゃん。千夏が入部した当初はサックス未経験者であったが、上達が早い。千夏が抜けた穴は凛ちゃんの成長で埋められれば、と思い毎日猛特訓中である。


「ひめりんとか来たりしないのですかぁ? 私、知ってますよっ! ひめりんって下級生の全員女子生徒とハグしたんでしょ? 千夏さんも、ですよね……」


「まあ……そうね…………」


「千夏さん、ずるいっ! 私も……いや、私が千夏さんにハグされたら間接ハグじゃん! 千夏さん、ハグしてください!」


「やめなさいっ!」「いいでしょ〜」


 千夏はそんな後輩とのやり取りを楽しんでいた。ここ、サックスパートには頼れる先輩と可愛い後輩がいる。やっと千夏は居場所を見つけたと感じていた。 




 そして久々に2年の教室に向かう。1学期は腹が立つ事もあったが、今の千夏には部活がある。クラスには嫌な奴も居るがユーミが居る。不思議なことに嫌われ者の千景とも関係良好。教室に入るとクラスメイトと挨拶を交わす、普通の光景が展開されている。そこから始業式のある体育館へ移動。体育館では校長先生が話をしていたが、千夏にとってはどうでもいい事、始業式が終わるのをじっと待っていた。そして、始業式が終わり教室へと戻る。教室でホームルームが終わったあとはまた部活が再開される。




 先生が入ってきた。ホームルームが始まる。


「えー皆さん。夏休みはどうだったかな…………元気そうで何より。えーと、ホームルームの前に一つご報告があります…………実は……このクラスの島さんが、二学期から転校することになりました」


 千夏はその言葉にドキリとした……これは千景の案件〜千景の方を見ると、千景に多くの視線が集中している。もちろん、刺すような視線が多い。


「先生……理由は……」


「8月の中旬に島さんのお母様が連絡があってね……転校させたいって……本人の意思を確認したいと話したけど、実現しなくて…………理由は不明だな……」


 先生の言葉に教室が静かになった。明らかに教室内の雰囲気が一変し、空気が重い……。


「仲間が転校してしまったのは残念だが……みんなの学校生活は変わらず続くものだ。それに文化祭も近い、気持ちを切り替えて勉強にも遊びにも励んで欲しい」


 先生が続けて話をしている。千夏は何か発言しなければ、と考えたが自重した。この件について、千夏の知る事は少ない。千夏は一度開きかけた口を閉じた。




△△△△△△△△△△△△△△△△




 千景は先生の話を聞いても驚かなかった。ここまで彩理からは何の連絡もない、だからこの結末は言わば予想通りなのである。たくさんの人々から送られる冷えた目線も、今の千景にはどうでもいい気がしている。


 ホームルームを終え千景は足早に学校をあとにした。このまま帰る気もなく街を歩いている……どれくらい彷徨っかは覚えてない、が、結局いつものカフェに座っていた。

 

 


 どれくらいの時が経ったのであろう……千景は何も考えることが出来ず、いつものカフェのいつもの席に座っている。途中、ユーミから何度か連絡があったが、話す気にもなれない。


 真夏より少し早まった夕暮れ時だった。


「あら、千景くん!」


 声を掛けられて千景はビクッとしたが……そこには千夏がいる。


「何よぉ、声掛けたんだから、挨拶くらいしなさいよ」


「ごめん…………考え事してて…………」


「まあいいわ。ここ、いい?」


 千夏は千景の正面に座った。相変わらずの美貌である、夕日に照らされた千夏はまるで後光が差しているようだ。この魅力、本人は自覚しているのでいあろうか……。


「部活は?」


「今日は早上がり!」


「千夏は……いつも明るいね……」


「そうかな? そう言う千景は今日も難しい顔してる。なんだろ……もしや失恋でもした?」


 千景は千夏の言葉に反応してしまった。全身が反応して姿勢を正してしまったのだ〜はい! と言っているようなものだ。


「やっぱそっかぁ……彩理ちゃんに振られちゃったのね……ま、仕方ないじゃん。彩理ちゃんのこと、ユーミから少しだけ聞いててさ……」


「そうなんだ……」


「で、嫌われる事でもしたの? 無理やりキスしたとか……いや、そんな事じゃ転校なんてしないわね……まさかエッチなこととか……」


「! ! ! そんなんじゃ…………」


「まあ、男子だもんね〜」


「だから違うって!」


「知ってるわ……千景はそんな事する人じゃないもんね(笑) 分かってる。やっぱ人って話さないとどんどん卑屈になるわよ 私がきいてあげるから!」


「…………あの…………」



△△△△△△△△△△△△△△△△△△△



 千夏は千景から委細を聞いた。彩理さんのお見舞いな通っている事まではユーミから聞いていたが……お見舞いか許されてから2人が急接近した事やキスをした事、結婚みたいな話までした事は意外であった。


(千景が彩理ちゃんと、キスかぁ…………)


 千夏は胸のどこかに違和感を感じずには居られなかった。どうしたのだろう……まさか……。



 千夏は心の中の小さな痛みに気づかないようにしていた。

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