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17.5 2人の交差する場所

「はい、注目! 九州大会突破に向けて部長から一言!」


「気合だ!」


「おー!」「おー!」「おー!」……………………



 いよいよ勝負の九州大会が行われる。会場は福岡の天神にある音楽ホール。演奏順は15時あたりで、それまでは近くで待機することになる。ユーミは震えが止まらない、昨年はギリギリの銀賞であった。しかし今回は……サックスにプロの奏者がいる。期待と希望が返って適度なプレッシャーになり心地よい。


 千夏から父親の事を聞かされたのは昨日の部活帰りだった。千夏のお気に入りカフェで数時間、事情を聞いた。栗原悠介はサックスの先生である前に実父であること、実父のせいで離婚したこと、そして……千夏は今年2月にプロとしてデビューも果たしているということ。ユーミは特別驚く事もなかった。千夏はどこか違うと感じていたからだ。


「どうしたのユーミ」


「ううん、大丈夫。去年とは違って、全国行けそうな気がして……武者震いかな(笑)」


「なにそれ(笑)」


「頼んだわよ! 千夏プロ!」


「やめてよぉ(笑)」


 千夏はいつもと変わらない。昨日の様子からすると無理をしているのは明白である。普段通り……これが千夏の為になるとユーミは判断をした。


「ねね、千夏は天神って初めてきたの?」


「フェス来たことはあるけど……」


「もしや、中洲の? さすがぁ!」


「違うって……出演したんじゃなくて……栗原さんの付き添いで…………」


 ユーミはしまった! と思った。


「何の話? 中洲の……フェス? ジャズのやつよね?」


 晴香さんが会話に入ってきた。


「晴香さん、行ったことあるんですか?」


「毎年行ってる! ジャズってカッコいいのよね。イケメン多いし(笑)」


 ここからは晴香さんのジャズへの愛が語られることになる。あっという間に時間は過ぎ、演奏順が迫ってきた…………。


△△△△△△△△△△△△△△△△


「勅使河原さん、相談って何?」


「演奏前にお時間頂きありがとうございます」


 千夏は顧問の小林先生と話をすることにした。演奏前の貴重な時間であるが、その必要があるからである。


「先生に決めて頂きたいことがありまして……演奏の件なのですが……あの、ソロの部分、どうしようかなって」


「ソロの部分? 県大会は良かったじゃない」


「出来はまあまあでしたけど、結局県では2番目だったので……少しだけテンポを落として、深い音で勝負してみたいんです。全国行きたいので」


「…………まぁ……好きな様に吹いてみなさい。後悔しないようにね!」


 小林先生にも了承を貰え…………今日はやってやろう、と千夏は心に決めた。



△△△△△△△△△△△△△△


 

〜祝! 全国GET! 喜べ!〜


 ユーミから短い連絡が来たのは20時過ぎ。吹奏楽コンクールの結果は19時過ぎにウェブ上で発表されていたので、千景は結果を把握していた。みんなでひと喜びしたあとの報告なのだろう。明日、彩理に伝えてあげよう、最近は真面目に勉強をし過ぎて……いや、他に話すことがないからなのだが……彩理も勉強に飽き飽きしている感がある。



 次の日、千景は昼食を済ませてからいつものカフェに行った。いつものアイスカフェラテを注文し、これまたいつもの窓際の指定席に座った。今日はノートを開かない、勉強も毎日だと教える方も教わる方も疲れてしまうのでオフと言うことにした。


「あら、優等生くん! お勉強の時間ですか?」


「千夏……よく会うね(笑) そうだ、全国出場おめでとう。吹部の悲願が達成されたね!」


「まあね! そうだ、お祝いしてよ〜私、今日はここに新作を食べに来たの」


 千夏はそう言ってメニューを指差した。トリプルチョコレートパフェ・デラックス〜チョコのトリプルとは〜ブラックチョコレート、ホワイトチョコレート、ルビーチョコレートでその3種類を使用し、デラックスと呼べるほどにデカい、価格もデカい。


「えー、まあ、仕方ないなぁ」


「ほんと? やりー! あ、パチパチキャンディのトッピングダブルで!」


 考えるだけでも甘い〜すぐに虫歯になりそうだ。言われるがまま千景が注文し、現れた巨大パフェ。普通のパフェに3倍の値段だが、それを超える迫力がある。


「これ、頼んでみると……やっバイね」


「千夏、こんなに食べて大丈夫なの?」


「こ、これはさすがに……ね、半分食べてよ」


 千夏はそう言って巨大スプーンを2つ持ってきた。一つのパフェを千夏と分け合う……許される行為なのだろうか……。


「なに? もしや恥ずかしいの(笑) 私は全然構わないわ! でもパチパチキャンディのところは食べないでねっ!」


 千景はパチパチキャンディのない部分を中心に少しだけパフェを頂いた〜なんだ、これ、苦い……。


「千景くん、そこはカカオ87%だから苦いだけ! ホワイトチョコレートと混ぜるとちょうどよくなるよ」


「千夏って甘いもの詳しいね」


「スイーツは私のオアシス! 普段節制してるんだから、スイーツのお許しが出る日が来た時に備えて日々研究してるのっ」


「へぇ〜」


 この日は千夏からスイーツについてのウンチクを時間になるまで聞かされてしまった。

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