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10 強い意志

 緊急ミーティングが始まっていた頃、千夏は職員室にいた。正確に言うと、職員室の奥、例の尋問室である。少し緊張気味であったが、千夏は冷静であった。


「勅使河原さん、何でココに呼ばれたかは分かるよね?」


「はい……まあ……」


「今回の盗撮事件について、勅使河原さんの意向を聞きたいんだ。ウチのクラスでは以前にもイジメ騒動があってね」


 千夏はドキッとした〜「盗撮事件」と表現されたことに、である。千夏自身の感覚は「バカなイタズラ」と言う感覚であった。


「先生、盗撮事件って大袈裟ではないですか? 私……そんな大事とは考えてなくて……」


「勅使河原さん、別に我慢しなくていいんだよ。泣き寝入りなんて必要ないから……今回は加害者を処断しようと思ってる」


 先生は千夏をじっと見ている。千夏は悩んだ、本心を伝えて良いものか……それとも、先生の言う通り被害者として奴等に復讐をするか……やはり復讐するとキリがない。本音を話そうと決意した。


「先生……実は私は……裏サイトとかでアップされた私の写真について、微塵も恥ずかしいとか嫌だとか思わないんです。私も見ましたけど、強いて言えば、もうちょっと可愛く取ってほしかった、くらいの感覚で……」


「え? そんな嘘を……」


「私の母親って下着のデザイナーなんです。その関係で小さな頃から下着とか水着のモデル〜キッズモデルってやつですけど、ずっとやってて……だから下着姿ごとき見られた所で、何とも思いません。あの写真見た時……私が黙っていれば、奴等も報復完了って事になるから、それで済ませちゃおうって思ってて……」


「だからと言って、あれは盗撮行為、刑事犯罪に当たるからなあ……」


 先生のトーンから緊張が消えた。


「で、先生も見たんですか?」


「まあ、報告があったしな。だが、あのサイトは2年C組の個人アカウントしか入れなくなってて、酷い拡散はしてないんだ、安心してくれ」


「で どう思いました(笑) セクシーだったとか、スタイル良いとか、胸が小さいとか(笑)」


「そんな事は……良いではないか。気にしてないってのは本当みたいだな。勅使河原の意向は、何の問題もない、って捉えていいのかな?」


「はい、全然!」


 ママはブランドメーカーのインナーのデザイナー。そして、千夏はいつも最新の下着を着用している。ましてや、最近は今流行りの魅せるブラを着用していて、見せることを前提にしてある、恥ずかしいなど微塵も思わない。


「そっかぁ」


「でも、緊急ホームルームなんて、誰が言い出したんですか? ユーミとかですか?」


「あぁ、相談してきたのは千景なんだ」


「え? あの根性なしの?」


「勅使河原さんは千景のこと、そんな風に思ってるんだ……可哀想なやつだ(笑)」


 千夏を助けようと行動を起こしたのが河原だとは千夏も意表を突かれた。勇気のある印象は受けなかったからだ。


「クラスでは浮いてるけど、意外です」


「まあ、そう感じるよな。千景は、クラスメイト全員を救いたいんだ、今回も恐らく犯人の柳沢と田所の事を……一番心配してたのは実行犯役の子かな、誰かは知らんが……」


「? ? ? ? 先生ちょっと行ってくる!」


 千夏は尋問室を飛び出した。失念していた、あの写真を撮れるのは……女子だ。田所達の言うことを聞いているという事は何か弱みを握られていて、実行したと考えて良い、そして、その場合……きっと自分のせいだと言い張るはずだ。誰かは知らないが、助けに行かねば…………千夏は教室に急いだ。



△△△△△△△△△△△△



「ご免なさい…………私がやったの…………ごめんなさい…………」


 大川さんはそう言って泣いている。この状況〜田所と柳沢に謝罪を促すという点においては決定的に失敗である。ユーミが何度も、誰に頼まれたか、を大川さんに問い正しているが。全てが彼女のせいになりそうだ。千景は打開策を考えるが思いつかない。


 大川さんは泣き崩れ、クラスメイトの発言も無くなって重い時間が流れている、その時だった。


 教室の扉が開いた。そして、勅使河原さんが入ってきた。


「ユーミ、なんで私抜きて私の話ししてるの! 駄目じゃないっ(笑)」


 クラスメート全員の目が教室に入ってきた勅使河原さんに向いている。


「あ、ご、ごめん。犯罪行為に関わることだから……千夏に泣き寝入りとかさせたくないし……ここは断固とした態度で臨まないと……」


「で? 犯人って……もしや……………大川さん?」


「ごめんなさい、勅使河原さん、ごめんなさい…………」


 千景は……大川さんを救えなかった。そう思った。勅使河原さんが警察通報したら……このクラスはどうなるのだろう……


「なに? 大川さんなの? 何やってんのよ! 撮りたきゃ一言言ってくれればいいのに! もっと可愛い下着つけてきたんだから(笑)」


 勅使河原さん、何をする気だろう……すかさずユーミが口を開く。


「千夏……何言ってるの、これ、犯罪行為よ! 盗撮」


「ユーミ、私ね、下着姿とか見られたった全然平気なの! 私のママは下着メーカーのホログラムのデザイナー、だから下着はいつも最新の魅せる下着(笑)」


「でも、それとこれとは…………」


 やり取りしていた時に、勅使河原さんはなんと、制服のスカーフを取り去った。そして、クラスメイト全員の前で……制服の上を脱いでしまったのだ。


 クラスメイト全員が固まっている。


「ね! 全く問題なし! たから事後承認だけど、大川さんには撮影の許可してあげる。そもそも、私、モデルだったし(笑) 見られることには慣れてるの!」


 勅使河原さんは上半身下着姿で大川さんの手を取った。なんという……千景はその光景に胸を打たれた。人を助けるために無様な道を選択した千景に対して、大胆にも華麗に大川さんを救った勅使河原さん……更に周囲を見渡して一言……


「おい、永山、今は撮影禁止ねっ!」


 クラス全体の緊張がほぐれてクスクスと笑いが起こった。永山もヘラヘラと応える。クラスの絶対的ヒロイン誕生の瞬間であった。

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