表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/38

9 緊急ホームルーム

 水曜日になった。千景は今回の事件の解決に向けて色々と根回しをしたかったが、わずか1日では何も出来なかった。ぶっつけ本番状態である。唯一の根回しは大鷹先生に勅使河原さんを連れ出してもらい、荒れると思われるホームルームに参加させないようにした、程度である。


 5時間目が終わり、大鷹先生が現れる。千景と打ち合わせした通りに勅使河原さんに声を掛ける。


「勅使河原、ちょっといいか? 職員室まで」


「先生、これから緊急ホームルームでしたよね?」


「いや、私の用事の方が緊急な事だ。申し訳ないが来てくれないか…………」


 大鷹先生は千景との打ち合わせ通りに勅使河原さんを教室から連れ出してくれた。そして……修羅場の幕開けだ。司会はユーミがする事になっている。




「では皆さん!ここで2年C組の緊急ホームルームを行います。皆さんには各自の端末に事前に議題を送ってありますが、確認はしてもらえましたか?」


「ユーミさぁ……質問だけど、議題にあったようなサイト本当に存在するの? まああったら許されざる事だけどな(笑)」


 白々しくも最初に発言したのは田所であった。この調子では、自白や謝罪は望み薄である。


「皆さんの中でサイトを見た人、手を上げてください」


 最初は誰も手を上げなかったが、女子の数名が手を上げる。そしてその人数は次第に多くなり、結局過半数以上が手をあげている。


「なになに? みんな本当? 俺は見てないな……じゃあさ、この場で見せてよ! ここでの話し合いの為に勅使河原さんが先生に呼ばれたんでしよ?」


「田所、いいから黙ってくれない? わかったから……今開ける」


 ユーミは個人用のタブレットを開いた。そしてその画面がプロジェクターを通してブラックボードに映し出されている〜そこには「学校裏サイト」の文字がある。


「では…………」


 ユーミは「学校裏サイト」の文字をクリックした。が、何も起こらない……そして、クリックした瞬間に文字ごと「学校裏サイト」が消滅してしまった。


「なっ…………なんで?」


 ユーミはその時に気付いた。柳沢があくまでシラを切り通した理由、その一つがサイトを自在に消滅させる事が出来た〜そうに違いない……。


「なんだかなー ユーミちゃん、何も無いじゃん 緊急ミーティングなんてやる必要なくね?」


 田所は席を立とうとしている。


「待ちなさい!」


「なんだよ〜ガセネタで緊急招集するなよ。俺は帰るぜ(笑)」


 教室はシーンとしている。その中、一際大きな声が教室内に響く。


「あなたが千夏に仕返ししたんでしょ! ふざけないでよ! そんなのこのクラスの誰もが知ってることよ 千夏に謝って!」


 激昂したのは音羽であった。親友の彩理の件があったからか……感情的になって田所と柳沢、2人と押し問答が始まった……。



「だからさぁ、音羽、サイトが見つからないんだから、俺らは無罪だろ?」


「こんな沢山の人が見たって証言してるじゃない! あなた本当にクズね」


 話し合いにならない状態になっている。千景は意を決して発言をすることにした。9ヶ月超、何も言わず静かにしていたが、このままでは解決の糸口が見つからない。


「あの! 僕、そのサイトのスクショ持ってますっ」


 大きな声で発言した。その言葉を聞いて柳沢がビクッと反応していた事を千景は見逃さなかった。今回の犯人、千景の中では推定無罪から確定有罪に変わった。


「じ、じゃあ、ここて見せてみろ!」


 何と動揺しながら柳沢がまくしたてる。


「申し訳ありませんが、犯罪に関わるスクショなので公には出来ません。このホームルームで解決しなかった場合、このスクショは警察に届けるつもりです」


 田所も動揺を隠せない。すかさずユーミが千景の発言を取り上げた。


「河原くんが裏サイトの存在を証明してくれるって事なので、裏サイトはあった、と言うことで進めます。次に……犯人について、です。まず、勅使河原さんを盗撮したのはこのクラスにいる女子ということになるでしょう。今すぐ名乗り出てください!」


 千景がダメ押しの発言をする。


「盗撮は犯罪です。この場で解決しなかった場合、警察に委ねることにします。そうなった場合、補導されて家庭裁判所で裁かれる、なんてことになります。だから名乗り出てください!」


 その話を聞いて……1人のクラスメイトが声を上げて泣き出してしまった。それは……大川桜子さん、蓮の元カノ……千景が予想していた通りの盗撮犯である。そして、それを指示したのは蓮に違いない。


 教室内に桜子さんの鳴き声が響く……。これで解決の糸口が見えた、と千景は感じた。あとはこの犯罪行為に対して、勅使河原さんがどう判断するか、にかかっている。この場での謝罪だけで済ましてくれるのか、それとも警察に通報し大きな代償を犯人達に払わせるのか……。


 全ては勅使河原さんの意思に従おう、それが千景とユーミが出した答えである。


 クラス内で嵐が吹き荒れているのと同じように……窓の外は夏の豪雨になっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ