超名門高校からの転校生(JK)
個人的に縁のある熊本県が舞台です。
熊本在住の学生通しの会話〜本来なら熊本弁を使わないとならないところですが……そこはご容赦ください。主人公が神奈川県出身なので敢えて標準語で書かせて頂きました。衝撃の熊本弁「あとぜき」や「リバテープ」も十分に活かすことが出来ず、熊本の方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「おい、聞いたか? 今日からこのクラスに転校生がくるみたいよ」
「聞いた聞いた……5月に転校なんて、きっとあれね……問題起こしたのよ」
「それか、イジメられっ子とか……」
「あり得るな。あとは、親が犯罪起こして街を追われたとか(笑)」
本日、このクラスに転校生が来るらしい。千景は周囲の会話からこの事実を知った。でも会話には参加しない、教室の片隅で聞き耳を立てているだけだ。
ホームルームのチャイムが鳴る……そして担任の大鷹先生と、他校? 制服を着た女子が教室に入ってきた。
「オー!」「キャーッ」「マジカ……」
入ってきた女子を見て周囲がざわついた。制服はこの高校のものではない。周囲がざわついている理由、それはもちろんその女子の容姿である。ロングの黒髪、メガネは掛けているが端正な顔立ちで一見お嬢様風である、そしてスカートの丈は短い。メガネを掛けているせいか、全体的には大人しい印象を受ける、が、今まで見たことのないような、典型的な美少女という佇まいだ。
さすがの千景も魅入ってしまった……だがどう転んでも高嶺の花、この16年間彼女も出来たことのない千景
にとっては対岸の火事といった所である。
「静か〜に! おい、タカシ! 女子を舐め回すように見るのはやめなさい!」
笑いが起きる。
「今日からこのクラスの仲間になる勅使河原千夏さんだ。では自己紹介を……」
「勅使河原千夏と申します。神奈川の学校からこちらに転校してきました。皆さん、よろしくお願いします!」
「よろしくね〜」「ヒューヒュー」
大きな拍手と冷やかしの声が聞こえる。かなりの歓迎ぶりである。だが、千景にとってはどうでもいい事、やはり他人事に思えてならない。とにかく今は、何事にも耐え、高校生活の残りの約2年間を無事に終えることを考えなければならない。
気が重い……千景の目は自然と美人転校生を追わなくなっていた。
△△△△△△△△△
午前中の授業は終わった。転校初日の千夏は一つ息をついた。そしてカバンからお弁当を取り出す〜本日のお弁当はママの魂の籠った最高傑作? だ。
「ねね、お昼一緒に食べてもいい?」
クラスメイトになった女子が話しかけてきた。髪はショートで暗めの茶色、目が大きくハツラツとした印象を受ける同級生……名前は……。
「もちろん! 確かヒナさん、でしたよね?」
「えー? なんで知ってるの?」
「実は……前の高校の先輩にアドバイスしてもらったの! クラスメイトと早く馴染みたいなら、先に顔と名前くらい覚えておけって!」
「すごー! ねね、音羽きいた? 勅使河原さん、凄いよ! じゃあ、音羽の苗字とかも分かるの?」
「確か……北山さん……でしたよね?」
千夏は笑顔を見せながら答えた。転校初日、順調である。先輩の言いつけ通り、男女問わず全員の顔を名前を覚えてきた……効果はバツグンだ!
「なんか凄いよね、勅使河原さんって」
「気軽に千夏って呼んでください。勅使河原って長いし(笑) 私もヒナさんって呼ばせてくださいね!」
その後からは千夏の名前当てゲームが始まった。もちろんお昼を一緒にと集まってきた7名全員を言い当てた。
最後の一人を言い当てたところで、男子が近づいてきた〜千夏は名前を絞り出した。女子とは違い男子の名前を覚えるのはひと苦労だった。確か永山くん……
「あの、勅使河原さん。その制服って……カトレアですよね?」
「え、あ、はい。よくご存知で……永山くん…………」
「千夏ってカトレアから転校してきたの?」
「……うん……そうなんだ……。」
「あのカトレア? すごー、超お嬢様じゃん! それに…………あのヒメリンも居たのよね?」
「別に、お嬢様って訳では無いし……普通よ普通(笑)」
千夏は驚いた。この制服は、4月まで通っていたカトレア学院で今年から選択出来るようになった最新の夏服。急な転校で転校先である九品寺学園の制服が間に合わず、2〜3日着なければならなかったが、ここから元の高校がバレてしまうとは……かなりのオタクなのだろう〜チョッピリキモい。
「でもさー、なんか解るかも! 千夏可愛いし!」
「ねね、ヒメリンとかと話したりしたことってあるの? 同じ高校にアイドル在籍とか超羨ましい!」
「今年から大学生だけど……お話はしたことあるかな」
やはりこうなった……中川ひめ通称ヒメリン。カトレアを今年卒業した、声優でアイドル。最近、卒業と同時にアイドル活動を引退し世間を驚かせたが、JKにとってのカリスマ。そして、カトレア学院の名前を全国に轟かせた張本人でもある。
「やっぱさぁ……ヒメリンって、あれなの? ジェンダーレスっていうか……噂ではカトレアってそう言う所って……」
音羽さんが突っ込んできた。答えづらい……。
「えーと、よく分からないけど……カトレアには女通しのカップルは沢山いたかも……あ、私は違うけど……」
「私、ヒメリンなら全てを捧げるわ! 千夏でもいいかも(笑)」
音羽は典型的な姫さんのファンのようだ。
「私は……お友達でいいかな(笑)」「うーん、普通わさ……」
カトレア学院とは違い、ひめさんに対し様々な意見がある事は知っていた。あまりいい気分ではないが、特別に何かを話すことも逆効果だろう。千夏は姫さんに対する批評を黙って聞いていた……。
彼女達は姫さんを知らない。仕方がない。話題が収束するまで待つことにしよう……。
「そうだ、今日さ千夏の歓迎会やろうよ!」
「いいねぇ……」
「千夏はどう?」
「ごめん、今日午後から吹部の見学があって」
「へー、千夏って吹奏楽やってるんだ。楽器は?」
「……サックス かな。アルトサックス」
「仕方ないな。じゃあ、部活が試験休みに入ったらこの7人で集合ね! あと、吹部なら由美、千夏をお願い!」
カトレアと似たような女子トークが展開されている。千夏は安堵していた。こうして九品寺学園での千夏の高校生活がスタートした。
ご覧頂きありがとうございます。
この作品は完結していますので「前書き」「後書き」は書かず、ひたすら完結まてま投稿します。本編の為のエピソードゼロ物語なので短編です。
最後までお付き合い頂けると幸いです。