1 始まり
ついに来た、俺の時代。この学校に入学してから3年になった今まで春が俺のもとに来ることは無かった。神に選ばれずに死ぬのか、そう思っていた。でも違った。
その証拠に、今俺の目の前に美少女が立っている。
「あの、すいません小田先輩…急にこんな事言って…。返事、急がないで全然大丈夫ですから………。それじゃ…!」
その美少女は、頬を赤らめて走って消えた。
でも俺の心拍数は正常、ドキドキしていない。
で、後ろを見ると大木大輔が盗み聞きしていた。
「お前、告られた・・・?今・・・。」
「あぁ、告られた。美少女に。」
「・・・いいな。」
「・・・・・・・・・・お前いつからいた?」
「最初から、お前ストーカーしてた。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なぁ、それより今の子って2年2組の“萩原葵”だよな?」
「たぶん、名札に萩原って書いてあったし。」
「じゃ、やめとけ。小田にメリットなんて一つも無い。」
「ふざけんな、俺の人生初めての愛育成の邪魔すんなよ。」
「しょうがない、萩原のレジェンドを語ってやる。よく聞け小田。」
……その後大木から聞いたのだが、あの美少女・・・荻原葵はいわば交際詐欺師。不良の団体に入っていて、金もってそうな男につけ入って金をまきあげる、その金はそのままその団体の黒幕に流れるらしい。かわいいのにもったいない・・・、俺的には無いなあの子は。そんな事を考えながらの帰り道。一人でとっても心細いのだが、腐っても男。一緒に帰ってなんて言えん。そして初めて青春を俺に与えてくれた萩原がそんな団体にはいっていたのがショックだった・・・・・。このダメージは大きい。家に帰ったらすすり泣くつもりだ。____とその時
「…何だこれ?」
曲がり角を曲がった所にあるごみ置き場。そこにまだ新しい、赤いパソコンが捨てられていた。
「新品みたいだな、もらっとくか……。」
にしても赤って不気味だなぁ、と思いつつパソコンをエナメルに入れた・・・・。ちょうど自分用のパソコンがほしかったのだ。
「…ラッキー。」
そう呟いて家に向かった……。
この時、エナメルの中でパソコンが怪しい光を放っていた事に俺は気がつかなかった………。
自分の部屋に入ってさっそくパソコンを開いた。中も外見同様新品のようだ。右上のスイッチを押すとすぐ機械音がして待ちうけ画面が表示された。
「何でこんないいもの捨てるのかねぇ…。」
そう言いながらとりあえず、インターネットを開く。
「おっもうネット接続してあんじゃん……ん……………?」
その画面にはなぜか怯えきっている萩原が映っている・・・。
「なんだ?これ……。」
驚いてしばらく画面を眺めていた。これは動画の様だ。
荻原がいるのは…3年の教室だ、何組かは分からないが・・・・。何かに同様しているのか。辺りをきょろきょろと見渡して、落ち着かない。ガラッと教室のドアの開く音がした、だれか入ってきたようだ。
<待たせて悪いな、荻原。今日はちょっと君に相談があって。>
声が低い、男だ。後ろ姿しか映っておらず誰かは断定できない。
<そんなに怖がるなよ、生意気言わなきゃ何もしないからよ。>
<…何なんですか?長野先輩…………。>
「!こいつ、長野か?!何やってんだ……。」
___そこで映像は切れてしまった。パソコンそのものの電源も消えてしまった……。
「……今のって、一体……。」
不気味に思い捨てようと思った、が、怖くて捨てられない。なぜかパソコンを捨てる勇気が出ない・・・・・・・・。
その夜は渋々布団に入って何も考えず、寝た。
まだ分かっていなかった、赤いパソコンが俺のもとにわたるのは、偶然なんかではなかったんだ………。