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 デルハンナは、ただただ祈っている。

 一緒に旅に出かけることも出来なかったデルハンナは、その無事を祈ることしか出来ないから。


 デルハンナの耳には、シロノワがどれだけ活躍したのかという知らせが度々入ってくる。

 シロノワがデルハンナを心配させないように、都度大神殿に連絡をよこしているからというのもあるだろう。



 シロノワは流石に文字を書けはしないので、代筆のようである。

 ちなみになんか塗りつぶしたような文字もあったので、『勇者』が何か書こうとしてシロノワに拒否されて塗りつぶされたのかもしれない。




「シロちゃんはなんだか『勇者』様と仲が良いのか仲が悪いのかよく分からないわ」

「シロノワ様と『勇者』様は仲がよさそうだと噂はされてますけどね。なんだかんだ仲はいいのかと思いますよ」

「でもシロちゃんからの連絡と、周りから入ってくる噂だと結構違うからどうなんだろうって心配になります……」


 デルハンナとリスダイはそうやって会話を交わす。


 シロノワからの連絡では、危険なことなど全くないとでもいうようなものに見える。

 ただ早くデルハンナのもとへ帰りたいとか、おいしいものを食べたとか、そういう報告ばかりである。そうやって危険な目にあっていないことはほっとする。




 ――ハナちゃん、祈ってくれてありがとう。とっても力になる。


 そういったことが書かれてもいたけれど、力になっているとはデルハンナは思っていない。

 それでもそんな風に言われて嬉しくないわけではない。デルハンナは嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。



 ただ幾らどれだけシロノワと『勇者』たちが凄いパーティーだろうとも、やっぱり心配して仕方がない。


 



「シロノワ様は本当に問題なさそうですけどね。あれだけ強い『聖女』様ですし、底知れぬ力がありそうですし」

「それだけ力が強くても、やっぱり心配な気持ちになってしまいます。シロちゃんが怪我したりしたら、凄く嫌です。でも出来ることはないので、引き続き祈りをするのと、あとは帰ってきたシロちゃんにおかえりなさいっていうぐらいしか出来ないかもしれないけれど」

「それだけでもシロノワ様には凄い力にはなっていると思います」


 デルハンナはシロノワが戻ってきた際に「おかえりなさい」と迎え入れたいと、そんな風に思っている。



(でも『魔王』を倒して戻ってきたら、『聖女』様であるシロちゃんはもっと私の場所からずっと遠い立場になってしまうのかな。でもシロちゃんは例えば『魔王』を倒した『聖女』様になったとしても今までの通りに過ごせそうとは思うけれど、私もシロちゃんの傍に居るのならばもっと頑張った方がいいのかな)




 シロノワは、デルハンナがデルハンナでいればどういう存在であろうとも気にしないだろう。シロノワは『魔王』を倒して、『聖女』様としてますます有名になっていくことだろう。そしてシロノワに近づきたいという人も多いだろう。


 そういう人たちにとって、ただシロノワと親しくしていたからといって特別扱いされているのは周りから何を言われるか分からない。おそらくシロノワはそういう言葉を気にはしないだろうけれど、デルハンナは自分の行動を誇れるようにしたいとは思っている。




(この大神殿で私はどんなふうに行動できるだろう? シロちゃんが立派になって帰ってきた時にもっと成長したって思って思ってもらえたら嬉しい。シロちゃんが帰ってくるまでには時間がかかるだろうけれど、それまでに何が出来るかな……)



 デルハンナはあくまで出来ることを出来る限りやるというだけである。

 


 少しずつ出来ることは増やしているし、家で暮らしていた頃より自由も多い。やれることを増やしているけれども、本当にそれだけで自分がこれから何をしたいのかもまだ分からない。





「シロちゃんは……『魔王』討伐から戻ってきたらどうな風に暮らしが変わるんだろう」

「シロノワ様は何も変わらないと思いますよ。多分、何があったとしてもシロノワ様はデルハンナさんと関わろうとすると思いますし」

「でもいつか私がこの大神殿から出ていくことがあれば、シロちゃんとは一緒に入れられなくなるかもしれないですよね……」



 シロノワが帰ってきた後、使命がなくなった中でシロノワがどんなふうに誰と一緒にいるのか。

 それは正直分からない。シロノワは人ではなく、猫だからこそどんなふうに生きていくのか分からない。シロノワ自身が本当に望めば、人の世や大神殿に関わらない外の世界に行くということも考えられるだろう。





(……シロちゃんと離れるのは嫌だなとは思う。でも……シロちゃんと一緒に居られる方法ってどういうのがるんだろう? シロちゃんが無事に帰ってきたらこれからのこともシロちゃんと話したいな。シロちゃんが『聖女』様になってから、その後のことなんて考えてなかったから)



 ――デルハンナはそんな風に、将来のことを考えていた。




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