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 魔王が出現する、そしてそれを倒すなどというシロノワ。

 その発言にデルハンナが驚いて、思わず倒れそうになってしまっていた。それをリスダイが支える。


 魔王というのは、時折この世界に現れる脅威の名前である。

 ――その魔王が出現時は、魔物が狂暴化したりといった恐ろしいことが起きてしまったりするのだ。だからこそ魔王が出現している期間が長ければ長いほど、この世界は窮地に追い込まれてしまうものである。



 聖女とは、力を持つ存在である。

 その特別な力を持つが故に、権利が生じ、豊かな生活を送る聖女も多い。ただし、力を持つということは、何かあった時に危険な目に遭うとしてもなさなければならないことがある。

 特に魔王が現れた時は、聖女は困難に生じながらも魔王を倒す旅に出なければならない。その中で命を落とした聖女だっていないわけではない。



 ――デルハンナは、魔王が出現すると言う事実よりも、聖女としてシロノワが旅立つことで危険な目に遭うのではないかとそんなことを考えてしまっている。

 シロノワのことを誰よりも大切にしているデルハンナは、シロノワに何かがあるのが嫌だと思って仕方がないのだ。




 ベッレードたちは、「聖女様がそういうのならば、勇者も現れることでしょう」などと言って、忙しそうに大神殿内で話し合いがされることになったらしい。

 シロノワは、魔王が現れようとも、魔王退治にいずれいかなければならないとしてもいつも通りである。






「シ、シロちゃん。魔王を倒しに行くって、大丈夫なの?」

『ハナちゃんは、何も心配をしなくていいの。大丈夫だから』

「でも、魔王って、とても怖いんだよね?」



 デルハンナは自室で、シロノワと会話を交わす。


 ……魔王が現れるという神託を受けた後にこんな風に当の本人であるシロノワがのんびりしていていいのか? と思われるかもしれないが、勇者などを探すのは大神殿の神官たちの仕事なので、問題がないらしい。



 ベッドの上に座っているシロノワは、平然とした様子である。





 デルハンナは、魔王というものを正しくは知らない。何故なら魔王というのは数百年に一度現れる程度の存在である。過去に強大な力を持つ魔王が居た際は、聖女も勇者もなくなり、人類が窮地に陥った暗黒の時代もあったのだとか……。そういう昔話もデルハンナはきいたことがあった。



 ――今の平和があるのは、過去の平和を守り切った人々のおかげだと。そういう風な話はよく伝えられている話である。



 デルハンナは戦う力を持たない。どこまでも普通な庶子の少女である。

 だからこそ、当たり前のことだが魔王という名前を聞いて恐ろしいと考えている様子だった。



『ハナちゃんを怖がらせる魔王は私が倒すから大丈夫なの』

「本当に、大丈夫……? 私、シロちゃんに何かがあったら嫌だわ」

『ハナちゃん、泣かないで』


 デルハンナはまだ勇者も見つかってもいないのに、シロノワが死んでしまうのではないか、危険な目に遭ってしまうのではないか――そんなことを考えただけで、デルハンナの瞳からは涙が溢れてしまう。





『ハナちゃんは何も心配しなくていいの。私が勇者たちを連れて魔王を倒すの。だから問題ないの』




 全くの躊躇いもなく、自分が魔王を倒せないことなどないと、そう思わせるような自信に満ち溢れているシロノワ。

 その態度も、全く恐怖心を感じていない様子である。



 デルハンナはシロノワがこんなに恐怖心を感じていないことに驚いてしまう。

 それと同時にやはりシロノワはただの白猫ではなく、聖女である特別な白猫なのだとデルハンナは実感する。



 シロノワが危険な目にあったらどうしようと流れてしまう涙。それをデルハンナは拭う。



「本当に、本当に、無茶しないでね。シロちゃん」

『うん。ハナちゃん、まだ旅立ちまで時間があるから、今から泣かないで』

「シロちゃん……」




 シロノワは泣かないでと文字を表しながらも、にゃあにゃあ鳴いている。



 シロノワはデルハンナが心配してくれていることが嬉しいのか、嬉しそうな様子を浮かべている。

 その様子を見ながらデルハンナも笑った。






 ――魔王が出現するという神託がされてから、大神殿では聖女と共に旅するものたちを世界から見つけ出すことを始めていた。

 特に重要なのは、聖女と並んで魔王を倒す重要な存在である勇者を探すことである。



 聖女や勇者は、何処にどんなふうに存在しているのかというのは分からないものである。それは女神から伝えられた言葉などにより見つけられるものである。




 シロノワは勇者や他の共に旅する者達がどういう存在であろうとも全くどうでもよさそうな様子である。相変わらず聖女としての仕事をこなしながらも、デルハンナの周りで嬉しそうににゃあにゃあ鳴いているシロノワは、いつも通りであった。






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