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『ハナちゃんは何話したい?』
「えっと、どうしよう? シロちゃんとちゃんと話せるって思うと、話したいことが多くて悩むわ。今までだってシロちゃんとお話出来たけど、こうしてちゃんと意思疎通が出来るのって違うものね」
デルハンナは、シロノワを膝の上にのせて撫でている。
シロノワは嬉しそうに鳴き声をあげる。
「シロちゃんは、食べたいものとかある? シロちゃんのために作るご飯、もっとシロちゃんの好きなものにしたいわ」
『ハナちゃんの作ってくれるの、全部好き!!』
「そう言ってくれるのは、嬉しいけれど……。でも私はもっとシロちゃんが喜んでくれるもの作りたいんだよ?」
『じゃあね、この前の魚の切り身のやつ』
「それが気に入っているのね。それにしてもこうやって文字であらわして疲れない?」
『疲れない! ハナちゃんとお喋りしたいから、幾らでも話す』
「ふふ、ちゃんと聖女として女神様のお言葉も伝えるんだよ?」
『うん。それよりハナちゃんは、此処での暮らし楽しい?』
シロノワはハナちゃん、ハナちゃんとデルハンナのことを嬉しそうに何度も何度も名前を文字であらわす。
よっぽどデルハンナと話せることが嬉しいのだろう。
「ええ。楽しいわよ。シロちゃんのおかげね。ありがとう」
『良かった。ハナちゃんを不幸にする人は、どうにかするからね』
「ふふ、シロちゃんが私を守ってくれると思うと、とても心強いわ。でも聖女が誰かを贔屓しすぎると駄目なんじゃないかな」
『そんなの知らないよ。ハナちゃんを私は幸せにするの』
「もう、シロちゃんは優しいなぁ」
シロノワは、基本的に優しい白猫である。猫なので気まぐれな部分もあるが、デルハンナに対しては特により一層愛情を注いでいる。
その優しさを感じると、デルハンナはいつも嬉しくなる。
シロノワはとてもやさしい白猫で、だからこそデルハンナはシロノワが聖女として相応しいと思っている。
『ハナちゃんも優しいよ。私が聖女だからって、態度変えないし』
「どうして変える必要があるの?」
『人間って、誰か一人が特別だとねたんだりもするかもって女神様も言ってるよ』
「ふふ、シロちゃんは女神様とそんな話をしているの?」
『女神様、よく色々教えてくれるの!』
「まぁ! シロちゃん、もしかして普段から女神様とそう言った話をしているの?」
『時々、でも秘密ね!! ハナちゃんにだけ教えてあげるんだから』
「ふふ、分かったわ」
どうやら女神の間以外でも、シロノワは女神と会話を交わしているようだが、シロノワが秘密にと言うのでデルハンナもそれを秘密にすることを決めた。
「それにしてもねたむだっけ。私が大好きなシロちゃんにそういう感情を抱くことはないわよ。流石だなってそう思っただけだもの」
デルハンナがそう言えば、嬉しそうにシロノワはにゃあにゃあと鳴いた。
『ハナちゃんのこと、大好き』
「ありがとう、シロちゃん。私もシロちゃんのこと、大好き。シロちゃんが許してくれる限り、ずっとそばにいるからね」
『ハナちゃんは居たいだけ、側にいればいいの! でもハナちゃんが好きな人とか出来たらちゃんと結婚してね』
「ふふ、ハナちゃん、私の結婚先心配してくれているの?」
『ハナちゃんには幸せになってほしいもん』
「ありがとう、シロちゃん。でも結婚は出来ても出来なくてもいいかなとは思うわ。シロちゃんの隣に居れるだけで私も幸せだもの」
『嬉しい! でもハナちゃんの子供みたい!』
シロノワがそんなことを言って興奮した様子なので、デルハンナもその言葉に笑いながら頷いた。
ちなみに二人の完全にプライベートな会話なので、周りに聞こえないようにはしている。
「シロちゃん、そろそろお喋りは一旦中断しようか」
『うん。でもまだまだ話したりないから、明日も話すの!!』
「もちろんよ。でもちゃんと、シロちゃんの聖女様としてのお仕事が終わってからね」
『うん。ハナちゃんに何か言う人が居ないように、私ちゃんと仕事するの! ハナちゃんのためなの』
「シロちゃん、頑張ってね」
そんな会話を終えた後、デルハンナはシロノワを抱きかかえて立ち上がる。
その後、女神の間でシロノワが何を聞いたのかがベッレードたちに語られることになった。
その場にデルハンナも一緒にいることになったのは、シロノワがデルハンナに抱っこされたままがいいと訴えたからである。
デルハンナと話せるようになって嬉しくて仕方がないシロノワはデルハンナと離れたくないと思っているように思えた。
さて、その場でシロノワが伝えた言葉は、ベッレードやデルハンナ、それにリスダイたちを驚かせるのには十分だった。
『女神様が、魔王が出現するって言っていたの。私はそれを倒すの』
……シロノワは簡単にそんなことを言ってのけるのだ。
魔王が、出現すると。