第5章~沙織ちゃんの真相
道路に面した所から教会へ行くには、門を抜けて左へ緩やかに曲がっていく坂道を歩いていくのですが、そこを20メートルくらい行った所に、幅の広い石畳の階段があります。
僕は、ボーイスカウトに入ってから、その階段を通る度に何か胸騒ぎがしていたのです。
教会の広場からお人形を抱えて走っていた弥生ちゃんが、石畳の階段を下ってすぐの所で、
「バッターン!」
…と、鈍い音がして、うつ伏せになって倒れてしまいました。
僕が見たところ、1段目の階段を降りた所でつまずいた感じでした。
すると、神父さんが、
「ああっ!何ということか!」
「あの時の再来か…」
…と、言って弥生ちゃんに祈りを捧げました。
その後、取り乱した感じで、
「救急車だ!救急車を呼べ!」
「すぐに、今すぐにだ!」
…と、怒鳴り散らしました。
ところが、その数秒後に弥生ちゃんは、お人形を持って立ち上がりました。
左の膝を、少し擦りむいただけで軽傷でした。
すると、神父さんは再び鬼のような表情になり、弥生ちゃんからお人形を奪い取って、
「この人形を、教会の誰の手にも届かない、誰にも分からない所に封印しろ!」
と、興奮しながら言ったのです。
すると、近くにいた何人かのシスターが、
「神父さん!それはどういうことですか?」
「私達にも説明して下さい!」
しばらく、沈黙していた神父さんでしたが、観念したのかゆっくりと話はじめました。
「そう、あれは7年前…よく教会に来ていた女の子が、あの石畳の階段で転倒して天に召されたのです」
「その時に持っていたフランス人形が、石畳の階段の下の方まで飛んでいってしまったんだが、それを私が拾って食堂の隅に置いたのです」
「確か…その女の子は沙織って名前だったと思う…」
その後、神父さんとシスター数人が話しこんでいました。
次の週の日曜日、いつも通りボーイスカウトがあり、リーダーの石出さんにより、指導とギターによる演奏を聞いた後、正午までの残り時間を皆で鬼ごっこをして過ごしました。
ただ、この時に違っていた事は、食堂の隅に置いてあった沙織ちゃんのお人形が、ハイチェアに座らされて広場に出されていた事です。
そのお人形は、また持ち出されない様にバンドで固定されていて、横にはあの竹ぼうきを持った怖いおばちゃんがいましたが…、
広場にいたボーイスカウトの子供達は口々に、
「沙織ちゃん!良かったね~」
「沙織ちゃん、皆で遊ぼうね~」
帰り際には、
「沙織ちゃん!またね~」
と、いった、声が掛けられるようになりました。
シスターの配慮によって、沙織ちゃんのお人形が広場に出されるようになってから、不思議な少女は食堂に現れる事はなくなったのです。
皆様、今回のお話はいかがだったでしょうか?
霊感があると、いろいろと見える事が多々ありますが、その原因までは分かりません。
何故見えるのか、ずっと謎のままの事も、ざらにあります。
なろう系の小説を書き始めたのは、自分が今まで見てきた事を、何とか文章に出来ないものか?
と、思ったからです。
ただ、文章だけで、あれこれを表現するのは、本当に難しいです。
書き続ければ、何か進歩があるか?
と思いましたが、特になかったです。
とりあえず、自分の作品として、
1、1985年、コウヘイ君はどこにいたの?
2、幼少期から中学2年まで見続けた、お盆にまつわる驚異の世界
3、11才の夏だけは、仲間の中にもう1人
4、教会にある食堂の窓から見える不思議な少女
の、昭和の心霊4部作が完成出来たの事は、喜びもひとしおです。
1~4の順番は、微妙にドンドン過去に遡っている事です。
1、中3~20才
2、小2~中2
3、小5
4、小4~小5
これまで、自分の作品を読んで頂けた皆様に感謝申し上げます。
ご拝読、誠にありがとうございました。
きつねあるき