表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3章~食堂に行かされて

 和成君と一緒に、教会の横に回って食堂の側面(そくめん)に向かうと…、


 いた!いるではありませんか!あの少女が…、


「よし!俺は食堂の入り口を見張っているから、お前は3分したら食堂の中に入れ!」


「分かったよ、食堂に行くからあのおばちゃんはしっかり見張っておいてよ」


(まか)せておけ!じゃあ頼んだからな!」


 その時の3分が、やけに短く感じました。


「ああっ、もう3分か…」


「くそっ!どうにでもなれ!」


 食堂の入り口を見張っている和成君を横目に、あの少女のいる窓際辺りへ、足音を立てずにゆっくりと進んで行きました。


 食堂に入る迄はとても嫌でしたが、いざ入ってみると意外に冷静(れいせい)でした。


 窓ガラスの後ろ側に着いたものの、そこにはあの少女の姿はなく、和成君が言っていたようにイスに腰掛けた人形がありました。


 ()げ茶色の幼児用ハイチェアーに、青いドレスのフランス人形が座っていました。


 そのまま帰っても良かったのですが、その人形の目を見ていたら、何故(なぜ)だか()れてみたくなったのです。


 左手を(のば)ばして人形の(ほほ)に、そ―っと触れようとした時、後ろから声を掛けられました。


「ヤバい!あの(こわ)いおばちゃんか?」


 と、思って(おそ)る恐る振りかえったら、僕のすぐ左側に5才くらいの男の子がいたのです。


 そして、こう言ったのです。


「それは、沙織(さおり)ちゃんのお人形だよ」


「えっ?」


「沙織ちゃんのお人形だから(さわ)っちゃダメだよ」


 何だ?この男の子は…、


 と、思っていると、その子は食堂の入り口の方に走っていってしまいました。


 そして、その子が食堂から出る直前に…、


「沙織ちゃんのお人形に触っちゃダメだからね!」


 と、言って食堂を出ていきました。


 僕は、お人形に触れるのを(あきら)めて、食堂を出ようと思いました。


 そのタイミングで、あの怖いおばちゃんが、食堂の入り口にいた和成君を見つけて、


「そこで何してる!またお前か~!」 


「今日は食堂に入ってないよ、かくれんぼをしてたんだよ」


「いいから、向こうの広場に行きな!」


 和成君が、怖いおばちゃんと話している間、僕は食堂の(おく)で身を(ひそ)めていました。


 おばちゃんが立ち去ったのを見計らって、急いで食堂を出ました。


 そして、和成君を探しに広場に走りました。


「和成君の見張りのおかげで、見付からないで戻ってこれたよ」


「それで、あの少女はいたのか?」 


「どこにもいなかったよ」


「何か、いつもと違う事はなかったのか?」


「そういえば、5才くらいの男の子が僕の近くに来て、あの人形に触るなって言ってきた」


「これは、沙織ちゃんのお人形だからって…」


「本当かよ!俺の時には、そんな子はいなかったぞ!」


「その子は、食堂の入り口に向かって走って行ったから、出て行くのを見たでしょ」


「いいや、俺が見張っている間は誰も出てこなかったぞ!」


「そんなバカな!」


「じゃあ、あの少女も?」


「いたら、ここに一緒にいるはずだろ」


「食堂のテーブルの下に隠れたって事はない?」


「それなら俺が前に食堂に行った時に、何周も見たけど誰もいなかったぞ」


「それじゃあ、今まで見たのは幽霊(ゆうれい)としか考えようがないね…」


「あ、あのさ…、この事はもう忘れようぜ!ここの7不思議みたいなものだろっ」 


 それ以来、半年以上あの食堂に入ろうとするボーイスカウトの子は、いませんでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ