第1章~ボーイスカウトを始めて
この話の背景は、1981年~82年(昭和56年~57年)です。
当時、小学校では野球をするのが流行っていましたが、僕は内気な性格だったので、遊び仲間に入れてもらえるよう話しかけるのが、すごく苦手だったのです。
優秀な兄に人懐っこい弟、2人共に友達が多くスポーツ万能でした。
それに比べ僕は特に取り柄もなく、劣等感のかたまりでした。
そんな時に、両親からボーイスカウトを勧められ行く事にしました。
そこに来ていた子供達は、主に他の小学校の子達だったので、お互い不安もありましたが、段々と馴染めるようになりました。
本文に出てくる、和成君と交流した事がきっかけで、この作品が生まれました。
当時は、霊感がある事なんて、何の得にもならないと思っていましたが、こうして作品を書く事に関しては、文才が無くても当時の事を思い出すだけで、ある程度は書けるようです。
それでは、本文をどうぞ。
確か、僕が小学校4年生の頃だったと思いますが、
当時、いつもおどおどとしていた僕を、両親が心配してボーイスカウトに入れてくれました。
毎週日曜日に教会に行って、神父さんとお祈りをした後に、ボーイスカウトとしてのいろいろな活動をしていました。(キリシタンではありませんが…)
活動と言っても、ほとんどが遊戯の延長線上でした。
いろいろなロープの結び方や、野外でテントの設営とかも、それなりにやりましたが、一番の目的は、その仲間と対等に付き合うようになる事でした。
ある日の事でした。
いつものように、聖書を片手に神父さんとお祈りをしました。
その後、屋外に出てリーダー(ボーイスカウトにいろいろ教えて下さる方)の石出さんのギターで何曲か歌った後の事でした。
ボーイスカウトは、朝7時から行って正午に帰って来るのですが、正午まで活動する事がまずなくて、解散時間までは教会の前の広場で、皆で遊んでいました。
遊びと言っても、鬼ごっこか、かくれんぼが殆んどでした。
教会の横に、神父さんの家族や信者さんが使用する食堂があるのですが、そこを通った時に食堂の窓ガラスを、強く叩く音がしました。
「ガシャ、ガシャ、ガッシャン!」
そこには、外に向かって何度も窓ガラスを叩く少女がいました。
そして、危機迫った表情で…、
「出して!出して~!」
「ここから出して~!」
…と、頻りに叫ぶのです。
見た感じ小学校3~4年生くらいで、ゆるい巻き毛でロングヘアーの少女でした。
その時に、窓ガラスの前にいた子供が、僕を含めて4人でした。
そのうち、窓ガラスの内側にいた少女を見たのは、僕と和成君でした。
見えていない俊右君と充隆君は、
「えっ、何?誰としゃべってるの?」
…と、不思議そうな顔をしたまま向こうに行ってしまいました。
窓ガラスに向かって和成君が、
「食堂の入り口から回ってくればこっちに出られるじゃん」
…と、言うとその少女は、
「出られないの!」
「ここから出して!出してよ~!」
と、叫ぶのです。
すると和成君は、
「そこで待っていろよ、今そっちに行くからな!」
…と、言って食堂の中へ走っていきました。
本来、食堂には神父さんの家族と、信者さんしか立ち入り出来ないのですが、食事の時間以外は人がいないので、入れなくはなかったのです。
しばらくすると、ぶつぶつ言いながら和成君が戻って来ました。
「どうだった?」
「それがおかしいんだ、誰もいないんだよ!」
「えっ…?何で!」
「さっきまであの窓ガラスの内側にいたよね?」
「ただ、食堂に行ったら、窓ガラスの後ろ辺りにイスに腰掛けた人形があったんだ」
「人形?じゃあ、あの少女はどこにいったの?」
「周りを探してみたけど、誰もいなかったよ…」
「どこから、逃げたんだろう?食堂の入り口は1つしかないのに…」
「それよりよ~、食堂に行ったら竹ぼうきを持った怖~いおばちゃんがいてよ~」
「うん、それで?」
「2度と入って来るな~!って怒られちゃったよ…」
「えっ~」
「ボーイスカウトは食堂に入っちゃダメだから見張られてるんだね」
しばらくすると、教会の上の方から正午の鐘が鳴り響きました。
さっきまで、食堂の窓にに見えていた少女の姿は、その日は見ることはなく、教会を後にしました。